短編③
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ふぅ、と軽く息を吐いてお茶を飲み干した。
・・・・・ちょっと疲れた。
料理は好きだし、
ここでの生活も苦じゃないけど、
今日はもうすぐ島に着くという情報からか、
皆食べる食べる。
自分が作ったものを喜んで食べてもらえるのは嬉しいから、私も頑張る。
・・・・でも何か、ちょっと癒されたい。
怒涛の現実も嫌いじゃないけど、
のんびりする時間も欲しい。
例えは・・・星を見ながらお茶したり。
あ、そういえば今日はエースが見張りだったんだっけ。
差し入れ持って行こう。
思い立ったらすぐ行動。
で、お茶とお菓子を用意して。
厨房を出て上を見たら、満点の星空。
エースと・・・一緒に見よう。
うん。
改めて決意し直して、
梯子を登った。
「エースっ」
「ん?」
「差し入れ、持ってきた」
「お、サンキュアコ」
見張りしてるエースの隣によいしょ、と座り込んで。
「・・・・何してんだ?」
「これ、差し入れ」
「おうサンキュ。・・・・じゃなくてよ」
「わ、すごーい綺麗」
「・・・・何してんだよ」
「お茶とお菓子、私の分も持ってきたの」
「・・・・で?」
「一緒に見張りしよ?」
「はァ?」
思いっきり怪訝な顔を見せたエースに、
「狭くなるの嫌?」
少し心配になって聞いてみたけど。
「・・・嫌じゃねェけど、俺は」
と言うんで安心してお菓子をぱくり。
「良かった。あ、これ美味しいよ」
「お、ホントだ美味ェ」
「でしょ?お茶も特別なの」
「お、すげェ。・・・・・じゃねェよ」
「美味しくなかった?」
「美味いけど・・・一緒に見張りする気か?」
「うん、しようと思って」
「何かあったらどうすんだよ」
「ないよ、エースが居るもん」
「だから俺が・・・・・」
エースは何かを必死に言いかけて途中で止めた。
「エースが・・・・何?」
「・・・・・何でもねェ」
「星が綺麗でしょ、今日」
「雨上がりだしな」
「エースと一緒に星見てお茶会したいなぁって」
「見張りじゃねェのかよ」
「見張りながらお茶会」
「・・・・あ、そ」
「駄目?」
エースなら喜んで一緒にやってくれると思ったのに。
エースは私の予想とは違って少し戸惑ってる様子。
「んじゃ、乾杯すっか」
「うん、乾杯」
でも次の瞬間には笑顔で乾杯してくれてほっとした。
美味しいお菓子食べて、
お茶飲んで。
綺麗な星空見て。
「ほわぁ・・・・・」
「・・・何だよ変な声出して」
「幸せだなぁって思って」
「菓子が美味いから?」
「それもあるけどね。何かこう、時間がゆっくり流れてく感じが」
「今日ずっと忙しそうだったもんなアコ」
「忙しかった!目が回る程。だから星でも見てゆっくりしたいなぁって思ったの」
「ちょうどいいとこに見張りが俺だったって訳か?マルコじゃこうはいかねェもんな」
あれ、何だろ。
何か棘があったような気がした、今のエースの台詞。
「・・・意外と優しいよ?マルコさん」
「・・・そうかよ」
あ、何か不機嫌になった。
ぶすっとした顔で口をきゅっと結んで、
目の前のお菓子に手をつけなくなった。
「・・・・エース?どうしたの?」
「別にどうもしねェ」
・・・・明らかにどうかしてるんだけどな。
「私エースの邪魔したくて来たんじゃないよ?」
「星が見たかっただけなんだろ?」
・・・・本来ならここで、
邪魔してごめんね、って言って戻るべきなんだと思う。
でも今のエースは怒りの中に悲しみが混じってる気がしたから。
戻れない。
「ごめんね、弱くて」
「べっ別にそういう意味じゃ・・・ねェ、よ」
苦笑したらエースが焦ったように返してきた。
「だって今日夕飯の時エースが居なくて寂しかったんだもん」
「・・・寂しかった?」
「そ。だからエースの顔見たいなぁって思って」
「・・・俺の顔が?」
「エースの元気な顔見ながら星も見たい。そんで美味しいお茶とお菓子があったら最高だなって」
「ははっ、随分多いな」
あ、エース笑ってくれた。
「欲張りよ?海賊だし」
「じゃあ俺も欲張りになるかな」
「何々、お菓子もっと食べる?」
「いや」
安心して身を乗り出したら、
エースの腕が私の背中に伸びて、そのまま引き寄せられた。
自然とエースの腕の中に納まる私の身体。
「えっエース!?」
「アコ抱きしめながら星見て、美味いモン食う」
「抱きしめ・・・って私っ!?」
いや実際抱きしめられてるんだけど!
「あァ。最高」
満足そうなエースの声音にただ呆然。
「でっでも・・・これじゃ」
「駄目か?」
「これじゃ私お菓子食べられないしお茶も飲めないし星も見れないよ!?」
目の前に見えるのはエースのたくましく分厚い胸板。
「あー・・・・まァ、食って見れりゃいいんだろ?」
「え、うん。そうだけど」
私の答えを聞いたエースは少し体を離して、
片腕でお菓子を取り、
私の目の前に。
「ほら」
「あ・・・・・む」
差し出されたお菓子をそのままぱくり。
「これで問題ねェよな?」
ご機嫌なエース。
「ない・・・・かな?」
「ないだろ?そもそもこれくらいは覚悟しとけよな」
「と言われても・・・・!」
「夜だし・・・2人きりだし、距離も近ェ」
ぐ、っと顔が近づいた。
まままま待って、エースってよく見ると(見なくてもだけど)イケメンだ・・・!
「だから危ないって言ったろ?」
「エースが危ないの・・・!?」
「そういうこと」
それからエースは妖艶な笑みを浮かべて、
ちゅ、と私の頬にキスをした。
「・・・・・・・・・・うぇっと」
・・・・これは、何て言っていいか。
「なァ」
「・・・っ星が、見てるよ・・・」
「いいんじゃねェ?たまには」
「たまには?」
「いつも見られてばっかだろ、星は。だからたまには俺らを見りゃいいんだ」
「・・・・星ってもっと神聖なものなのでは」
「つーか、逃げねェの?」
「大好きな星を・・・大好きなエースと見られて幸せだから」
「じゃ、星に感謝」
言いながらそのまま、今度はお互いの唇が重なった。
「・・・・・っもう、エース」
「いいだろ?」
「・・・いいけど」
にィ、と笑ったエースの後ろに、
流れ星が一瞬見えた。
お星さま、お星さま。
どうかお願いです。
エースの失礼お許し下さい。
・・・・どうか、
エースと私のことをそっとしておいて下さい。
恥ずかしいから、
2人だけにしておいて。