短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ほら、出来たぜアコ。どうだ」
そう言ってヤソップさんが私の部屋に持ってきてくれたもの。
それはマグカップ。
「わー可愛い!さすがヤソップさん!!」
「丈夫だからよ、ちょっとやそっとじゃ割れねェ。何なら喧嘩した時お頭殴ってやれ」
「あははっ、そうします。有難う御座いますヤソップさん」
前に私がお願いして作ってもらった、マグカップ。
頑丈で壊れにくくて、可愛い私だけのカップが欲しいと。
その注文通りに作ってくれた。
私だけの大事なもの。
大切にしよう。
「何だそれ」
「ヤソップさんが作ってくれたんですよーすっごく可愛くないですか?」
「ほーヤソップがねェ・・・」
食事の時に使っているのを見てお頭が興味を持った。
「すっごい丈夫なんですよこれ!」
「どれ、貸してみろ」
「・・・・変なことしません?」
「丈夫なんだろう?」
にまにましたお頭が片手を出してくるから何か不安。
・・・・でもまあ、いっか。
「・・・・どうぞ」
頑丈なのは確かだし。
そっと渡すと、お頭はカップをしげしげと眺め、
思いっきり掴んだ後。
ガン!
「ちょっ・・・・!!」
思い切りテーブルに叩きつけやがってくれました。
「なるほど確かに頑丈だなこりゃ」
「何してんですか!もう!」
慌てて取り返せば、
「俺も作ってもらうか」
なんて言い出す始末。
「お頭が持ったらすぐ壊れそうです・・・」
「失礼だな。ベッドの上での俺は優しいだろ?」
お頭の言葉に思わず顔が一気にかっと熱くなった。
「聞かなかったことにします」
「おいおい、そりゃないだろう」
「部屋に戻ります・・・!」
「あァ、そういやさっき怪しげな船を見かけたらしい」
食堂に置いておいたらいくら頑丈でもヒビの1つでも入れられてしまいそうで、
カップを持って立ち上がったらお頭が真面目な顔。
「怪しげな船?・・・・敵船ですか?」
「ま、そんなとこだろうな」
「・・・戦闘になります?」
「可能性はある。俺の側に居た方が安全だと思うが」
・・・・確かに、そうなんだけど。
「とりあえず一旦これ置いてきます」
それだけ言って、急いで部屋に向かった。
戦闘になるならなおのこと、安全な場所に置いておきたい。
クッションに包んでおくとかしないと不安。
そう思って部屋に戻って、
どこに隠そうかとうろうろしていると、
どん、と大きく船が揺れた。
それから続々と聞こえて来た発砲音。
・・・・始まっちゃったんだ。
でもここに居れば大丈夫。
そう、思ってたのに。
鍵をかけていたはずのドアが、
いきなり物凄い音を立てて動いた。
・・・・というか、破壊された。
え、何。
そう声にする暇もなかった。
一気に目の前に現れたそれは、
「へぇ、いい女」
「げ」
「さすが赤髪の女・・・俺はラッキーだ」
・・・・敵船の人間に見つかってしまった私はアンラッキーだ。
・・・・どうしようお頭。
「えーと、無駄な抵抗はしない方が御身の為と思いますが」
どうせうちが圧勝するに決まってるんだし。
・・・・ほら、もう船の揺れが収まった。
「・・・・それはこっちの台詞だって身体に教えてやんなきゃわかんねえか?」
ぐっと腕を掴まれて、背中がぞくりと粟立った。
そして思わず私は、
手を振り上げた。
「無事かアコ!?」
お頭がそう叫んで部屋に入って来てくれたのはすぐだった。
・・・・・でも、もう遅い。
「おかっ・・・・おかしらぁ・・・・!」
もう手遅れなんだ。
自然と涙がぼろぼろこぼれてきて、
お頭はそんな私を片腕で優しく抱きしめてくれた。
「怖かっただろう?もう大丈夫だ」
「わた、わたしっ・・・う・・・うぁぁ」
「だから俺の側に居ろって言っただろう・・・もう離さねェ」
「・・・もう、駄目になっちゃいました」
「・・・・・駄目?」
「・・・・・ぅー」
もう、私はきっと立ち直れない。
「おがしら来るの遅いですぅ・・・!」
「・・・悪かった」
お頭を責めるのはお門違いだってわかってるのに、思わず口から出てしまった。
「・・・で、何されたんだ?」
「わたし・・・・わたしの、大事なっ」
「大事な?」
泣きながらそこまで伝えた時、
「おーい大丈夫か」
ヤソップさんが入って来た。
「ヤソップさぁぁぁん!!!!」
ヤソップさんの姿を確認して、私はお頭から離れた。
そして勢い良くヤソップさんに抱き着いた。
「おおお!?どうした!?さすがの姫さんも怖かったか!?」
「・・・・後で覚えてろよヤソップ」
「俺悪くないよ!?」
ヤソップさんに抱き着いてたのに、
お頭に片腕で引っぺがされた。
そして再びお頭の片腕の中へ。
それでも涙は止まりそうにない。
「・・・そんで、大事な、の続きは何だ?」
心配そうなお頭の声が耳に入って来て。
思い出したらまた涙が溢れた。
「まぐ・・・かっぷが」
「カップ?・・・・・ああ、なるほどな」
お頭が納得いったように呟いて、
ヤソップさんは苦笑して、
「あいつに壊されたのか。まー馬鹿力で叩きつけりゃ壊れるだろうけどな」
「ちがいます・・・!」
「・・・・あん?」
「壊したの私なんですぅぅ!!ごめんなさいヤソップさん・・・!」
「・・・・は?」
私の、大事な大事なマグカップ。
まだ1回しか使ってなかったのに!!
敵の頭の上で、粉々。
「思わずあれで殴っちゃって・・・そしたらあの人石頭で・・・割れちゃっ」
がっしゃん、という派手な音。
粉々に砕けて行く姿。
見た瞬間頭が真っ白になって倒れるかと思った。
でも倒れたのは相手の方で。
「なぁんだ、それで泣いてたのかよ・・・ったくこの姫さんは」
「そうかそうか、泣かせた原因はヤソップだな」
「・・・いや敵だろ」
「すぐにもっと丈夫なカップ作ってくれるな、ヤソップ?」
「今から!?」
「船長命令」
「・・・マジかよ」
「それと俺のも頼む、アコのと御揃いでな」
「・・・・げぇ」
・・・お頭とヤソップさんの会話を聞きながら、
「・・・私お頭のデザイン嫌ですからね」
一応言っておく。
「・・・・何でだ」
「だってセンスださいんですもん」
私の言葉に大爆笑するヤソップさんの目の前で、
「ん、っ」
突然の深い口づけ。
「・・・うるせェ口は塞ぐに限る」
ふん、と勝ち誇ったような顔のお頭。
・・・・ヤソップさんは深い深いため息を吐いた後部屋を出て行きました。
「・・・可愛いのならお頭と御揃いは、嬉しいです」
ぽつりと呟いたら、
「可愛い口も塞ぐに限るな」
とか言って、
また唇が重なった。
数週間後出来上がったのは、
それはそれは可愛いの私マグカップと。
同じように可愛いお頭のマグカップ。
ヤソップさん大爆笑。
・・・・・・・私は満足です。
今度こそ大事にしよう!