短編②
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「・・・・・・・・・・・・ない」
さーっと顔から血の気が引いていくのがわかった。
どうしよう。
ない。
いくら探しても見つからない。
棚の上も机の引き出しも奥も床下も探した。
隅から隅まで。
でも、ない。
エースからもらったペンダントが。
1年前にデートで行った場所で、
外国の人が手作りのガラスアクセサリーを売ってたお店。
そこで見つけた、
ガラスのペンダント。
緑色が神秘的に光っていて不思議と惹かれた。
ちょっと高かったから迷ってたら、
エースが買ってくれた。
それからずっと会う時にはつけてたのに。
・・・・・・・何で。
どうしよう、次のデートまでに見つからなかったら。
もしつけずにデートに行って、
エースが気付いて。
なくした、と正直に話したら。
・・・・もし、
『なくした?お前最低だな。別れようぜ』
・・・・・・なんてことになったら!
・・・・最悪だ!!
必死になってもう1回探してみるけど、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ないぃ」
絶望。
そんな時、
携帯が鳴った。
あ、メール。
『今から会えねェ?』
エースから。
・・・・・無理!です!
『ごめん無理』
『今何処』
『家』
『行っていいか?』
『今取り込み中で・・・ごめんね!』
『何かあったら言えよ!』
『有難う!』
・・・・ふぅ、危ない。
と1度は安堵のため息を吐いたものの。
気づいてしまった。
明日デートじゃん・・・・!!
デートの時にいつもしてるから、
明日していかなかったら絶対言われる!
エースと・・・・別れるなんて。
そんなの絶対嫌。
一生懸命、本当に必死に探した。
それでもペンダントが見つかることはなかった。
でもデートに行かない訳にいかない。
・・・エースに会いたいし。
仕方なくストールを巻いてみた。
「エースごめんねっお待たせ!」
「あァ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
手を繋いで歩き出したところで早速エースの視線が私の首元に。
「・・・・・・・な、に?」
お願い気づかないで気づかないでえぇぇ!!
「いや、首巻なんて持ってたんだなと思ってよ」
「・・・ストールね。お洒落でしょ?」
どきどきどきどき。
言わないで言わないで。
ペンダントのことは言わないで!
「まァな。悪くねェ」
にしっと笑ってそのまま前を向いたエースにほっとした。
・・・でも今日1日油断出来ない。
「とりあえず飯行こうぜ」
「うん、そうだね」
お腹すいたーと入ったレストラン。
・・・・ストールしたまま食事をするのは不自然だ。
いやでもはずしたらバレる!
イコールお別れが待っている・・・・!
無理・・・はずせない。
「俺カツカレー大盛り」
「カレー美味しそう!私ポークカレーで」
・・・・そんな状況にも関わらず、
私はエースにつられてカレーを注文してしまった。
馬鹿です。
「取らねェのか、それ」
案の定エースにも突っ込まれる。
「こっ・・・・これもお洒落のうちだから!」
「ふーん、そんなもんか」
こくこくと必死に頷いてはみるものの。
「お待たせしましたー」
と到着したカレーに夢中になって食べているうちに、
「あ」
「・・・・ほらみろ」
「あぁぁ・・・・・」
ストールにカレーが、
ついてしまった・・・・・・。
「取れよ、もっと汚れるぜ?」
「う・・・・・」
「・・・・どうした?」
汚れをつけたまま食べる訳にはいかない。
・・・・でも取る訳にはもっといかないんだ!
「・・・・・・洗って来る」
「おいアコ、」
声をかけてくれたエースの顔をちらりとだけ見て、
席を立ってお手洗いに向かった。
無駄だと思いながらも水でじゃぶじゃぶ洗う。
ごしごしごし。
・・・・・取れない。
何か泣きそうになってきた。
何やってんだろ私。
エースの怒ってるような心配そうな顔を思い出す。
・・・ストール、すぐには乾かないしつけて戻る訳にはいかない。
だからと言って乾くまでここにいる訳にもいかないし。
涙をこらえて、そのままで私は席に戻った。
「・・・・ごめんね突然」
「・・・取れなかったのか、汚れ」
「うん」
「大事なモンだったのか?」
「・・・・うん」
ペンダントがないことを隠す為に大事だった。
「誰かからもらったとか?」
「自分で買った。セールで500円」
「俺初めて見た気がすんだけどよ・・・気に入ってたんだな?」
「・・・可愛い柄だなぁとは思ってた」
「・・・そんな落ち込むなって。俺が新しいの買ってやるから。な?」
「・・・・・有難う」
気遣ってくれるエースの優しさに胸が痛い。
もういっそ全てを話してしまおうかとも思う。
これだけ優しいエースならきっと、
なくしたと正直に言ったら許してくれるかもしれない。
・・・・許して、くれるかもしれないけど。
でもきっと傷つく。
大好きだから、傷つけたくない。
「ご馳走様」
「・・・まだ残ってんじゃねェか」
「もう・・・いいかな」
「・・・もらうぜ」
「どーぞ」
ストールのことを心配してくれてるエースは、
ペンダントのことには気づいてないみたい。
・・・・それでもきっと気づかれるのは時間の問題で。
「そーいや昨日何かあったのか?」
「え、何で?」
「取り込み中って言ってただろメールで」
「・・・・・あぁ、うん」
「何があったんだよ」
「・・・・・・・・・ごめんね?」
「ごめんじゃねェだろ、何があったんだって聞いてんだ」
エースは私の謝罪に苛立った様子を見せた。
「・・・家、片付けてて。ひっちゃかめっちゃかだったの」
「何でまたンな片付けしてたんだよ」
「・・・・えーと、あの、気分転換・・・」
「・・・・気分転換?」
「うん、そう」
「・・・・そっか」
「・・・・・うん」
何だかエースも元気なくなった。
「・・・この後どうする?映画でも行くか」
「ん、そだね。映画行こっか」
映画なら暗いし映画に集中していられる。
そう思って、
やって来た映画館。
でも、肝心の映画の内容は全然頭に入って来なかった。
「まぁまぁだったな」
「・・・そだね」
「・・・・この後アレ見に行くか?首巻き」
「ストールね。別にまだ家にあるから・・・今日はいいよ」
「・・・そっか」
「うん・・・」
じゃあどうしよう、とぼーっと考えながら歩いていたら、急に繋がれていた手に力が入った。
「・・・・エース?」
「・・・・俺」
「ん?」
「アコと別れるつもりはねェからな」
力強い声と真剣な顔。
ドキッとした。
「な・・・・何、急に」
「だってよ・・・お前今日ずっとつまんなさそうだし・・・気分転換とか言ってるから」
別れたいのかと思った。
エースが辛そうに言った。
「・・・それは」
気分転換じゃ、なくて。
どくん、と大きく心臓が跳ねた。
言わないと。
こんなこと言わせるつもりじゃなかったのに。
「ちが・・・違う、私だってエースのこと大好きだよ・・・!」
「・・・ホントだな?」
「・・・昨日、してたのは気分転換じゃなくて。探してたの。ペンダント」
「・・・ペンダント?あのペンダントか?」
「なくしちゃった、みたいで・・・エースに合わせる顔、なくて・・・ほんと、ごめん」
「はぁ!?」
「ほんっとーにごめんなさい!」
「それを早く言えよ馬鹿!」
「だってエースに嫌われたくなくて・・・っ」
「俺が持ってんだぞそのペンダント!」
興奮気味に話すエースの言葉を一瞬疑った。
「・・・・・え、今、何て」
「俺が持ってんだ」
「何を」
「お前がいつもつけてるやつ。・・・・これだろ?」
そしてエースはポケットから私が今朝まで必死に探していたペンダントを取り出した。
「・・・っこれ!めっちゃ探してたのに!」
「昨日俺ん家で見つけたから持って行こうと思ってメールしたんだぜ?」
「ええええ!?」
「でも取り込み中って来たから今日渡そうと思って・・・」
「・・・エースの家に、あったの?」
「おう。・・・この間シた時痛いって言ってはずしただろ」
「あああああ・・・・!そうだったぁ!」
そのまま忘れて帰って来ちゃったんだ!
「良かったぁぁ・・・・」
安心して涙がこぼれた。
「・・・じゃあ今日アコが変だった理由って」
「ペンダントがなかったからだよぅ・・・!私だってエースと別れたくなくてすんごい探したの!」
「・・・・早く言えよな、焦っちまった」
「うー・・・・ごめん・・・」
泣きだした私をなだめるようにエースが優しく抱きしめてくれた。
「・・・まぁ、俺も早く渡せば良かったな」
「・・・ずっと、怖かった」
「なくしたくらいで別れるなんて言う訳ねェだろ?」
「でも・・・っ傷つけちゃうかもって」
「1番傷ついてんのアコだろ?」
「・・・っだけど」
「俺が1番大事にしてェのはアコ。わかったか?」
「・・・・あい」
有難う、ごめんなさい。
大好きです。