短編②
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夜24時。
私は食堂で今、
エースと2人きり。
「眠れなくなるぜ?」
「いいの」
エースがじっと私を見つめて来る。
「・・・いいのか?ほんとに」
「うん。・・・欲しいの」
「俺も止まらなくなるかもなァ」
「いいよ・・・止めなくて」
「いいんだな・・・?」
エースの問いにゆっくりと私は頷いた。
「美味ェ!!」
「やーほんと我ながら最高だわー」
「止まんねェなこの食感」
「やっぱポテチは厚切りだよね!」
ざくざくのポテトチップスと、
紅茶。
たまたま思いついて作ってみたら、思いのほか上手く出来たのでエースを呼んで夜のお茶会。
でもこの時間に紅茶なんて飲んだら眠れなくなること必死。
それでも飲みたかった。
エースもエースで、
ポテトチップスを食べる手が止まらない様子。
「全部食っちまうぜ?」
「いいよー食べて食べて」
「茶も美味いな」
「紅茶ね。絶品でしょ最高でしょー」
「でもマジでいいのかアコ」
「いいのいいの、後片付けすれば大丈夫」
サッチさんは口うるさいとこはあるけど、
ちゃんと片付けすれば何も言われない。
「いやそうじゃなくてよ。・・・・明日朝起きれんの?」
「・・・・さあね」
正直起きれる自信はない。
「サッチに怒られるぜー」
心配してくれてるんだかそうでないんだか、
エースは笑った。
「そういうエースだって」
「俺は朝起きれなくても怒られねェ」
「そうじゃなくて。こんな時間にこんな脂っぽいの食べたら太るよー」
「動きゃいいんだろ?」
「・・・・若さって」
若さが何よ。
「なァアコ、今度これと同じで別の味も食いたい」
「あ、いいね。こってり系とか」
「あーいいな。腹減って来た」
「今食べてるじゃん!」
「すげェ美味い」
「・・・ありがと」
満足そうなエースの笑顔に込み上げる嬉しさ。
「紅茶も美味いけど酒も飲みてーなー」
「お酒はまた今度ね。酒の肴に試してみたい新作レシピあるから」
「お、楽しみだな」
「しかもね、聞いて驚いて。私サッチさんから特別なお酒くすねてあるから」
「おお!すげェじゃねェかアコ!」
「ふふん、ちょろいもんよ」
と、威張った瞬間ごつん!と隣で音がした。
・・・・寝た。
いいなぁエースは寝れて。
・・・エースが寝た途端、急に静寂に包まれた。
紅茶も、ポテトチップスも。
何もかもそのままなのに。
エースが寝ただけで、こんなに静か。
・・・・こんなに、寂しい。
私も、とエースの真似して目を閉じて寝てみようとしてみた。
でもただ静かなだけで、やっぱり眠れそうにはない。
少し冷めてしまったポテトチップスを1枚口に入れた。
・・・・美味しくなくはないけど、やっぱり揚げたてが1番だな。
ごくり。
・・・うん、紅茶も。
淹れたてが1番。
でも1番足りないのは、
・・・・エース、なんだよね。
エースの笑顔と声。
早く起きないかなぁ。
「・・・おーいエースー」
控えめに声をかけてみる。
「冷めちゃうよー」
エースの頬をつんつん、と突いてみる。
反応はない。
「・・・・全部食べちゃうよー?」
つまんない。
・・・さすがにこのまんま起きなかったら大変だし、毛布でも持ってこようかと席を立った時、
ぐいっと服を引っ張られた。
「・・・・エース?」
「何処行くんだよアコ」
・・・エース、起きた。
「や、エース風邪ひいちゃうから」
ただでさえ上半身裸なのに。
「ひかねェよ、寒くねェ」
「・・・そう?あ、紅茶淹れなおしてこよっか」
「別に、このまんまでいい」
言いながらエースはごくごくと紅茶を飲んでいく。
・・・冷めた紅茶なんて美味しくないだろうに、と思いながら私も再び席に着き、
紅茶に口をつけた。
・・・・・あれ。
美味しい。
冷めてても。
さっきはあんまり美味しくなかったのに。
「あ、もう残り少ねェじゃん」
ポテトチップスの残りを見てエースが不満そうに呟いた。
「だってエース寝てるんだもん」
ちぇ、と舌打ちするエースが可愛い。
「眠くはねェんだけどな」
「でも寝れちゃうんだ?いいなぁ」
今の私に分けて欲しいその能力」
「そんないいもんでもないぜ?」
「そうなの?」
「大事な時にも寝ちまうからよ」
あーなるほど、と納得しかけたけど。
「・・・・大事な時ってある?」
「お前な。俺にも大事な時くれェある」
「それは失礼。でもエースってホント美味しそうに食べるよね」
「美味いからな」
「美味しそうに食べて気持ちよさそうに寝て。悪夢とか見ないの?」
「記憶にねェ」
・・・いいなぁ、本当に。
「じゃあご飯が美味しくない時とか」
「ねェな。アコが作るの何でも美味いし」
「・・・嬉しいこと言ってくれるじゃん」
「あとはアコが隣に居りゃたいていのモンは美味ェ」
言いながらエースが最後の1枚のポテトチップスに手を伸ばした。
「食っていい?」
「・・・・・・どうぞ」
・・・・そこまで言われたらもう何でもしてあげたい気さえしてくる。
でも、そっか。
私もきっと同じなんだ。
エースが居ればたいていのものは美味しいんだ。
「ごちそーさん!美味かった」
「さ、あとは片付けて寝る準備しないとね」
「待った」
「ん、何?」
エースからまさかの待ったの声。
まさかポテトチップスおかわりとかしないよね?
「もう少し・・・いいだろ?」
「え、でも」
「どうせ寝れねェだろアコ」
「うー・・・・ん、まあ確かに」
この状態で部屋戻ってもすぐには寝れないだろうけど。
でも何だかエースのこの様子は、
私に何か話したいことがあるように感じた。
「じゃあエース明日一緒にサッチさんに怒られてね」
なんて冗談交じりに言ったら、
「任せろよ、絶対守ってやる」
・・・・なんて真剣な顔で言うもんだから、
ドキドキしてきた。
「・・・マルコさんにも怒られるかもよ?」
「関係ねェよ、誰だって一緒だ。アコは俺が守るから心配すんな」
言いながらエースの手が、私の手に重なった。
「え・・・・エース?」
「アコ、俺」
近づいてくるエースの顔に、
真っ直ぐな視線に、
私はぴくりとも動けない。
「俺、アコのことが」
あとほんの少しで唇が重なりそうになって思わず目を閉じた時、
ごとん!と物凄い音がした。
恐る恐る目を開けたら、
「・・・・・・寝てるし」
食べ終わってるのに!
ホントは無理やり起こして続きを聞きたいとこだけど。
エースの寝顔があんまりにも気持ちよさそうで。
可愛いから。
ここで私ももう寝よう。
エースの隣なら、眠れなくても心地良いから。