短編③
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その日は本当にたまたま、喉が渇いたなと思ってコンビニに寄った。
ついでに可愛い弟の為に食べ物でも買っておくか、と。
そんなことを考えて大学の帰りに入ったコンビニ。
飲み物と、適当な菓子を持ってレジへ。
「いらっしゃいませ」
明るい声に、目の前の色が変わった。
・・・・・・気がした。
コンビニの制服を着た、レジの女性。
「お客様、どうぞ?」
「・・・・よろしく」
「はい、お預かり致しますね」
素早く商品を袋に入れる手はお世辞にも綺麗とは言えねェが・・・・苦労してることが知れる。
無駄のない素早い動き。
上品な所作。
・・・・笑顔。
・・・・・・やべェ。
これは完全にアレだ、一目惚れ・・・・だな。
「300円のお返しですお確かめ下さい」
「・・・・有難う」
「有難う御座いました!」
店を出ながら考える。
・・・・・年齢は俺と同じくらいか?
年上には見えなかった。
・・・・いい店を見つけた。
平日の朝はいないだろうから、この時間帯から夜にかけてが狙い目だな。
そして時間的に考えるに、大学か家、または両方がこの店に近いのかもしれない。
夜、可愛い弟に機嫌がいいと指摘されるくらいには、俺は今幸せだ。
「いらっしゃいませ」
まずは顔を覚えてもらわないとな。
この間と同じお茶とお菓子をレジに持って行く。
さすがに毎日は怪しまれるので日を置いてこれを繰り返す。
「有難う御座いました!」
「有難う」
目を見てお礼は必ず言って出て行く。
混雑する時間帯は避けるに限る。
他のレジに誘導される可能性があるからだ。
それを何回か繰り返すうちに、
俺が行くと彼女の方が、
あ、という顔をしてくれるようになった。
「いらっしゃいませ、いつも有難う御座います」
「こちらこそ。大変だな、いつも」
「これ、美味しいんですか?」
「・・・・ああ、これな。弟が大好物なんだ」
「いつも買ってらっしゃいますもんね。何か私も気になっちゃって」
「へェ・・・・」
会計を済ませたあと、
「これ、食べ見るといい」
「え、でも弟さんに・・・・・」
「また買いに来ればいいさ。何なら弟もここに連れて来る」
「有難う御座います!是非弟さんとのご来店お待ちしておりますね」
「・・・・・夜もここに?」
「はい、22時まで」
「失礼は承知で聞く・・・・答えたくなかったら構わねェ。大学生、で合ってるか?」
「はい、近くの大学に通ってます」
ここに近くの大学は俺の通っているところ1つしかない。
ということは大学も同じか。
「俺も」
「え?」
「俺も同じ大学だ、たぶん」
「ほんとですか?じゃあ何処かで会ってるかもしれませんね」
「そん時はよろしく頼むよ」
「こちらこそ」
「バイト、頑張って」
「はい、有難う御座います」
・・・・話せば話す程好きになる。
22時、か。
21時過ぎ。
「ルフィ、肉まん食いたくないか?」
「食いてェ!」
「よし、コンビニ行くぞ」
「行くー!!!!」
「あ、いらっしゃいませ」
店内に入れば人は2、3人の客が居る程度。
この辺は住宅街ではないから夜はこんなものなのだろう。
「紹介するよ、弟のルフィだ」
「肉まん買いに来たぞ!」
「はい、有難う御座います」
彼女が肉まんを取るのと同時に、
「アコちゃん、あがっていいよ」
裏から声がかかった。
「はーい」
・・・・アコ、か。
苗字は名札とレシートで確認していたが名前までは知れなかったからな。
今日はラッキーだ。
「終わりなら送っていくよ」
「え、そんなお気遣いなく」
「サボは優しい兄ちゃんだから気にすんな!」
しししっ、と笑うルフィにつられてアコも笑った。
「じゃあ・・・お願いします」
ナイスルフィ。
やっぱり連れて来て正解だった。
ルフィも居れば警戒心も薄くなるしな。
「すみませんお待たせしちゃって」
・・・・私服。可愛い。
「いや、行こう」
「えと・・・・・有難う御座います。サボ、さん」
「同じ年だろ?それに今は店員と客でもないから敬語も使わなくていいよ」
「・・・ありがと、サボ君。ルフィ君も」
「ししし!肉まん美味かったぞ!」
「どういたしまいて。私ももらったお菓子美味しかった、有難う」
「サボ!俺食ってねェ!!いつものやつ!」
「もう買ったよ、家帰ってからな」
「サボ君は本当にルフィ君のことが好きなのね」
「え?」
「だってレジに来る時いつも嬉しそうだから。ルフィ君の為のお菓子だから、でしょ?」
・・・・・・そういう訳じゃないんだが。
まあ、いいか。
「・・・可愛い弟の為だからな」
彼女を無事に送り届けて、
さて次はどう動くかと考える。
ある時いつものように店に入ると、
「お帰り下さい」
・・・・レジに立つ彼女の顔が強張っている。
目の前の客は男2人。
隣にある高校の制服、だなあれは。
「だぁーかぁーらーこの制服はコスプレなんだって。俺達ホントは成人してんの。だから煙草売れって」
「でしたら身分証明書の提示をお願い致します」
「いいから早く煙草売れって」
「身分証のご提示を」
「てんめェ・・・・・・」
毅然としたアコは・・・・綺麗だった。
と、見惚れてる場合じゃないな。
「いい歳したオトナがコスプレでコンビニ来て煙草買うか?」
「あ?なんだてめェ」
「そこに高校、あるだろ?」
「・・・・だったら何だよ」
「スモーカーって教師知ってるか?」
「・・・・・・・・・・・・・スモーカー?」
「俺知り合いなんだけど、怖ェよなァ」
と笑ってみせた。
男2人は舌打ちをして、店を出て行った。
「あ・・・・・・サボ、さん」
「大丈夫か?」
「あ、はい・・・有難う御座いました」
「ったく面倒な奴ら」
「あの・・・・サボさん、いつも本当に有難う御座います・・・」
「カッコ良かったぜ、アコ」
「サボさんの方が・・・カッコ良かったです」
ほっと安堵した顔のアコに俺も肩を撫で下ろした。
ほんとはここで抱きしめたい。
「そっか?」
「あ・・・・・あの、何かお礼をさせてください!」
「礼なんかいらねェよ」
「でも何か・・・・!!」
必死なアコに、弱みにつけこむのは趣味じゃねェんだが・・・・まあ、言うだけならと思いつく。
「じゃあ・・・俺とデート、して欲しい」
「え・・・・・それお礼になります?」
「ああ、もっとアコとゆっくり話してみたいと思ってたんだ。・・・・迷惑?」
「いっいえ!私も・・・・!!同じ、です」
無事にデートの約束を取り付けた。
あとは。
「一目惚れしました、俺と付き合って下さい」
顔を真っ赤にしたアコが頷いてくれるのを楽しみに待つかな。