短編②
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例えば子犬を見て、
「きゃー可愛い!」
とか言わない。
動物好きじゃないし。
例えばスイーツを見て、
「やーん美味しそう!」
・・・・とか言わない。
スイーツ好んで食べる程好きじゃないし。
サラダもそんなに好きじゃないし、
フルーツは嫌い。
・・・・男の子が思っていそうな、
『女の子が好きな物』
のほとんどが、私は嫌いだ。
・・・・それでも私は、女なんだけど。
でもこんな私だから、好きな人にも好きと言えないでいる。
・・・好きな人に、好きと言われたのにも関わらず。
「もーらい」
「あ」
目の前にあったポテトが3本程一気に消えた。
「ぼーっとしてる方が悪い」
「う・・・」
私から奪ったポテト3本を一気に口に頬張ったエースは不満げに私を見る。
「・・・・つまんねェかよ」
「そんなこと、ないけど」
「それともこの間のこと気にしてんのか?」
「・・・・・そりゃあ、まあ」
幼馴染の、ポートガスDエース。
私の好きな人で、
・・・私のことを『好きだ』と言ってくれた人。
ただいまお返事保留中。
「あー・・・・あんま気にされっとなァ。気にされねェのも困るけど」
今日はエースと2人でお出かけだけど、
別にデートとかじゃない。
前からよく2人で遊びに行ってたから。
今日はエースが友達への誕生日プレゼント買うっていうからその付き合い。
でもやっぱり告白された後だから、ぎこちない。
・・・エースは普通にしてくれてるけど。
何だかもやもやして、スカッとしたくなった。
「・・・エースの炭酸だっけ」
「俺の?コーラだな」
「少し飲みたい」
「ほら」
言ったらエースはすぐにコーラを私の方に出してくれた。
私は喜んで、
「いただきます」
ごくごく。
炭酸が喉を通る感覚がたまらない。
「ぷはー美味し!」
うん、スッキリしたかも。
・・・・でも巷では炭酸大好きなのは女子力が低いんだよね。
・・・・あぁ、何かまた落ち込んできた。
軽くため息を吐こうとしたら、
不意にエースが、
「間接キス」
「ぶはっ」
・・・変な事言うから噴出した。
顔が一気に熱くなる。
「俺は嘘は言ってねェぜ?」
頬杖ついたエースがニヤニヤ。
「・・・・今更」
「あ?」
「・・・今までだってしてたじゃん」
飲みかけのペットボトルのお茶もらったり、あげたり。
・・・・ドキドキしながら、今までずっとしてた。
「・・・そーだな。今まで気にしてたのは俺だけだったな」
素っ気なくエースが言って、
ぷい、と横を向いてしまった。
・・・・怒らせちゃったかな。
私・・・可愛くないよねホント。
素直に恥ずかしい、とか言えば良かった。
やっぱり駄目だ、こんな私。
それでも何かフォローしなきゃと口を開いたけど、
「ち・・・小さい頃から一緒にお風呂、とか入ってたし」
「・・・長いこと一緒に居すぎて友達以上に見れねェってことか?」
やっぱり、エースは勘違いした。
こんな時普通の女の子だったら何て言うんだろう。
ごめんね、本当は恥ずかしかっただけなの。
とか、
私もドキドキしてたのよ、とか。
・・・・そんなことが言えない私は、
「・・・・友達以上恋人未満」
小さくぽつりとそう呟くので精一杯。
「単刀直入に聞かせてもらうけどよ、俺は少しは脈あんのか?」
「・・・・・・・・・・・うん」
だって私も、好きだから。
・・・言えないけど。
もう少し女の子らしくなれたら。
私も好き、って言いたいなあ。
「・・・・そろそろ出るか」
「あ、うん」
・・・・ごめんねエース。
お店を出て歩いていたら、
隣を歩くエースが落ち込んでいるように見えた。
そんなエースを見るのが辛くて、
目を逸らした。
逸らした先にあった、ショーウィンドウ。
飾ってあるのは可愛い服ばかり。
私はいつも、パンツスタイル。
だって動きやすいし。
・・・化粧もしてない。
すればいいのに、とよく言われるけど面倒な気持ちにいつも負ける。
・・・・でも、
こんな私でも。
もしあの服を着て、エースが可愛いって言ってくれたら。
私も好き、って言える勇気が出る気がする。
「エース」
「ん?」
「あの店、寄っていい?」
「ああ、珍しいな。服買うのか?」
「・・・・着るだけ着てみようと思って」
どれを、とは言わない。
だからエースは私がいつものような服を選ぶんだと思ってる。
「いいんじゃねェか、付き合うぜ」
「・・・・ありがと」
店内に入って、
私は1着のワンピースを手に取った。
・・・・・よし。
「・・・・着て来るね」
「おー」
エースは私の選んだ服を良く見ていなかったようで、生返事。
試着室に入って、深く深呼吸。
どきどきどきどき。
あ、これって何か女の子っぽい?
・・・・・や、試着するだけで普通の女の子はこんなドキドキしないか。
・・・・えっと、何これどうやって着るの袖は何処。
えーと、ここを・・・こうして・・・こう?
あ、こんな感じね。
うわぁ下すーすーする!
・・・・だっ大丈夫かなコレ。
「・・・エース居る?」
私が試着する時いつも前に居て見張っててくれるエースに声をかける。
「着たんなら早く見せろよ」
覚悟を決めて、カーテンを開けた。
「・・・・・・・・・こんな感じ」
私を見たエースの反応は、
「・・・・・・・おお」
目を丸くして口開けてぽかーん状態。
・・・・・可愛い、って言われるとは期待してなかったけど。
反対に似合わないとか言われるような気もしてた。
・・・・でもこの反応が予想外で。
どうしよう。
「に・・・似合わないよね、すぐ脱ぐ」
慌ててカーテンを閉めた。
少しの間エースの言葉を待ったけど、カーテン越しのエースは何も言ってくれず、
本気で諦めて服を脱いだ。
「・・・・・お待たせ」
「・・・買わねェの?それ」
「だって似合わないし」
着替え終わって服を戻すと、エースが聞いて来た。
「似合わなくはねェだろ・・・」
「・・・いいよ、無理して言わなくても」
「無理なんてしてねェ」
でも可愛いとは言ってくれなかった。
だからもうきっと、私はしばらくエースに好きとは言えない。
「・・・行こ?」
「気に入ったんなら買えばいいじゃねェか、何なら俺が買ってやるよ。・・・給料日前だけど」
「別に気に入った訳じゃないけど・・・気まぐれで着ただけ、だし」
「珍しいよな、アコがそういうの選ぶの」
「・・・・気まぐれだって」
「どういう心境の変化だ?」
「だから気まぐれ」
「何年一緒に居ると思ってんだよ、誤魔化すな」
服を戻した私を見てエースが怒ったように言った。
そして何て答えていいかわからない私の手を、ぐっと掴む。
「えーす、」
それから引っ張られるままお店の外に出た。
「・・・好きな奴が居るんならさっさと言えよ」
「え?」
「そいつの為に変わろうと思ったんだろ」
「・・・・思った。でも駄目だった」
「駄目だった?」
わかってるよ、私が勝手に決めたことだって。
それでも、勇気。・・・出ないんだもん。
「・・・可愛いって言ってくれたら、好きだって言おうと・・・思ってたのに」
あまりの悔しさについ、口から出た本音。
「・・・そいつに見せてねェんだから何も言えねえだろ」
エースは複雑な顔で首を傾げる。
「・・・見せたもん。すんごい微妙な顔してたし似合わなくはないとか言ってた」
「・・・・あ?」
ああああもう私何言ってんだろ、
こんなのエースが好きって言ったのと同じじゃん。
「・・・・・だから!返事は保留なの!」
「・・・いや、保留ってお前」
「わかった!?」
「わかんねェよ、アコが俺のこと好きだってことだろ?」
「好きだけど保留なんだって」
「それが意味わかんねェ」
「ああいう服着てエースに可愛いって言われるくらいになったらちゃんと返事するから」
「はぁ?」
エースがすごく馬鹿にしたようにはぁ?と言う。
むかむかむか。
「はぁ?って何」
「今言えよ。別にあんな服似合わなくてもいいだろ!?」
「でも私動物嫌いなんだよ!」
「知ってる」
「猫カフェとか行けないんだから」
「別に行かなくてもいいだろ」
「ケーキだって好きじゃないし!」
「何か問題あるか?」
「フルーツも苦手だし・・・!」
「あー俺が食ってやるよ」
「サラダも・・・嫌い、だし」
「だから俺が食うって」
「・・・・いやそうじゃなくてさ」
「じゃあ何なんだよ」
・・・・・あれ、何かおかしいぞ。
「・・・炭酸好きで、女子力・・・低いし」
「・・・・・もしかして返事が保留の理由ってそれか?」
「・・・・・そうだよ」
頷いた瞬間、
「馬鹿か」
罵られたうえに頭をこつんと小突かれた。
「女子力がどうとか知るかよ、俺は今のアコを好きだって言ったんだぜ」
「・・・・・今の私?」
だって女子力低いのに?
「だから今のお前の気持ちを答えろよ。・・・・俺のこと好きなんだろ?」
じ、っと見つめて来るエースの瞳に心の中を見透かされたようだ。
「・・・・好き」
何かに操られたようにそう呟いたら、
今度は優しく頭を撫でられた。
「俺は女らしいとかよりお前らしいのが1番だから、忘れんな」
「・・・私で、いいの?」
「・・・聞いてたか俺の話し」
それから私の額にちゅ、とエースが口づけて。
それがまるで魔法のように、
私は自信を持って
『エースが好き』
と言えるようになりましたとさ