短編③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私の恋人。
・・・・・といえば真っ先に思いつくのが煙草。
レッドフォース号副船長、ベンベックマン。
煙草、吸い過ぎ男。
まあ彼女としては、彼を夢中にさせる煙草の味。
知りたいじゃない?
「1本でいいの」
「駄目だ」
「・・・・・じゃあベックが今吸ってるやつ」
半分くらいしかないけど。
私の隣で煙草に夢中なベックに煙草をねだれば、
「匂いだけで十分だろう」
とのたまう。
絶対吸わせてくれない彼。
「知らないの?ベック」
「・・・・何をだ」
ベックは素知らぬ顔で空に煙を放つ。
「受動喫煙の方が身体に悪いのよ」
「なら離れるしかねェな」
「・・・・・ちょっと」
彼女の私より煙草を選ぶらしい。
「アコ、お前を守る為だ」
「・・・・・・納得いかない」
「美味いもんでもないぞ」
「じゃあ何でベックは吸ってるのよ」
「・・・・俺は大人だからな」
「私は大人じゃないとでも?」
「俺は子供に手を出す趣味はない」
「じゃあいいじゃない」
「煙草に手ェ出すにはまだまだだな」
「・・・・何それ」
ベックは薄く微笑んだまま私から遠ざかってしまった。
・・・・追いかけたって無駄だ。
また同じように交わされるだけ。
それがわかってるから追いかけられない自分も悔しい。
仕方ないので以前見かけた、
ベックと同じ煙草を吸っていた人を見つけた。
「1本下さい」
とお願いしてみたら簡単にくれた。
本当はベックから直接欲しかったんだけど、
こればっかりは無理そうなので仕方ない。
ベックと同じ煙草が吸えるだけでも。
ドキドキしながら煙草に火をつけて。
口につけようとした瞬間。
「あ」
ぱっ、と手から煙草が消えた。
「・・・・・ベックぅ」
軽く睨みつけるけど本人は顔色1つ変えず私の煙草を自分の口に銜えた。
「まったく油断も隙もない」
「それはこっちの台詞」
美味しそうに吸うなあ、もう。
・・・・でも、いい匂い。
ベックの吸う煙草の匂いは特別に好き。
「随分可愛い顔をしてるようだが」
「好きなの。ベックの煙草の匂い」
「・・・俺よりも、か?」
「あら、お互いさまでしょ」
「・・・・・何がだ」
「私よりも煙草が好き」
「何だ、煙草に妬いてるのか」
「・・・・・・妬いてないと思った?」
拗ねた顔を見せた私にベックはくつくつと笑った。
「そんな可愛いことを言っても吸わせられねェ、と言っておこう」
・・・・もう。
ホントに頑固。
煙草を吸うその大きな手。
・・・・カッコいいなあ。
好きなんだよね、煙草吸ってる手つきっていうか。
何処か遠くを見てるような表情とか。
言わないけど。
・・・・好きだなあ。
「受動喫煙の方が身体に悪いのよ」
それくらい知ってる。
何年吸ってると思ってるんだかな、このお嬢さんは。
「なら離れるしかねェな」
「・・・・・ちょっと」
アコは最近煙草を吸いたがる。
こいつの隣で吸ってたのが仇になったな。
「アコ、お前を守る為だ」
「・・・・・・納得いかない」
「美味いもんでもないぞ」
「じゃあ何でベックは吸ってるのよ」
「・・・・俺は大人だからな」
「私は大人じゃないとでも?」
「俺は子供に手を出す趣味はない」
「じゃあいいじゃない」
「煙草に手ェ出すにはまだまだだな」
本音を言えばアコが俺と同じ匂いになるのは避けたい。
・・・・言えないが。
「・・・・何それ」
こんな時お頭なら躊躇なく言えるのかもしれないな、とアコの文句を背中に受けてお頭のところへ向かった。
「過保護だなァ、ベン」
「・・・・親じゃない」
「1本くらい吸あわせてやりゃあいいだろうに」
「・・・・見たくない」
「それを本人に言ったか?」
「言えるか」
「そんなんだと浮気されても知らねェぜ、俺は」
「アコが浮気?あり得ないな」
「・・・・この間とあるクルーをじっと見てたぞ、あいつ」
「・・・・そいつの名は」
名前を聞けばピンと思いついた。
俺と同じ煙草を吸ってるやつだ。
「・・・・・・まさか」
嫌な予感がしてアコを探し当てれ案の定だ。
予感的中。
「あ」
煙草に火をつけてまさに口に銜えようとしたところを取り上げて、
自分の口に銜えた。
「・・・・・ベックぅ」
不満そうに睨み付けてくるアコには悪いが、間に合って良かった。
「まったく油断も隙もない」
「それはこっちの台詞」
知らないんだろうな、アコは。
俺が煙草吸ってる時・・・・アコの側にわざといることを。
嬉しそうな顔を俺に見せることを。
この顔が見たくてつい、側で吸っちまう。
「随分可愛い顔をしてるようだが」
「好きなの。ベックの煙草の匂い」
「・・・俺よりも、か?」
「あら、お互いさまでしょ」
「・・・・・何がだ」
「私よりも煙草が好き」
「何だ、煙草に妬いてるのか」
「・・・・・・妬いてないと思った?」
アコは拗ねた顔を見せて俺を見つめる。
「そんな可愛いことを言っても吸わせられねェ、と言っておこう」
俺の煙草の本数が増えたのはアコのこの顔が見たいからだ、とは。
・・・・絶対言えないが。
「ベックの馬鹿」
「何とでも。・・・・ああ、だがさっきのは撤回してもらおうか」
「さっきの?」
「俺より煙草の匂いが好き、というやつだ」
「・・・根に持つね」
「気分がいいものではないからな」
「ベックだって私より煙草の方が好きなんでしょ」
「・・・・そう思うか?」
「・・・・違うの?」
・・・・言えないことは多いが。
「これだけは言っておこう。俺の大事なものはただ1つだ」
「・・・何?」
首を傾げたアコの唇を塞いだ。
「・・・・以上だ」
「・・・・・っ、いや何も言ってないでしょ!?」
煙草の味のキス。
・・・・・私だって。
背伸びをしてベックの唇に自分の唇を重ねた。
「・・・・煙草の匂いよりこっちがいい」
・・・・でもいつかは、彼と並んで吸ってみたいなあと密かに思っております。