短編③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
脈がないとは思わない。
・・・・・が、脈があるとも、思えねェんだよなァこれが。
かといって、イチかバチかで告白してみろ。
・・・・船を降りる、なんて言われちまうかもしれねェ。
アコなら言いかねない。
そんなことになったら最悪だ。
「・・・・・んで、告白に踏み切れねェ情けないオッサンになってると」
「・・・悪かったな、情けないオッサンだ」
ヤソップに揶揄われても仕方ない。
それくらい弱気になっていることは自覚しているつもりだ。
「もしかしたら、ってこともあんだろ?言ってみろって」
「それでアコがいなくなるかもしれないのにか?」
「だぁからよ、そんなの考えてたら何も動けねェだろお頭」
「・・・・わかっちゃいるが」
「アコの気持ちも考えてみろって。お頭のことを好きだったらお頭の方から動いて欲しいもんだろ?」
「アコが俺のことを何とも思ってなかったらどうする」
「・・・・・重症だなこりゃ」
「自負してる」
困らせたくはない。
・・・・アコの困った顔はそりゃあ可愛いが。
泣かせたくもない。
・・・・泣いた顔も可愛いが。
何より俺の前からいなくなるかもしれない可能性があることが、
1番怖い。
「お頭ールフィ君の新しい手配書見ました?」
「あいつまた上がったのか」
「顔つきも男らしくなりましたしね、会うの楽しみですね」
・・・・ルフィにまで妬くとは確かに重症のようだ。
「・・・・お頭?どうしました?」
「・・・・いや、まだまださ」
「厳しいですねえお頭」
苦笑するアコに、まだまだなのは俺もだなと内心呟く。
「ルフィ君ならすぐに追いつきますよきっと」
「随分とルフィの肩をもつんだな、アコ?」
「だって可愛いんですもん」
「可愛い、か」
このぶんならルフィは問題なさそうだな。
「あ、可愛いと言えばこの後コックさんが可愛いケーキ作ってくれるって言ってました」
「ほう・・・・そりゃいい」
「お頭も一緒に食べませんか?」
「俺のは普通にしてもらえるように頼んでみるか」
「駄目ですよ。お頭もちゃんと可愛いケーキ食べて下さい」
コックもアコには甘いが、
「ということはアコがあーんしてくれるという訳だな」
「そんなこと言ってませんよ!?」
俺も相当甘いな。
顔を赤くして怒ってみせてるアコが可愛い。
・・・・この存在を、失いたくねェなァ。
ぽんぽんと頭を軽く叩いてみれば、
「もうお頭っ!!子供扱いしないでくださいって!」
子供扱いしてる訳じゃないんだが。
「なら口移しを希望しよう」
「く・・・・・っいいです、よ」
「・・・・・・いいのか?」
肝心の好きだ、という言葉は言えないくせにこんな軽口は叩ける。
・・・・が、叩いてみるもんだな。
これは・・・・・脈、あるのか?
「く・・・・口移しは無理ですけど、あーんならしてあげます・・・・っ!!」
「だっはっは!そっちか!」
「だ・・・・駄目・・・ですか・・・・」
「駄目なワケあるか。嬉しいに決まってる」
アコはほっとしたように肩を撫で下ろし、
「行きましょう!ケーキのもとへ!」
俺に笑顔を向けた。
「こりゃまたえらく可愛いケーキだな」
「美味しそう・・・・!!」
たっぷりの生クリームに苺。
を使って動物が描かれている。
うちのコックにこんな器用なことが出来たのか、と少し驚く。
・・・アコがキラキラと目を輝かせて喜んでいるので、あとでよく礼を言っておくか。
「アコ、約束だ」
「・・・はいはい」
アコは渋々といった感じでケーキを器用に切り分け、
「どーぞ」
おずおずと俺の前に差し出した。
「ん。・・・・・甘いな」
「そこがいいんですよ。私も食べよっと」
「俺は一口だけか?」
「あとはご自分でどうぞ。約束はちゃんと果たしましたからね。・・・・んー美味しい!」
アコはケーキを口いっぱいに頬張って、幸せそうだ。
・・・仕方ないか。
「たまにはいいな、甘いモンも」
「そうですよ。お頭いつもお酒ばっかりですもん」
「そう言ってくれるな。・・・・アコがいるとつい酒も進む」
「・・・・私のせいにしないで下さいよ、もう」
「はははっ、すまん」
ふとアコが俺をじっと見つめて来た。
「・・・・どうかしたか?」
見上げて来る瞳に動揺を隠しつつ聞いてみれば、
「あははっ、お頭ってば、もう」
今度は可愛く笑う。
そして、
「ほっぺ。ついてますよ生クリーム」
「お」
アコの手が俺の頬から生クリームをかすめ取り、そのままぺろり。
・・・・・生クリームになりたい。
「可愛いことしてくれるな、アコ」
「お頭が手が焼けるんですよ」
「・・・・すまん」
もうこのままで、いいのかもしれねェなァ。
そう思っていた矢先。
「・・・・・お頭」
本日2回目の真剣な瞳。
「・・・・また生クリームか?」
「・・・・・・・・・好き、です」
自分の耳を疑った。
・・・・・・・・今、アコが・・・好きだ、と。
俺に。
「・・・・・アコ?」
「・・・・お頭のことが、好きです。私・・・・っ!!」
「本気、か?」
本気か、と聞きながらアコが冗談でこんなことを言わないのはもうわかっている。
真っ赤な顔で、涙すら浮かべて。
「・・・・・・アコは、すごいな」
「いやそれ私の告白に対する返事じゃないですよね!?」
「俺は船を降りると言われるのが怖くて何も言えねェ情けないオッサンだ」
「降りませんよ私、絶対に。・・・・フられても」
その意思の強い瞳に心臓を撃ち抜かれた気分だ。
おっさんでもこんな風になるのか、まったくアコに感謝だな。
予想外の展開に浮かれて、
そのままアコの頬に口づけた。
「なななななんですか!?私にも生クリームが!?」
「いや・・・・ついてたらいいなあと」
「意味がわかんないですほんとに!私の告白返して下さい!!」
「いや・・・返さねェ」
「じゃ、じゃあどうしたら・・・・っ」
「俺の女になってくれ。悪いがもうこれ以上我慢出来そうにないんだ」
我ながら何と勝手だ、と思うが。
さっきまでの臆病な俺にお別れだ。