短編②
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「シャンクス」
といまだに慣れない名を口にした。
「アコ」
何度も呼ばれてるはずの自分の名前が特別に聞こえる。
頭を優しく撫でてくれるこの手は、
私を守ってくれる手で。
私を愛してくれる手で。
・・・・私の大好きな、手で。
『お頭』
から、
『シャンクス』
と呼ぶようになって。
・・・・・恋人同士、という関係になった私たち。
ちゅ、という音と同時に軽く触れた唇。
「・・・・愛してる、アコ」
「くすぐったい・・・・」
シャンクスの髪が頬に触れてくすぐったくて身体を捩ったら、
なおのこと強く抱きしめられた。
「逃がさねェ」
「・・・・ん」
今度は深いキス。
何度も、何度も。
「・・・可愛いなあ、アコは」
「子ども扱いなら嬉しくない」
少しふて腐れてみせると、
シャンクスが目を細めて笑った。
「こんなキス、子供にするモンじゃねェだろう」
そしてまたキス。
今度は舌が入り込んできた。
「・・・・・・・ん、ふ・・・・・ぁ」
「・・・甘いな」
「シャンクス・・・甘いの、嫌いでしょう?」
「嫌いじゃないさ」
「でもお酒好きなのに」
「酒は好きだが甘いのも好きだ。俺は欲張りなんだ」
海賊だからな、と楽しそうに笑う。
そして私の首に唇を近づけた。
「や・・・・・です」
「・・・・嫌か?」
怪訝な顔でシャンクスが尋ねて来る。
・・・・私は、シャンクスの綺麗な赤い髪も。
優しい声も。
手も。
大好きだけど。
・・・・口だけは、好きじゃない。
愛してる、と言ったその口で翌日島に着けば女の人と話したりするし。
・・・浮気とかじゃないのはわかるけど。
苦手って言ってるのに私を食べるように噛みついて来る時もあるし。
・・・・何より嫌なのが。
「だってシャンクス・・・・この間も、したから」
まだ少し胸元に残ってる、赤い痕。
・・・・キスマーク。
「アコが可愛くて、ついな」
とシャンクスは悪びれもなく笑うけど。
皆に見られたら揶揄われるし恥ずかしいから、
私は必死に胸元を隠せる服を探す。
それがどんなに大変なことか。
それをどう伝えようかと迷っていると、
「ひあ・・・っ」
耳をぺろりと舐めあげられた。
「お前の全部が俺の物だと印をつけたいだけなんだ、アコ」
「でも、恥ずかしい・・・・」
「恥ずかしがるアコも可愛いから問題ない」
「シャンクス・・・・ぁ・・・・っ」
額、頬、首筋。
それから胸元。
徐々に降りて来た唇。
ちゅ、ちゅ、ちゅ、と。
軽い音だけが響く。
「ひゃ、あ・・・・ん・・・・・っ」
「その艶っぽい声も・・・この可愛い顔も、俺だけの物だ、そうだろう?」
「・・・・・・・・ん」
・・・・私は、シャンクスの口が嫌い。
こんな風に言われたらもう。
・・・・嫌、とも。
駄目、とも言えなくなるから。
「・・・・・あぁぁ・・・・・・・」
翌朝鏡を見てため息が出た。
胸元に複数の赤い痕。
・・・・増えてる。
服・・・・どうしよう。
今度島に着いたら胸元が開いてない服いっぱい買っておかないと。
「着替え、終わったか?」
「もう、シャンクスっ」
シャンクスがひょいと顔を覗かせたので、
ちょっと怒ってみた。
「服が決まらないなら俺が決めよう」
でも案の定シャンクスは全然反省の色を見せることはなく、
「これなんかどうだ?」
・・・・むしろ露出の多い服を薦めて来るあたり少し腹立たしい。
「こんなの恥ずかしくて着れないもん」
「恥ずかしがるアコは最高だなァ」
「最高じゃない・・・・・!!」
「よしよし」
宥めるように私の頭をぽんぽん。
・・・・嬉しくない訳じゃ、ない。
むしろシャンクスに頭を撫でてもらうのは好き。
でも今は何だかフクザツ。
そんな私を見てシャンクスは何を思ったのか、
「そんなに嫌か?」
苦笑を浮かべた。
「・・・・嫌」
「俺の物だって証が?」
「それは・・・嫌じゃない。でも見えるとこにつけられるのが・・・嫌なの」
「恥ずかしいか?」
「恥ずかしい」
「俺が恋人なのは恥ずかしいか」
「違う・・・・っ!!そうじゃ、なくて」
そうじゃなくて。
ああもう、何て言ったらいいんだろう。
何て言ったら伝わるの?
寂しそうな笑みに変わったシャンクスに、
何も言えなくなる。
「・・・・悪かった」
それだけ言って、シャンクスは出て行ってしまった。
・・・・・でもだって。
恥ずかしいよ。
「お、アコ。・・・・増えたなァ」
ヤソップさんが私の胸元を見て苦笑した。
「・・・・はい」
「ってことはまぁ、今日もお頭はご機嫌か」
「・・・・じゃない、です」
「・・・シたんだろ?昨日」
「・・・・シました」
「で、今朝喧嘩でもしたってことか」
「だってお頭・・・・シャンクス。見えるところにいっぱいつけるから・・・・っ」
「あーまあお前さんの気持ちもわかるが、お頭の気持ちも考えてやれ」
「・・・・わかんないです。シャンクスの気持ち」
嫌だって言ってるのにキスマークつけてくるシャンクスの気持ち。
「お頭からしたらこの船にゃライバルがいっぱいだ」
「そうですけど・・・!でも皆もう私たちのこと、知ってるし」
「それでも不安にはなるさ。あの人だって人間だ」
「それは・・・・・・」
「嬉しくてたまらないんだろうよ、お頭は」
男はいくつになってもガキなんだ、とヤソップさんは笑った。
・・・・・・・そう言えば私。
愛してるって言われっぱなしだったな。
シャンクス、って名前呼ぶので精一杯で。
自分は言わないで。
駄目、恥ずかしい、嫌。
それだけだった。
今日ちゃんと謝ろう。
そして、私も好きって言おう。
シャンクスを不安にさせないように。
夜。
「シャンクス」
名前を呼んで、自分からキスをした。
「・・・珍しいな」
「好き。・・・・好き、なの。シャンクス」
・・・・何か。
キスマークより恥ずかしいかも、しれない。
「はははっ、嬉しいな。欲しいものでもあるのか?」
「んー・・・・・ある、けど」
「何でも手に入れてやるさ。アコの為ならな」
「シャンクス」
「ん?」
「・・・シャンクスが欲しい」
シャンクスの喜ぶ顔が見たい。
「・・・ああ。俺のすべてをやろう」
ゆっくりとベッドに押し倒されて。
優しい口づけ。
「・・・しゃん、くす」
「アコの唇は愛おしいな」
「・・・・・ん・・・・・ふ・・・・」
やんわりと胸に触れて来る手も優しい。
「俺の名前を呼び・・・艶っぽい声を聞かせてくれる」
「あ・・・・ぁ・・・・っ」
「愛おしくてたまらねェ」
「ひぁ・・・・・んっ」
「私は・・・シャンクスのすべてが、すき」
まだ少し慣れないけれど。
シャンクスから紡がれる甘い言葉も。
優しい口づけも、強引な口づけも。
・・・・嫌だった、キスマークも。
全部愛の証。
今ならそう思える。
「・・・・俺の物と言う証を、つけたいんだが・・・怒るか?」
「・・・つけて」
心にも、刻み付けて。
あなたの愛を。
「・・・・・増えたなあ」
「愛が増えるのはいいことです!・・・・と思うことにします」
「前向きだな」
「でないとやってられません・・・・・」
私の唇も。
あなたの唇も。
紡ぐは愛ばかり。