短編③
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「・・・・後、つけられてんな」
不意にエースがぼそっと呟いた。
「え、海軍?」
「いや、違う」
「じゃあ同業者?いっぱい居る?」
「1人ってとこだな。たいしたことねェよ」
「そっか、良かった」
久しぶりの島で、
久しぶりのエースとのデート。
海軍だろうと海賊だろうと邪魔されたくない。
「んなことよりお前昨日サッチと2人きりになっただろ」
「だってサッチさんが・・・・」
「簡単に2人きりになるんじゃねェよ、危ねェだろ」
「はーい」
まあ確かに、エースがナースさんと2人きりになることはないし。
・・・・周りは男の人ばかりの厨房だから、
エースからしたら面白くないかもしれない。
「腹減ったな、飯行くか」
「うん、そだね」
いつものように何処か適当なところでご飯、と思ったら。
「食事ならおススメの店、あるわよ」
後ろから1人の美女が声をかけてきた。
「あ?・・・・お前、さっきまで俺達の後ろつけてきた奴だな」
「え、この人が?」
エースの言葉に驚く私に、
「いつ声をかけようかと思ってたの。ねえ、火拳のエースさん」
美女はにっこりと優雅に微笑む。
「相手すんならしてやるぜ?」
「あら、嬉しい」
エースの挑発的な台詞に美女は言いながらエースと腕を組んだ。
「・・・・・・んなっ、何考えてんのエース!」
「ままま待て!違ェ!相手ってのは・・・っつーかお前何なんだ!」
「お前じゃないわ、エルよ。お相手、してくれるんでしょう?」
「おおおおお姉さん海賊じゃないんですか!?」
「違うわ。でも、火拳のエースのファンなの」
「俺のファン?」
エルさんはエースから離れようとしないし、
エースはエースでファンとか言われてまんざらでもなさそうだし。
「お腹空いてるんでしょう?私美味しいところ知ってるの」
「よし、行こうぜ」
「・・・エース!一緒に行くの!?」
「いいじゃねェか、一緒に飯くらい」
「でも本当は敵かも・・・・!」
「だとしても簡単にやられたりしねェ」
「そうだけど・・・・」
エースは私の忠告になんか耳を貸さず、
エルさんに腕を引かれるがまま。
・・・・・・・・・私の恋人なのに。
複雑な心境の私を見て、
エルさんがくすりと笑った。
・・・・・・・・・・・・・・・何これ。
「美味ェな、確かに」
「そうでしょ?気に入ってくれて嬉しいわ」
「まァうちの飯の方が美味いけどな」
ほいほいついて行ったエースにはらはらしたけど、
エースにその気はなさそうで少しだけ安心。
「そうでしょうね、とても腕のいいコックさんがいると評判だもの」
エルさんがちら、と私を見た。
「皆料理が好きなだけ・・・だと思います」
「ふふ、ご謙遜。ねえ、今夜船にお邪魔したいわ」
「えええ!?」
「うちの船に?そりゃ駄目だ」
よし!よく言ってくれたわエース!
拒否したエースの腕に、
・・・胸を押し付けるエルさん。
「食いづらいから離れててくれねェ?」
それを押しのけるエース。
ああっもうさっきからハラハラする!!
「食事がしたいだけなのよ、駄目?」
「俺の一存じゃ決められねェ」
「ねえ、駄目?」
今度は私に向かってきた。
・・・・・・何か、最初のイメージが少し壊れて来た。
「・・・ごめんなさい」
「・・・そう、残念だわ」
エルさんががっくりと肩を落としたのとほぼ同時に、エースの顔がテーブルに落ちた。
「あ・・・・寝た」
「・・・・・食事中に寝るの?」
「日常茶飯事です。・・・殺意があれば起きますけど」
「ないわよ、殺意なんて。お邪魔して悪かったわ」
また印象が変わった。
最初は色気たっぷり、だったけど今は割とサバサバしてる。
「エルさん、ほんとにエースのファンなんですか?」
「ええ、ファンよ。貴方のファンでもあるけど」
「・・・私の?」
「ついでに謝っておくけど私一般人じゃないの」
「じゃあ海軍!?」
「同業者よ、貴方たちの」
「・・・・・何の為に私たちに近づいたんですか」
やっぱり罠だったのか、と思わず身構えた。
「貴方たち2人を誘惑しにきたのよ」
「・・・・・・・は?」
何を言われるかと思ったら。
誘惑?
「貴方たちの関係は知ってる。だからいいかなと思って」
「・・・・何が?」
「火拳のエースの強さと、貴方の料理の腕が欲しいの、うちの船に」
「エースの強さと私の料理の腕・・・・」
「そりゃ無理な話しだ」
突然エースが顔を上げた。
「・・・おはよ、エース」
「おう。俺達はオヤジに誓ってんだ、他のとこなんか行かねェ」
「うん、私も。エースと一緒っていうのは嬉しいけど」
サッチさんや、他の仲間と一緒に居たい。
「・・・・そ、残念だわ。ここは出しておいてあげるから、海で遭っても見逃して頂戴」
駄目とわかるとエルさんはあっけなく去って行った。
エースは丁寧にご馳走様でした。とかお辞儀してるし。
「・・・・・・私エースの気持ち、ちょっとわかったかも」
「俺の気持ちィ?」
エースは怪訝な顔をしながら続きを食べ始めた。
「エースってナースさんとあんまり話ししないよね」
「必要がねェからな」
「・・・だから私今まで不安になったりしなかったんだ」
「俺は必要ねェけど・・・アコはサッチと話したりしなきゃいけねェだろ?そんくらいわかってる」
「エース・・・!」
エースってこんな心広かったっけ・・・・!
「でも2人きりになるのは許さねェ」
「うん、気を付ける」
あ、やっぱりエースだ。
でも嬉しい。
・・・・何となく、本当に何となく、
エースの腕に自分の腕を絡めてみた。
「どうした?」
エースは優しく笑いかけてくれた。
「・・・ううん、何でもない」
・・・さっきのエルさんみたいに、
邪魔だって言われるかと思ったけど。
そんなことはなくて。
「なァ」
「ん?」
お茶をごくごく飲んでいたら、
「少しは妬いたか?」
なんてエースが言うもんで驚いてエースを見たら、
ぷい、と顔を背けられてしまった。
・・・・でもその頬は赤い。
「妬いたっていうか・・・・」
「・・・・っていうか?」
「・・・・殺意が湧いた」
「・・・・どっちに?」
「両方」
「って俺もかよ!」
「だって最初腕ほどかなかったし・・・一緒にご飯食べちゃうし」
せっかくのデートなのにさ。
「・・・あーそりゃ、腹減ってたっつーか、嫉妬させたかったっつーか」
「でも船に邪魔したいって言われた時断ってくれて嬉しかった」
「そりゃお前、夜は色々するだろ?だからだよ」
・・・・まぁ、私のことを考えてくれてたことに違いはない。
とりあえず今私がエースに言いたいことは1つ。
「エース、大好き」
「俺も、好き」
笑顔2つ。
いつも一緒。