短編③
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「おお・・・・!」
新刊のコミックスを読みながら感嘆の声が漏れた。
まさかこんな展開が待ち受けていたとは!
自分の部屋で足を伸ばして、
胸元にクッション、
手元には漫画本。
少し手を伸ばせば美味しいお菓子とジュース。
ああ、なんて素敵な休日!
大学生だって休みは必要だ。
貴重な休みを満喫してると、
ガチャ、とドアが開いた。
あれおかしいな。
今日両親は夜まで帰ってこないはず。
・・・・誰だ、と身構えたのは一瞬。
「お前何つーカッコしてんだよ」
「リラックスしてる恰好」
思いっきり知り合いだったので安心した。
そしてその知り合いは私を見るなり顔を顰めた。
「そういうのはだらしねェって言うんだよ」
「ごろごろしてるだけだもん」
「それを世間じゃだらしねェって言うんだ」
「そうなの?・・・・ところでエース」
幼馴染で、すぐ隣の家に住んでる同じ歳で、
同じ大学に通ってるエース。
「・・・何だよ」
「どうやってうちに入って来たの?」
「・・・・あのな」
エースは呆れ顔で、
「普通にドアからに決まってんだろ?鍵かかってなかったぜ」
「嘘!?」
「しかも呼んでも返事ねェし。だからお前の部屋まで来たんだ」
「あらやだ」
うちの両親たら鍵かけてくれなかったのね・・・。
「物騒だなオイ。確認くらいしろよ」
「・・・かかってると思ってた。てへ」
「仮にも女だろ?」
「・・・正真正銘の女の子ですけど」
「ならもっと女らしくしたらどうなんだよ」
「・・・・・女らしくしたらさ」
・・・・女の子らしく、したら。
「したら、モテるかしら」
「モテたいのかよ・・・」
はああ、とエースはそれはそれは深いため息を吐いた。
「そりゃモテないよりモテた方がいいじゃん」
「俺は興味ねェけどな」
「モテる人の言うことは違いますねェ」
ふんだ。
「別にモテねェよ」
「今度エース君とこの映画見に行きたいなっ!・・・・で、行ったの?」
この間見た女の子の口調そのまま言ったらエースがあからさまに渋い顔をした。
「・・・・・行ってねェよ」
「でも誘われたんでしょ?モッテモテー」
「嬉しくねェ」
「んまあ言ってくれちゃって。・・・ところで何か用だった?」
何となく話しを変えたくて、
そういえばまだエースの用件を聞いてなかったな、と思い出した。
「ああ、本返しに来た」
「わざわざ?別に良かったのに」
「・・・・あのよ」
「うん?」
「お前いつまでそうしてるつもりだよ」
エースが苛立った様子で私を見下ろす。
「・・・・飽きるまで?」
「仮にも客が来てるのにそれかよ」
「冷蔵庫にコーラ入ってるけど」
「・・・・氷ももらうぞ」
「どーぞ」
バタン、とドアが閉まった。
小さいころからお互いの家を行ったりきたりしてるから何処に何があるのかなんてもう熟知してる。
だからエースはすぐに戻って来た。
「あ、そのお煎餅私のお気に入り」
「美味いよなこれ」
・・・私のお気に入りのお煎餅を持って。
「ねえそれ北海道限定なんだけど」
「知ってる」
「それ最後の1個なんだけど!」
「へーそりゃ良かった」
「良くない!・・・・・・っ半分こ!」
「仕方ねェなそれで譲歩してやるよ」
ってそれ元々私のなのに!
エースは楽しそうにニヤニヤして、ベッドに座った。
「んで、マジでいつまでそうしてる気だアコ」
「・・・・いつまでも」
こうしていたい。楽なんだもん。
「・・・男の前でそんなカッコしてっと、襲われるぞ」
「そんな度胸のある人居るなら会ってみたいわ」
「言ったな?」
「・・・・およ?」
コーラを飲んでいたエースの手が止まって、
目が輝きだした。
そしてエースはそのまま私の身体に、
またがった。
「えっエース!?ちょっ、ちょっとっ」
「いいんだろ?襲われても」
ぐい、と体を仰向きにさせられて。
近づくエースの顔。
その顔があまりにも真剣で。
・・・・心臓が、ドキドキとうるさくなりだした。
「まっ待って!会ってみたいって言っただけ!」
「・・・じゃあここに居るって覚えとけ」
「・・・・あい」
エースはつまらなさそうに私から退いた。
私も仕方なく起き上がり、
エースの隣に座った。
「あーあ、北海道限定のお菓子」
美味しかったのに、これで最後。
「ん、美味ェな」
「・・・・美味しいよ」
ちくしょう。
「そーいやオヤジさんとおふくろさんは?」
「出かけてる。夜まで帰って来ないって」
「・・・へェ」
さっきのことがあったせいでまだ少しドキドキしてる。
・・・・エースがあんなことしてくるなんて。
「じゃあお前夕飯どうすんの?」
「カップ麺とおにぎり」
「・・・自炊しろよ。アコ料理出来るだろ?」
「1人分作るの面倒」
「2人分なら?」
「・・・・どういうこと?」
エースが口元を引き上げてにィ、と笑んだ。
「俺も食ってく」
「えー・・・・」
「後片付けくらいはやってやるよ」
何処かキラキラしたエースの目に、
私は昔から逆らえない。
「・・・何食べたいの?」
「何でもいいぜ。作ってくれんの?」
「仕方ない。うちにあるものでいいよね?」
「何か・・・夫婦みたいだな!」
突然出て来た単語に心臓が飛び跳ねた。
「・・・後片付けホントにしてよね旦那様」
「任せとけって。新婚旅行は北海道でいいよな?あの煎餅大量に買おうぜ」
「あーそうね、婚約指輪は某セレブ女優がもらってたのと同じのがいいわ」
10カラットくらいの某ブランドのお高いやつ。
「・・・無茶言うなよ」
私はエースの新婚ごっこにのってあげたのに、
エースがそれをぶった切った。
冷蔵庫を探りながら、
「昨日のお肉の残りとかでいい?これじゃあ指輪も期待出来ないわねえ」
「バイトの給料入ったら高いステーキ買って来る」
「期待しないで楽しみにしてる。あとは適当に和えてサラダにして、冷凍の魚あるからそれ焼くわ」
「・・・見てろよ」
「何を」
「絶対泣かせてやる」
「・・・は?」
「まず指輪だろ、それから夜景とかか?」
エースがぶつぶつ言いだした。
「・・・さっきから何言ってるのエース」
「何か手伝うか!?」
「や、大丈夫」
何か今日のエース変、と思いながら料理開始。
サラダ作って、魚焼いて。
あとお肉の味付けはー・・・・。
「・・・何?エース」
妙に視線を感じてふと振り返ればエースが私を見てにやにやしてる。
「いや、俺の為に作ってくれてる姿が可愛いなと思ってよ」
「・・・・私も食べるよ?」
「でも俺も食う」
「そうだけど」
やっぱ変だ。
・・・・・可愛い、とか。
・・・・・・恥ずかしい。
そして、
「はいっいただきます!」
「いただきます!」
エースと2人で食卓を囲み。
夜ご飯。
我ながら上出来。
「美味ェ!料理の腕上げたな」
・・・焼いただけ、和えただけなんだけど。
それでも美味しいと言われれば嬉しい。
特に・・・エースには。
私がもっと、料理が上手くなって裁縫とかもちょちょいっと出来るようになって。
言葉遣いも態度も女の子らしくなったら。
・・・・・・エースは私のことを好きになってくれるのかな。
言わないけど、ずっと片思い。
「ありがとね」
「いい嫁さんになりそうだ」
「なれたらいいねえ」
このまま思いを告げられず、まだ知らない誰かのお嫁さんになるのか。
それとも思いを告げて立派にフられ、
そしてやっぱり知らない誰かのお嫁さんになるんだろうけども。
「楽しみだな」
「・・・エースが楽しみにすることなくない?」
「するだろ普通。俺の嫁だろ」
「・・・・・・・・・はい?」
何気なく言い放ったエースの爆弾発言に一瞬思考が止まった。
「待ってろよ、絶対プロポーズして泣かせるからな」
「・・・・・・・・・・うん?」
「そんで新婚旅行は北海道だろ?」
あれ、やっぱりよくわかんないんだけど。
まるで獲物を見つけた獣のように私を見つめてくるエース。
「・・・・あ、私お風呂入ってくる。エースも一緒に入る?なーんて」
何だか変な雰囲気をぶち壊したくて何か言おうとして、やぶへび。
逃げようと椅子を立った私の腕をエースががしっと捕まえた。
「入る」
「はい!?」
「いい機会だから教えてやるよアコ。男の前であんな恰好と今みたいな発言したらどうなるか」
「え・・・遠慮しておきまーす」
「あと、俺の気持ちもな」
お風呂には入らなかったけど、
告白すっ飛ばしたエースのプロポーズ。
『好きな奴以外興味ねェんだよ俺は』
と、
指輪は後々頑張ってくれるそうです。
・・・・・まさかこんな展開が待ち受けているとは。
人生わからないものだ。