短編①
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うちのお頭はお酒が大好きの宴大好きな人で。
普段はいい加減で、ちゃらんぽらんなんて言われてたりもするけど。
それでもいざとなれば頼りになる人だ。
「んー・・・」
きゅっきゅ、と雑巾で甲板の柵の掃除。
船は島に停泊してて、ほとんどのクルーは船に居ない。
そういう時こそ船を掃除するチャンスな訳で。
けれどお頭は船に残っている。
今頃書類の山と戦ってる頃だろうな。
あの時のベンさんは怖かった。
すんごく怖かった。
「よし、っと」
一通り終えて次は部屋掃除かな、と行こうとすると、
「こんにちは」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには知らない男の人。
お頭より若い、かな。
さわやかなイケメン風。
でも問題はそこじゃないんだ。
「降りて下さい」
「え?」
「そこ!掃除したばっかなんですけど!降りて下さい!」
「あ、ああ・・・これは申し訳ない」
男の人が立っていたのは今の今まで掃除していた甲板の柵の上だったから。
「で、どういったご用件で?」
「君に教えてあげようと思って」
「・・・・何をですか」
男の人はうさんくさそうな笑みを浮かべている。
「この船のお頭さんのことだよ。・・・彼が何をしたか知ってるかい?」
「興味ないです」
「それが君の家族のことでも?」
「・・・・どういうことでしょう」
「教えてあげるよ、赤髪のシャンクスの本当の姿」
そう言った男の人の目は、笑っていなかった。
「どうしたアコ、ぼけっとして」
いまだに書類と格闘中のお頭の部屋の掃除中。
いつの間にか手が止まっていたようだ。
「お頭・・・あの、お頭と同じ年齢くらいの爽やかなイケメン風の海賊さんご存知ですか?」
「何だそりゃ。そいつがさっきの客か?」
「・・・気づいてたんですか?」
「まァな。危険はなさそうだと思ったんだが・・・何かされたか」
じぃ、っと真っ直ぐに見つめられて返答に困った。
特に何かされた訳じゃない。
「そういう訳じゃないんですけど。ただ、自分の船に来ないか、って」
「ほう。俺からアコを奪おうとするたぁいい度胸だな。そいつの名前は?」
「名前は教えてくれませんでした。あとでもう1回来るそうですけど」
「で、アコは何て言ったんだ?」
「それは・・・・・」
あの人に言われた。
私の住んでいた村を、家族を海賊に襲わせたのはお頭だ、と。
私を手に入れるために私以外の皆を殺したのだと。
君は騙されているんだ。
僕と一緒の方が幸せになれる。
そう、言った。
『今日の夕方、もう1回返事を聞きに来る』
『来ないで下さい。面倒くさいから』
「って、そう言いました」
「だーはっはっは!さすがアコだな!」
「だってホント面倒くさいの嫌いなんですよ私」
「お、来たな?」
「え?」
それだけ言うとお頭は書類の山を残して部屋を出た。
私もお頭の後を追う。
「やあ、返事を聞きに来たよ」
今度はちゃんとした所に立ってる。よし。
「せっかくのところ悪いがこいつを渡す気はねえんだ、帰ってくれ」
「お、お頭」
「僕が聞きたいのは彼女の意見だよ。・・・来てくれるよね?」
自信ありげに微笑むその人に、
「行きませんけど」
と返す。
当たり前だ。
その人はひどく驚いて、狼狽した様子を見せた。
「まだわからないのか?君はその男に騙されて」
「それを私が信じる訳ないじゃないですか」
「その男を信じるのか」
「信じられますよ。ずっと側で見てきたから」
「・・・いつか裏切られる」
「裏切られてもいいっていうのが信じる、ですよお兄さん」
言葉に詰まった男の人に、お頭がとどめをさした。
「こいつを俺から奪おうってんなら覚悟は出来てるんだな?容赦はしねえ、相手になるぞ」
「ひっ…!うわああ!」
可哀想に男の人は青ざめた顔で逃げて行った。
これは後でわかったことだけど、男の人はたまたま近くの港に停泊している海賊の船長さんで、
何処かで私を見かけて一目惚れしたらしい。
でも四皇赤髪のシャンクスには敵わないので私の心理を利用して自分の物にしたかった、と。
家族のことは町に降りてるクルーに聞いたみたい。
「アコ」
「はいー?」
「あの男の言うことを疑わなかったのか?」
「・・・私は誰より自分を信じてます。だから私が信じてるお頭を疑う理由は一ミリもないですよ」
「よし、アコの愛の言葉も聞けたし、今日は宴だ!」
「愛の言葉じゃないですけど!?」
・・・・・いざって時は頼りになるんだけどなあ。