短編③
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どうにも気になる。
3人でいる書庫。
視線の端には、アコとベンがいる。
仲がいいのはいい。
・・・・いい、が。
「ベンさーん、これお願いしてもいいですか?」
「ああ、これでいいか?」
「有難う御座いますー」
・・・・・またベンだ。
アコが何かと頼りにするのは俺じゃない。
片腕の俺に気を遣っているんだろうことは理解出来る。
・・・・が、どうも気に食わねェ。
「ベンさん、これなんですけどー」
「それはこれで代用出来る」
「さすがベンさん!!」
何かにつけてくっついてる。
・・・・・ように見えちまう。
いやいや落ち着け。
少なくともベンにその気はねェ。
・・・・・はずだ。
「お頭」
「・・・・・・どうかしたか?」
「殺気がダダ漏れだぞ」
近寄って来たベンが耳元でぼそりと囁いて去って行った。
ふと見ればアコが不安そうにこちらを見ている。
・・・・自分の気持ちも伝えてねェのに、
嫉妬ばかりしてちゃ男が廃るってもんだな。
「ベンさんと喧嘩したんですか?お頭」
「いや、大丈夫だ」
「でも、なんか・・・・・」
「・・・・・怖かった、か?」
「え・・・・はい」
「俺が?」
「・・・・ちょっとだけ」
正直ショック、だな。
ベンとはあんなに仲良さそうにして。
あんなに可愛い笑顔を向けていたのに。
俺にはそう来るか。
「随分とベンと仲良さそうにしてたな」
「仲いいので」
きっぱりと言い切った凛とした姿に一瞬見惚れた。
「・・・・そうか。そりゃいいことだ」
アコはベンのことが好きなのかもしれねェなァ。
「駄目ですよ、喧嘩しちゃ」
「心配か、ベンが」
「2人とも、です」
「優しいな、アコは」
アコの頭をそっと撫でる。
「・・・そりゃあお2人には笑ってて欲しいですもん」
「2人、か」
「・・・・何か?」
2人、と言いながら俺には頼らないんだな、アコは。
・・・・とは言えないが。
「アコが側に居てくれりゃ笑ってられるさ、俺達は」
「皆仲良くしましょ!ね!」
「ところでアコの用は済んだのか?」
「んー・・・・もうちょっと調べたいことが」
「俺に手伝えることは?」
「大丈夫ですよー」
くったくなく笑うアコに内心舌打ちをする。
「そう、か」
「むしろ私が手伝えることあったら言って下さいね!」
「何でも言っていいのか?」
「いいですよ?」
アコが欲しい。
と口から出そうになって噤んだ。
「このまま朝までここで2人きりってのも悪くないな?」
「いやそれ手伝いじゃないですし悪いですよ」
「だっはっは、駄目か」
「お腹すいちゃうじゃないですか」
「それもそうだ」
「で、出て来た訳か」
先に部屋を出ていたベンが待ち構えていたように笑っていた。
「・・・・・アコが妙に真剣に調べものをしてたんだ、邪魔は出来ねェだろう」
アコは俺と話しながらも本のことを気にしているようだった。
気にはなったがこれ以上邪魔はしない方がいいと判断した。
「まあそもそも俺とアイツが書庫に入るところを見かけたアンタが半ば無理やりついてきたんだ、長居する理由もなかったな」
「惚れた女が他の男と部屋で2人きりを見過ごせる訳ねェ」
「過保護な割に告白も出来ねェか、お頭」
「・・・・情けねェのは百も承知だ」
はあ、とため息が出た瞬間アコが出て来て、
「あ、ベンさんちょうどいいところに!」
・・・・・またベンか。
「ああ、どうした?」
「一緒に来て欲しいんです」
「わかった」
2人が連れだって何処かへ行こうとするので、
「俺も行っていいか?」
さりげなく聞いてみれば、
「お頭はまだ駄目です」
・・・・・まだ?
「そういうこった、大人しく待ってるんだなお頭」
アコとベンはそう言って意味深な笑みを残して俺の前から居なくなった。
・・・・船長命令、と言って着いていくのは簡単だが。
それじゃあまりにも大人げねェよなァ。
仕方なく部屋に戻ってたまには仕事でもするかと腰を降ろす。
・・・・・が、集中出来ない。
脳裏に過るのはベンとアコのことばっかりだ。
情けない、とベンの声が聞こえてきそうだな。
まったく情けねェ。
「入るぞ」
タイミング良くベンが入って来た。
「・・・・・アコは一緒じゃないのか?」
「開口一番がそれか。ったく情けないな」
「ほんとになァ」
「少しはアコを信じてやれ」
「・・・・それで、そのアコはどうした?」
「俺はお役目御免だ」
「・・・・さっぱりわからねェんだが」
「アコはご機嫌で部屋に戻った、気になるなら本人に直接聞くんだな」
ご機嫌で、と強調されて妙に気になった。
「行って来る」
機嫌がいいのなら追い出されることはないだろう。
「アコ」
入るぞ、と返事も聞かずに部屋に入れば釣りの道具が見えた。
「・・・・釣りするのか?」
「お頭!?あ、いえこれは昼にヤソップさん達としたので後片付けです」
「ヤソップと?」
「釣りって楽しいですねー」
にこにこと嬉しそうなアコに湧き上がるのは嫉妬。
「すまんなァ・・・・不甲斐ない船長だ、俺は」
「え?」
「だが俺にも頼ってもらえねェか?」
片腕でアコを抱きしめた。
「お頭・・・・・?」
「せめて側に居ることくらい、許してくれ」
「・・・・・・お頭」
「アコ」
見つめ合ったその時、
「あ!!もう頃合いですよお頭!!」
「頃合い?」
アコが腕からすり抜けた。
「行きましょう?」
「行くって・・・・」
「厨房!」
アコに腕を引かれて困惑したまま厨房に来てみれば。
「随分と美味そうな匂いだな」
ぐつぐつと鍋に煮込まれているもの。
「魚介たっぷりクラムチャウダーです!」
「クラムチャウダー?」
「お頭への日頃の感謝を込めて!」
「俺に・・・・・?」
「って言ってもレシピはベンさんと一緒に本で調べてもらったんですけど」
「・・・・・本、で」
「しかも牛乳の在庫少なくて豆乳にしちゃったんですけどね」
「・・・・なるほど」
代用できる、とベンが言ってたのはこのことか。
「たっぷりのお魚はヤソップさん達と釣った新選なお魚さんたちばかりです!」
「昼の釣果はこれか」
「はい!お頭に食べてもらいたくて頑張りました!」
「・・・・だっはっは、そうか!俺の為か!」
全部俺の為、か。
「お頭、いつも有難う御座います。大好きです」
「なら当然アコが食べさせてくれるんだな?」
「え」
「何でもしてくれるんだろう?」
「今!?」
「いやー俺は幸せもんだな」
「ど・・・・・・・・・・・・どぞ」
熱々のクラムチャウダーは今まで食べたものの中で1番美味かった。