短編③
夢小説設定
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エースと言えば。
来たばかりの頃は捨てられたばかりの大型犬のようだったけど。
今はそんな様子は微塵もなく、
皆とは勿論私とも打ち解けてきてくれて。
最近なんかは仲良くなれて嬉しいなあなんて思ってたばかりだった。
それが。
「あ、エースおは・・・・・・・・・」
朝、エースを見かけたので挨拶しようと近づいたらあからさまに避けられた。
・・・・・・・あれ。
かと思いきや、
「あ・・・・・あのよ、アコ」
「うん」
「お・・・・・俺・・・・・・っこ、・・・・・っ」
顔を真っ赤にしてどもる。
「ど、どうしたの・・・・っ!?」
「俺、は!!」
「う、うん!?」
「・・・・・・アコ・・・・・・っ!!!」
「エース・・・・・?」
「わぁぁぁぁ何でもねェ!!!」
「えええええ!?」
そして逃げる。
なななな何で!?
・・・・私はそこまでエースに言いにくいことを言わせようとしているのだろうか。
だとしたら相当嫌われてるか呆れられてるよね。
・・・・・・それはショック、だなあ。
仕方がないのでマルコさんに相談してみた。
「私なんかやらかしちゃったんですかねえ」
「・・・・・そう思うかい?」
「でもエース、変だし」
「エースがもう少し大人になりゃあわかるよい」
・・・・・・・・撃沈。
「・・・・・情けねェ」
顔もまともに見れねェし。
めちゃくちゃ緊張するし。
言葉が出て来なくなるし。
・・・・アコに名前呼ばれただけで。
いたたまれない。
心臓がすげェバクバク言ってるし。
何で言えねェんだ、俺。
今度島に着いたら俺と見て回ろうぜ、って。
言うだけなんだけどなァ。
・・・・・情けねェ。
わかっちゃいるが、アコがいちいち可愛いのが悪い。
と思う。
「ごめんねエース」
「俺は絶対悪くねェ」
「うん、ごめん」
・・・・・・・・ん?
「・・・・・・・・・・・・・って、アコ!?」
目の前にアコがいて、すげェ驚いた。
「ごめんね、ノックしても声かけても返事なくて勝手に入って来ちゃった」
「悪ィ、気づかなかった・・・・・」
「悩み事?」
と、心配そうな顔で俺を覗きこんでくるアコがめちゃくちゃ可愛いかった。
「ま・・・・・まァな」
「それって私のこと?」
「べっ、そっ、」
「言って」
「は・・・・?」
「私が何かしたなら言って。お願い」
ぐっと顔を近づけて迫って来る姿に顔が熱くなるのがわかる。
・・・・・・・あと数センチ。
どっちかが動けば、
キス。
・・・・出来ちまう距離、だ。
思わずごくりと生唾を飲み込んだ。
いやいや落ち着け俺、
そういうのは好きな奴同士・・・恋人同士がするもんだろ?
この状況でするのはおかしいだろ。
いやでも俺は今無性にしたい。
・・・・アコの唇を、奪っちまいてェと思ってる。
・・・・・ということは、だ。
・・・・・俺はアコが好き、なのか。
「・・・・・エース?ねえ」
「・・・・・・・・やっべ」
「え?」
顔を真っ赤にしたエースが、
ふにゃりと倒れた。
「エース!?大丈夫!?ちょっ、大変!!」
慌てて部屋を出て、
「マルコさん・・・・・っ!!!」
エースが死んじゃう!!!
マルコさんにエースを診てもらって、
「エースどうですか、マルコさん」
「ありゃ重症だよい」
と何故か苦笑したマルコさん。
「そんな・・・・私が代わってあげられたらいいのに・・・・」
すごい熱あったみたいだし・・・・最近変だったのも具合が悪かったから?
「そうだねい・・・エースの熱が移ればエースも喜ぶだろうけどよい」
「私移しに行って来ます!!」
そうだよねエースの熱が私に移ればエースの熱が下がって少しでもエースが楽になれるよね!!
ベッドに横たわったエース。
「エース・・・・」
「・・・・・悪ィ」
「エース、私に熱移して」
「は!?ななななん、何言ってんだアコ!」
「そしたらエース楽になると思うし!」
「・・・・・馬鹿。俺は元々メラメラの実食ってっからこんなの何でもねェよ・・・・」
「でも重症だってマルコさんが・・・っ!!」
「重症・・・・・っつーか・・・・・」
エースは手のひらを自分の額にやって何かを考えているよう。
それからちらりと私を見て、すぐにふい、と顔を逸らした。
私はそれがとてもショックで。
「エース」
「いでェ!!」
両手でエースの首を私の方に戻した。
「・・・・何で私を見てくれないの」
「みっ見てんだろ今!」
「さっきまで見てくれなかった!!」
「じゃあもういいだろ!?」
「良くない!ていうか重症て何!?私どうしたらエースを助けられる!?」
「・・・・・じゃあ、よ」
「うん」
「・・・・アコ」
「・・・・なに?」
「俺のこと、好きって言ってくれ」
そんなの言われなくても好きだし、と思って。
「好きだよエース」
「・・・・・・・・・俺も、好きだ」
エースはそう言って微笑むと、
「・・・・・・ん、っ?」
顔を近づけて、私の唇にエースの唇が、
重なった。
・・・・あつ、かった。
「・・・・・移ったか?」
「うつった・・・・・・・・かも」
・・・・・唇が離れた後にエースを見たら、
何だか妙に色っぽく見えて。
「・・・・・・おーい、アコ?」
「・・・・・っ、ぴゃあああああ!!」
恥ずかしくて顔見れない!
「え・・・・・っ、エース、あの、こ、こん、今度・・・・っ」
「お、おう・・・・・っ」
「し、・・・・・・つ、わ、」
今度島に着いたら、私と。
「ななな、なんだ!?」
「で・・・・・っ、で・・・・・・・・・!!」
「・・・・・・・で?」
「・・・・・・・・・・・・・やっぱ無理ぃぃぃ!!!!」
「うぉぉぉ!?待てよアコ」
デートして下さい、なんて。
言えなくて逃げた。
エースに追いつかれて、
『今度島に着いたら俺とデートして下さい』
と真っ赤な顔で言われるまであと数十秒。