短編②
夢小説設定
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「エースー入るよー」
ある日、エースに用事があってエースの部屋に入ったら。
「・・・・って居ないし」
鍵開けっ放しでエース不在。
仕方ないなぁ、と思いながらも急用じゃないしまた後で来よう。
歩いてたら何処かで会うかもしれないし。
・・・・と思い直して、
部屋を出ようとした。
・・・・・その時、ふと目に飛び込んできたのは帽子。
あ、これいつもエースがかぶってるテンガロンハット。
・・・・今かぶってないんだ。
吸い寄せられるように近づいていく。
そっと触ってみる。
ドキドキ。
・・・・大きいなぁ。
顔に近づけたら、ふんわりとエースの匂いがした。
頭に浮かんだエースの顔。
・・・・・もうずっと、大好きと言えないまま時間だけが過ぎているこの状況。
駄目だ、と思いながら。
私は・・・・手に持っていた帽子を、
自分の頭にかぶせてみた。
・・・・真っ暗だよ。
大きすぎるんだ。
少しがっかりしてはずしてはみたけど、
・・・・何だかどんどんこの帽子が愛おしくなった。
さっきよりどんどん大きくなる罪悪感。
駄目だ、駄目だ、ってわかってるのに。
私はその帽子を、
こっそり自分の部屋に持ち帰った。
「・・・・どうしよう」
持ってきちゃった。
いつもエースの頭にある、帽子。
「はあああああ!どうしよう!!」
いや心の中では返しに行けよってわかってるんだけど!
・・・・もし今部屋にエースが居たら!
何て言えばいい!?
何でそれ持ってるんだ?って言われたら!
エースのこと好きだから持ってきちゃったわうふふ。
・・・・・って気持ち悪がられたら私生きていけない。
・・・・でも、いつまでも私が持ってる訳にはいかない。
やっぱり返しにいかないと!
そうだ、その辺に落ちてたからー!とか言って返せばいいんだ!
よし!
気合を入れた瞬間、
「おーいアコ」
「はいぃぃ!?」
いきなり聞こえたエースの声に驚いて、
思わず帽子を足元に落とし、咄嗟に隠した。
「さっき俺探してたって言われて来たんだけどよ・・・・どうかしたか?」
「何のことかな!?」
「・・・何隠した?」
「なんっにも!?」
エースの疑わし気な視線に心臓は爆発寸前。
頭は真っ白、
目は涙が浮かんで視界が滲む。
「・・・・お前ほんと嘘下手だよな。ルフィみてェ」
「あ!それそれ!」
「あ?」
「弟君の新しい手配書があったから!教えてあげようと思って!」
これは嘘じゃない。
さっきの用事はそれだからね!
「お、マジか」
「食堂にあるよ!」
「サンキュ、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
笑顔で出て行くエースに私も笑顔で手を振って見送った。
・・・・ふふん、ちょろいもんね。
・・・・・・・・・・じゃないよ。
私最悪じゃん。
っていうか。
・・・・完全に返すタイミング失った。
さすがにどうしよう・・・・!
あ、待って。
今ならエースが居ないんだしこっそり部屋に返して来れる!
「エースの部屋・・・・っ」
早速行かねば!とドアを開けた途端、
「俺の部屋が何だって?」
「あ」
・・・・再びエース登場。
しかも私、肝心の帽子忘れてた。
「あ・・・・・いや・・・・」
「俺の部屋に用事か?俺じゃなくて」
にや、と怪しげに笑うエースに冷や汗がたらり。
「・・・・その、えーと。アレ」
「何だよアレって」
「・・・・だからほら、その。そ・・・・そろそろ弟君の手配書貼ったかなぁって」
思って。
「そんなに見てェか、手配書」
「見たい。すっごく見たい」
「嘘だろ」
「はい」
・・・・駄目だ、もう嘘つけない。
「椅子のあたりだったよな」
「・・・・・何、が?」
「さっきアコが足元に何か隠してたとこ」
ぎくり。
「き・・・・気のせいじゃない?」
「じゃあ中に入って見てもいい訳だよなァ?」
「よくありません!!」
見られた瞬間私の人生終わる!
「じゃあ言えよ、隠してること」
「無理!」
「なら見る」
そう言ってエースが部屋に入ろうとするから、
私は必死にエースの上半身にしがみついた。
「だ・・・・めっ!!」
すると、エースの動きがぴたりと止まった。
・・・・あれ、諦めてくれた?
意外にすんなりいった、と安心して離れようとしたら、
再びエースが動いたので私ももう1回しがみつく。
いや、わかってるんだけど!
こんなことしてたら一生帽子返せないっていうのはわかってるんだけど・・・!
せめてバレないように返したい!
私の抵抗なんて意味がないかも、と思ったりもしたけど。
・・・・・・・エースは力は入ってるけど、
でも私の力で止められるレベル。
ちら、とエースを見てみる。
何だか少し嬉しそう・・・?
「・・・エース?」
呼びかけたら、やっぱり嬉しそうな笑みを浮かべて。
「俺を止めたいんだろ?」
・・・挑発してきた。
「と・・・っ止める!」
私の精一杯の力で!
ぎゅううううっ・・・・・って。
・・・・・なんかさ。
これさ。
気づいちゃったんだけど。
・・・・・・・・ただ私がエースに抱き着いてるだけみたいじゃない?
え、でもこれ離れたらエースが中に入って来る訳でしょ?
・・・・・・・・・何これどうしたらいいの私。
戸惑いながらもエースは力を緩めることはないので私も抵抗を続けた。
そうして数分後。
「え」
私の背中に、エースの腕が回されたのがわかった。
え、何?
「わかった。こうすりゃいいんだ」
「・・・・・何が?」
「捕まえた」
「・・・・・・何で?」
「この状態で中入りゃいいんだ」
気付かなくて良かったのにそれ!
「卑怯だよそんなの!」
「あーそうだな卑怯でいいぜ」
私の罵倒なんか気にもとめない様子のエースは、ぐいぐいと中に入ろうとしてくる。
ちょっと待ってこれがエースの本気?
さっきと全然違う、止められる気がしない!!
と、エースの視線があるところで止まった。
・・・・・終わった。
「あれ・・・・俺の帽子、か?」
驚いたように呟くエース。
・・・違うよ、なんて口が裂けても言えない。
何処からどう見てもそうなんだから。
「・・・・・ごめ、」
もうここまで来たら仕方ない、謝ろうと離れようとしたけど。
・・・・エースの腕にがっちりガードされて離れられなかった。
「・・・エース、訳を言うから離して?」
「何でだよ。このままでも言えんだろ」
平然とそう言って、ますます強くなる腕の力。
だってこれ私たち抱きしめ合ってる状態。
・・・・これで話せって!?
「あ・・・・・・あの、さっき部屋に行った時見つけて・・・かぶってみたくなった」
「で、かぶってみたのか?」
「・・・・大きかったよ」
「ははっ、だろうな。俺にも見せろよ」
「嫌。・・・・っていうかそろそろ離して」
「却下。俺の帽子が欲しかったんなら俺に言えば良かっただろ?」
「無理」
・・・お互いに否定の言葉ばっかり口にしてるのに、不思議と心はあったかくて。
エースはただ笑ってるだけ。
「・・・エース怒ってる?」
「怒ってねェよ。怒る訳ねェだろ?・・・・惚れた女によ」
「良かった・・・・・・・・え?」
怒ってない、の言葉にほっとしたのも一瞬。
続いた言葉に耳を疑った。
「これ以上どう動くか考えてたとこだったからちょうど良かった」
「へ?」
身動きがとれない私の頬にエースが、
ちゅ、
とキスをした。
「今度の島に御揃いの帽子あるといいな」
「は?」
情けないことにさっきからこんな声しか出なかった。
「俺のこと、好きだろ?」
そしてやっぱりとっても嬉しそうなエースに、
「・・・・うん。好き」
ようやく好きと、言えました。