短編③
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今日は何だか調子が良い。
前からの自信作でもある新作レシピをサッチさんの許可を得て皆にお披露目出来たっていうのもあるけど。
トントントン、と包丁の音も軽く聞こえる。
ああ、料理って楽しい。
厨房から見えたエースも美味しそうに食べてくれてるし。
幸せ。
そして料理の最大の楽しみはやっぱり。
「いただきます!」
実食、だよね。
「アコ、あーん」
「え」
隣から突き出されたフォークに刺さったお肉。
香り良し、見た目良し。
・・・・・じゃなくて。
「・・・・何してんのエース」
「美味いぜ?」
にこにこにこ。
「え・・・・エース食べていいよ?」
「アコ食えよ」
「食べるけど自分で食べる、よ?」
「ん」
何だか頑なにお肉を私に食べさせようとしてくれるエース。
よく見れば顔が赤い。
「・・・・エース酔ってるね?」
「酒飲んだからな」
ほら、とエースがお肉を私の口元に寄せて来る。
恥ずかしいけど仕方なく口を開けたらそこにお肉が入ってきた。
「ん。味良し」
美味しい。
柔らかさも十分。
「さすがアコだよな!」
「ありがと、エース」
「これに合う酒、飲んでみねェ?」
「え、興味ある」
とエースが進めてくれたお酒を飲んでみた。
「んー美味しい!!」
「だろ?」
さすがエース。
これからも試食はエースにお願いしようっと。
「ん」
「・・・・・・・ん?」
エースが口を開けてきた。
「俺にも」
「は!?」
「あーん」
・・・・・・やらなきゃ駄目か。
「あ・・・・・・あーーん」
エースの口にお肉を放り込むと、
エースは満足そうにもぐもぐ。
「へへっ、やっぱ美味ェ」
・・・・・・可愛い。
なんて呆けていたら、
「酒は飲ませてくれねェの?」
じっと私を見つめて来た。
「エースもうだいぶ酔ってるでしょ?お酒は辞めた方が」
控えめに咎めたら、エースはふぅん、と呟いて。
私のグラスを手に取り口をつけた。
「それ私の・・・・・っ」
そこそこ入っていたお酒を飲み干すと、
「間接キス、な」
そう言って挑戦的ににやりと笑った。
酔っぱらったエースは性質が悪い。
「アコちゃーん、悪いさっきの砂糖だけどー」
「あ、はーい」
困惑しているとサッチさんの声が聞こえて、
そちらに首を向けた瞬間、
ぐりん。
首が戻った。
いや、エースの力によって戻された。
「・・・・・エース、痛い」
「俺以外の男なんか見ンなよ」
「・・・・無茶言わないの」
後ででいいわ、とサッチさんの声が後ろから聞こえた。
「なァ」
「・・・・何?」
「このままキスしてェ」
熱の籠った視線から逃げられない。
「・・・・・・っお酒臭いのは、嫌」
「じゃあ酒飲んでなかったらいいんだな?」
辛うじて断ったら間髪入れずに返って来た。
そもそも私たちそんな関係じゃ、ないのに。
「もう、エース飲み過ぎ」
「仕方ねェだろ、アコの作る飯が美味いんだから」
「それは・・・・嬉しい、けど」
「アコは可愛いし」
「え・・・・あ、ありがと」
「料理も上手ェ」
「う、うん」
「優しいし」
「・・・・・そんなこと、ないよ?」
「抱き心地良さそうだよな」
「ちょい」
セクハラか。
「・・・・・好きだ」
・・・・・がつん、と。
心に響いた。
「・・・・・・・・・す・・・・・・・っ」
好き、って。
ああでも今エースはかなーり酔っぱらってる訳だし。
「アコ」
真剣な瞳に覗きこまれて。
心臓がうるさい。
「エース・・・・・私、は」
私も。
がたん。
突然エースが顔を伏せた。
・・・・・・・寝た、みたい。
・・・・なんだ。
ほっとしたような、がっかりしたような。
フクザツな気持ちでいたら、エースの手が私の手をぎゅ、と握って来た。
え、ほんとに寝てる・・・・?
・・・・大きくて、ごつごつしてて。
優しい手。
私たちをいつも守ってくれる手。
私はこの手に何が出来るだろう。
なんてじっと見つめてたら、
ぐい、と引かれた。
「え」
いつの間にか起きていたエースの顔が近くにあって。
「俺じゃ、駄目か・・・・・・・・?」
胸が締め付けられて、言葉が出てこなかった。
首を横に振るのが精一杯で。
「なぁ、アコ。俺のモンに、なってくれよ」
真っ赤な顔で、
熱を含んだ瞳で。
そのまま、
唇が、重なった。
「・・・・・・・・ん」
「・・・・へへっ」
唇が離れてエースは満足そうに笑うと、
ばたん。
・・・・・・また、寝た。
・・・・・朝起きたらきっとすごい二日酔いだろうから。
お水とお味噌汁をあげよう。
それから。
今日のことを覚えてるか聞いてみようかな。
もし、覚えてたら。
私も好きだよってちゃんと言おう。
そしたらまた夜は宴で。
私もまた料理を張り切って。
今度は2人で酔っぱらおう、と思いました。