短編②
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「なァアコ、いいだろ」
「駄目です」
「何で」
「何でも」
「・・・俺達新婚だろ」
「でもそんな義務はないでしょ」
「あのな・・・・」
呆れ顔でため息を吐くエースには申し訳ない気もするけど。
絶対に嫌なんだ私は。
例え私たちが新婚ほやほやの夫婦であろうと。
例え愛してやまない旦那様であるエースが熱烈に望んだとしても。
私は。
「一緒に風呂入るだけだろ!?」
・・・・一緒にお風呂、なんて。
無理。
「だけとか言わないで!深刻な問題なの!」
「もっとすげェことしてるだろ俺達」
エースの言いたいこともわかる。
でも、
「ソレはソレ。これはこれ」
「・・・俺のこと嫌いなのかよ」
ついにこんなことまで言い出した。
・・・言わせてしまったのは申し訳ないと思ってる。
本当に。
「嫌いなら結婚しないし一緒に住まないし・・・夜だって拒絶する」
「・・・そっか」
「エースのことは好きだし・・・愛してる、けど」
「風呂は駄目か」
「・・・・だって明るいし」
「電気消せばいいってことか?」
「・・・・・たぶん無理」
「恥ずかしいから嫌がってんじゃねェのか?」
「それもある」
「・・・・も?ってことはまだあんのかよ」
呆れたようなエースに、ますます理由は言えなくなる。
「そもそも何でエースはそんなに一緒にお風呂入りたいの!?」
恋人である頃から混浴のある温泉とかを見つけては一緒に行こうとか誘われてた。
・・・全部断ってたけど。
「・・・・そりゃお前」
「・・・・何」
エースのさっきの勢いがなくなった。
「別に・・・普通だろ。夫婦なんだからよ、一緒に風呂入るくらい」
「でも入らない夫婦だっていると思うけど」
「俺は一緒に入りたい」
「・・・その理由は?」
ちょっときつめに問いただせば、
「・・・・マルコが」
ぽつり、と話し出した。
「・・・マルコさんが、何?」
マルコさんは会社の先輩らしいけど変な人じゃないはずだ。
確か変な先輩はサッチさんとか言う人の筈。
・・・・そのマルコさんがエースに何を言ったのか。
「・・・マルコに自慢された」
「・・・・・何を?」
「恋人と一緒に風呂入ってるって」
「それで対抗してるの?」
「・・・っつーか・・・羨ましいと思ったんだよ」
・・・羨ましいの?
ふてくされたように話すエース可愛い。
・・・承諾はしないけど。
「お前いっつも俺の後に入るだろ?たまにはいいじゃねェか」
「・・・・でも」
「明るいのが気になんなら電気消すし、見られんのが嫌だってんなら入浴剤とか入れれば解決だろ?」
「・・・そうだけど」
「・・・じゃあ百歩譲って何もしねェ」
・・・これはエースにしてはものすごい譲歩だと思う。
「・・・なんにも?」
「・・・・抱きしめるくらいいいだろ」
「・・・後ろからなら」
「前からは?」
「お腹見られたくないから駄目」
「・・・もしかして理由ってそれか?」
「・・・違うけど」
埒が明かない話し合いにエースはイライラしてきたのか、
「アコ」
「ん、」
私を抱き寄せて、キス。
少し長くて、優しいキス。
「・・・怒ってないの?」
怒ってたらこんな優しいキスはしてこない。
そう思って聞いてみたら、
「・・・・怒ってはいるんだぜ?」
「・・・やっぱり?」
「でもそれは一緒に入るって言わねェことにじゃねェ」
「じゃあ何に?」
「何で一緒に入りたがらないのか理由を言わないことだよ」
「でも今・・・優しかった」
「・・・愛してるからな、俺だって」
でも無理強いはしたくねェんだよ、とエースが言う。
「・・・でも理由言ったら嫌われそうで」
「そんなに俺が信用出来ねェか?」
「そうじゃないけど・・・」
乙女心は複雑なんだよぅ。
「けど何だよ」
「・・・新婚ほやほやなのに細かいことで嫌われたり幻滅されたくないんだもん」
「しねェ。絶対。・・・だから言えよ」
強いエースの言葉に心が揺れた。
エースの絶対は、本当に絶対とわかってるから。
「じゃあ・・・今から言う私の条件呑んでくれたら一緒に・・・入る」
「おう、言ってくれ」
「・・・明るくない状態で、入浴剤入れて。何も、しなくて」
「・・・・で?」
「・・・・ぬるいお湯でなら、いいよ」
「ぬるい湯?」
拍子抜けしたのか、呆れたような表情を浮かべるエース。
でもこっちは必死だ。
「エース熱いお湯好きでしょ」
「ああ、好きだな」
「でも私はぬるいお湯が好きなの。しかも長いこと入っていられないし」
「・・・それで理由全部か?」
「だって・・・結構重要でしょ?だから私いっつも絶対エースの後に入って水入れてたんだもん」
そしてそれを内緒にしてた。
バレたくなかった。
「もっと早く言えよそういうことは!」
「ぬるいお湯が好きって言ったら情けないとか言われるかもって・・・・」
また呆れられるか、怒られるか。
そう思って俯いたら、
優しく抱きしめられた。
「・・・エース?」
「何回言ったらいい?」
「え?」
「好きだ。愛してる。アコしかいねェって、何回言ったら不安はなくなるんだろうな」
「・・・ごめん」
「怒ってねェって」
ふ、と優しい声に顔をあげたらやっぱり優しく微笑むエースがいて。
・・・泣きそうになった。
「そんなことで怒ったりしないし呆れたりもしないから、俺を信じろ」
「・・・・うん、ありがと」
ぎゅう、っと力が入る。
「・・・ほんとに怒ってない?」
「怒ってねェよ。むしろ可愛すぎてこのままベッド連れて行きたいくらい」
「じゃあお風呂入らないんだ?」
「・・・・・入るに決まってんだろ」
くす、と笑ったら頬に軽く唇がくっついた。
今日は、
一緒にお風呂記念日。
「入浴剤はこれとこれとこれね!お水もたーっぷり入れるからね!」
「・・・・そこまでしなくてもいいんじゃねェ?」