短編③
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「・・・・・・ん・・・・しゃん、くす」
「可愛いなァ、アコは。・・・・最高に可愛い、愛してる・・・・」
長い口づけと、甘い言葉。
カッコ良くて仕事も出来て優しくて女性にもモテる。
最高の恋人。
・・・・・私には釣り合わない、恋人。
身体を重ねたあとに浸るのは幸せじゃなくて。
勿論幸せもあるんだけど、
少しの幸せと・・・・・寂しさ。
それでも今は、
「うん・・・・私も好き、シャンクス」
私も愛の言葉を紡ぐ。
デートの待ち合わせに少し遅れて、
慌てて待ち合わせ場所に着いた。
でもそこに居たのは。
シャンクスと、見知らぬ2人の女性。
そう言えばこの間もお昼に女性と歩くシャンクスを見かけたっけ。
・・・・・もうヤキモチも妬けない。
疲れてしまった。
シャンクスはすぐに私に気づいて駆け寄ってくれる。
「アコ」
「ごめんね、シャンクス」
「いや、俺も今来たところだ」
・・・・嘘つき。
「・・・・ほんとにごめんなさい」
「・・・・アコ?」
「私と別れて欲しいの」
「・・・・何を」
シャンクスの顔色が変わったのを見て、
私は背中を向けた。
「さよなら」
ごめんねシャンクス。
アコ、と私の名前を呼ぶ声が辛くて走った。
幸せになって。
・・・・私のことは、忘れて。
別れを告げた夜、
シャンクスから何十件もの着信があった。
話しがしたい、と。
言ってくれた。
応じたくなる自分を堪えて、携帯を見ないようにした。
たまに好きだけど彼の為に別れたと泣く友人を見て、好きなら別れなきゃいいのに、と思ってたけど。
今ならわかる。
好きだからこそ、別れるんだって。
この日からとにかく徹底的にシャンクスを避けた。
会ったらきっと泣いてしまうから。
まだ好きだと・・・・思ってしまうから。
・・・・って、シャンクスの為に決意して別れを告げたのに。
あれから2か月。
長い長い、2か月だった。
シャンクスと同じような身長の人を見かける度にドキッとして。
シャンクスと同じような髪の色の人を見かける度に胸が締め付けられて。
シャンクスと同じような声の人を見かける度に泣きそうになる。
・・・・・会いたい。
馬鹿だな、自分から別れを告げたくせに。
ああこの服シャンクスに似合いそうだなあとか。
贈ったらどんな素敵な笑顔で喜んでくれるんだろうとか。
・・・・シャンクスと行きたいなあと思ってしまう場所だったり。
全然シャンクスから離れられない。
このネックレスシャンクスと初めてのデートの時に買ってもらったものだなあとか。
一緒に行った映画の半券とか。
お祭りの時に射的でシャンクスに取ってもらったぬいぐるみとか。
・・・・・・思い出全部、捨てられないの。
忘れなくちゃ。
もう、終わった恋。
・・・終わらせた恋、なのだから。
気分転換に、と友達を誘って出掛けて。
駅で別れて、帰り道。
遅い時間だし、人気のない道は通りたくない。
・・・・どうしよう、でも。
・・・・・・・・どの道この時間人通りは何処も変わりない気もする。
それなら、近道を。
そう思うんだけど、近道だと・・・シャンクスの会社の近く。
でも・・・・この時間ならもういない、よね?
会いませんように。
ドキドキしながら早足で家を目指す。
「失礼」
「ひゃい!?」
突然背後から声をかけられて驚いた。
心臓が、止まったかと思った。
でも声が違う、シャンクスじゃない。
「・・・・俺の勘違いでなければ、あんたはシャンクスの・・・・・」
ああ、私の知ってる人。
シャンクスの会社の人。
「ベックさん・・・・ですよね」
「ああ。アンタはシャンクスの元恋人・・・だったな」
「・・・そう、です」
「不躾なのは承知の上だが、聞きたいことがある」
「なん・・・でしょう」
「・・・他に男が?」
あまりにもストレートな質問に怒る気もしなかった。
「いえ、そういう訳では」
「シャンクスにまだチャンスは?」
「・・・・それ、は」
「その様子を見るとまだありそうだな」
「ないです。シャンクスとはもう終わりました」
「・・・・・・あいつは今でもあんたを忘れてない」
「・・・すみません先を急ぎますので」
「ろくに飯も食わない。仕事にもなりゃしない」
・・・・胸に突き刺さる言葉。
「・・・・私、は」
「ずっとアンタに会いたがってる。今でも、だ」
私にどうしろって言うの?
私から別れを告げたのに。
「・・・・・あいつはまだアンタを想ってる。それだけ伝えておく」
煙草の匂いが鼻を掠めた。
・・・・・・・・違う。
違う違う違う!!
私はシャンクスを苦しめたかったんじゃない!!
私は・・・・・・っ!!
「シャンクスはまだ仕事中ですか・・・?」
「仕事にならないのでとっくに帰した」
「有難う御座います・・・っ!」
居てもたっても居られず、シャンクスの家まで来てしまった。
もう来ることはないと思ってたシャンクスのマンションの部屋の前。
震える指でインターホンを押したけど反応はない。
・・・・捨てられなかった合鍵で、ドアを開けた。
「・・・・・しゃん、くす?」
声をかければすぐにばん、どん、と音がして。
「・・・・・・アコ?アコなのか?」
「あ・・・・・・」
久しぶりに会えたシャンクスはやせ細っていて。
精悍だった頃のシャンクスの面影はない。
・・・・・こんな。
「アコ・・・・・会いたかった・・・・!」
私の前で止められた腕が、私がしたことを物語ってる。
・・・・・嫌われたと、思ってるから。
まだ、好きなのに。
こんなにも好きなのに。
初めて自分からシャンクスを抱きしめた。
「・・・・シャンクス、ごめんなさい」
「・・・・アコのごめんなさいは、こたえる・・・・」
「シャンクスにとって邪魔にならないようにいなくならなきゃって思ったの・・・私、勝手に・・・・っ」
勝手な思い込みで、結局シャンクスを苦しめて。
「・・・・・・それは、まだ俺にもチャンスがあるってことか?」
「・・・・こんな勝手な私でも、いい?」
「アコは悪くないさ・・・俺が不安にさせてたことに気づいていながら・・・何も出来なかった」
・・・・シャンクスはこうやってずっと、私を責めずに自分を責めてたんだ。
・・・・・・なんて優しい人。
「ずっとシャンクスのこと忘れられなかった・・・・っ今でも好き・・・・っ」
「俺も・・・・1秒たりともアコのことを思わない日はなかった・・・・・」
「・・・・ごめんなさい・・・・っ」
「またアコに触れることは許されるのか?」
「大好き・・・・っ」
この言葉を合図にしたかのように唇が重なった。
久しぶりのシャンクスの口づけ。
いつも優しいシャンクスには珍しく少しだけ荒々しい。
「・・・・・ん・・・・・は・・・ぁ」
「このままベッドに連れて行っても・・・・?」
「・・・・ん」
「悪い・・・我慢出来ない・・・・」
「いいよ・・・・シャンクス・・・・」
唇から腕、胸元に移って行くシャンクスの唇。
お姫様抱っこで優しくベッドに降ろされた。
久しぶりのシャンクスのごつい手が私の胸元をまさぐる。
それだけで身体が熱くなる。
「ぁ・・・・・は、ぁ・・・・・っ」
「アコ・・・・アコ・・・・・っ」
名前を呼んでくれるだけでこんなに嬉しくて、
こんなにも涙が零れて。
「・・・・シャンクス、愛してる・・・・」
心からあふれた愛してる。
ベッドの中でお互いに離すまいと抱き合って。
突然。
ぐう、ぎゅるる・・・・・とお腹の音。
「・・・シャンクス」
「・・・すまん、安心したら腹が減って来た・・・・」
「待ってて、私なんか作る」
「いや・・・何も、ねェんだ」
「あ、じゃあ買い物に行ってく・・・・・」
きゅ、と袖を掴まれた。
「・・・・俺も行く」
真剣なシャンクスに思わず泣きそうになった。
「うん。一緒に行こう」
逃げてた自分を恥じた。
シャンクスと釣り合わないと思うのなら、
釣り合う自分になればいい。
いくら頑張っても周りから何か言われることもあるかもしれないけど。
シャンクスが選んでくれた。
シャンクスを幸せに、私がする。
・・・・ずっと、彼の隣に立つ。