短編②
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「私だって嫌だけど・・・仕方ないんだよエース」
「・・・何でだよ」
「正直に言っちゃえばエースが悪いんだよ」
「俺?」
今私たちは別れ話をしている訳ではない。
「・・・エースの食費が大変なの」
「・・・・マジか」
「マジだよ」
「ってもなァ・・・・腹減るのは我慢出来ねェ」
「わかるけど・・・家計はすでに火の車だよ」
「カッコいいじゃねェか火の車」
「カッコいいとか言ってる場合じゃないからホントにヤバいんだから」
「でも駄目だ。絶対許さねェ」
「・・・・短時間でも?」
「駄目」
「でも今のままじゃ・・・・」
「絶対ェ何とかするからアコは働くな!」
・・・・断固として反対のエースに私は小さくため息吐いた。
パートでいいから働きたい、って相談なんだけど。
「何でそんなに反対なの?」
「当たり前だろ?・・・嫌なんだよ」
「何がそんなに嫌なの?」
男のプライドとか?
「働くっつーことはアコが他の男と一緒に居る時間が増えるってことだろ」
「・・・・じゃあ男の人がいない職場ならいい?」
「・・・・通勤が心配だから駄目だ」
「近いとこにする!家事もちゃんとやるから!」
「駄目だって言ってンだろ?」
「でも・・・・」
食い下がる私にエースはなだめるように私の頭を2回撫でた。
「欲しいモンがあるなら買ってやるし、家計も守る。だからアコは働くな」
・・・何があっても私が働くのは駄目らしい。
「別に欲しい物がある訳じゃないけど・・・」
「もっと働くから心配すんなって」
な?と言ってエースは優しく笑うけど。
「・・・それじゃエースが心配」
「大丈夫だって、身体は頑丈だし」
「・・・でもやだ」
「俺が信用出来ねェか?」
「長く働いたらその分一緒に居る時間もなくなっちゃうじゃん・・・」
そんなの寂しいに決まってる。
だから駄目、と言ったら。
ぎゅうっと強く抱きしめられた。
「・・・エース苦しい」
「アコ可愛い」
エースの愛の言葉は嬉しいけど。
「でもね・・・愛だけじゃ生活出来ないからね?」
「でも愛も必要だろ?」
「・・・そうだけど」
ちゅ、と頬にキスが落とされる。
のんきなエースに苦笑するしかないけど、
でもそんなエースが愛おしいのもまた事実。
・・・エースはちゃんと働いてくれてる。
なのにエースがものすっごい食べる為に生活費がギリギリ。
・・・・・でも。
そうだよね、エースはしっかりやってくれてるんだもん。
あとは私の器量にかかってる!
「ちゃんと守るから、心配すんなよ」
「・・・・うん」
節約しよう!!
まず電気は昼間は使わないようにしよう。
太陽の明かりで十分。
テレビとかも使わない時はコードを切っておいて。
冷蔵庫の開け閉めは必要最低限に。
買い物はポイント倍になる時にして。
洗い物もなるべくまとめて素早くやるようにしよう。
出来れば野菜の皮とか今まで捨ててたのも活用したい。
それにはサッチさんやサンジ君の協力を得たいとこだけど、
・・・・そんなことしたらエースが怒りそうだからやめておこう。
・・・・頑張ろう。
エースにも協力してもらいながら、
そんな風に節約を始めて1か月が過ぎた。
チラシを必死に見比べて、
夕飯の買い物は何処に行こう・・・と悩んでいた時だった。
メールの着信似気付いて携帯を見たら。
『残業で遅くなる。飯先食ってて』
・・・エースから。
先に食べてて・・・って言うけど。
・・・ガス代節約の為にもしたくはないんだけど。
でもそうも言ってられない、私もお腹すいちゃうし。
今日1日くらいならいいよね。
・・・・と思ったのが間違い。
この日エースは私が寝た後夜遅くに帰って来て。
・・・・次の日も同じメールが来て、
やっぱり同じように夜遅くに帰って来た。
仏の顔も3度まで。
3日目は普通に帰って来たけど、
疲れた顔。
「・・・大丈夫?エース」
「あァ、問題ねェ」
「無理してない?」
「今ちょっと忙しいんだ、でも終わったら・・・」
「・・・終わったら?」
終わったら、と言葉を切ったエースに続きを促すけど、
「・・・いいことが待ってるかもな?」
・・・・明確な答えはくれなかった。
「何?いいことって」
「乗り越えたらのお楽しみってことにしとこうぜ」
「えええ・・・!?」
そりゃあ残業代出るだろうから、
いいかもしれないけど。
・・・それ以外のいいことってこと?
何だろう。
「とにかくもうすぐ全部終わるから、それまでは寂しい思いさせちまうかもしれねェけど、ごめんな」
「私は平気だけど・・・終わったら側に居てくれるんでしょ?」
「おう」
「説明もちゃんとしてね?」
「わかってるって。そんなことより、今のお楽しみ」
「え」
「な?」
唇が深く重なって、
そのまま押し倒された。
「・・・・電気は消してね」
「お、可愛いこと言うじゃん」
「節電だから」
「・・・これからもっと可愛くさせてやるよ」
「・・・馬鹿」
それから一週間後のことだった。
エースが嬉しそうに帰って来たのは。
「アコ!プレゼントだ!」
しかも私にプレゼントを買ってきてくれた。
「え、プレゼント?」
「開けてみろよ」
「有難う・・・開けてみるね?」
綺麗にラッピングされた箱を開けてみれば、
そこに輝くダイヤのネックレスがあった。
「・・・・綺麗・・・・じゃなくて!何これ!」
「ネックレス」
「見ればわかる!・・・嬉しいけど、こんなお金・・・」
焦る私と反対にエースはずっと嬉しそうにニコニコ。
「・・・エース?」
「終わったんだ、全部」
「終わった・・・・の?それで、これ?」
よくわからない。
「もう大丈夫だ。火の車脱出だぜ?」
「・・・・どういうこと?」
「昇進したんだ、俺」
「・・・・昇進!?」
「この間までの残業は試験受けてたからで、無事合格。給料も上がるからな!」
「ほ・・・ほんとに?」
「仕事内容はちっと難しくなるかもしれねェけど時間は変わんねェから一緒に居られる」
「・・・っおめでとうエース!有難う!」
嬉しさのあまりエースに抱き着いた。
エースは余裕で私を受け止めてくれた。
・・・何より、
エースが食べ物じゃなくて私だけの為にプレゼントを買って来てくれたのが嬉しい。
「明日はステーキにしよっか!お祝い!」
「アコの手作りなら何でも食う!」
「ホントは内職でもしよっかなって思ってたんだけどね」
「内職も駄目だ」
「・・・内職も駄目なの?」
厳しいなぁ、もう解決はしたけど。
苦笑した私にエースが放った、
「アコの仕事はずっと俺の嫁だけで十分だろ?」
・・・・この言葉に、
私は永久就職の意味を今更に実感した。