短編②
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「どうせ私は肉くれる人なんです」
「それはさすがにないっしょ」
「百歩譲って美味い飯作ってくれる仲間」
そこに大切、が加わっていればいい方だと思う。
・・・エースにとっての、私。
でもそれだってサッチさんと同じ立ち位置だ。
「そんなネガティブに考えなくてもいいと思うけどなー俺は」
私の後ろ向きっぷりに苦笑するサッチさん。
私のエースへの気持ちを知っているサッチさんは、たまにこうして相談に乗ってくれる。
「慰めなんていりません・・・・どうせエースの恋人はお肉ですから!」
「いや肉じゃあんなこともこんなことも出来ないじゃん」
「肉はエースを幸せに出来ますもん・・・・私には出来ないですから・・・・」
「いやいや、エースだって男だぜ?んな食欲の塊みたいなやつだと思われちゃ可哀想だろ」
「いっそお肉になりたいぃぃ!!!」
「・・・・アコちゃん相当追い詰められてんのな」
だってお肉になればきっとエースに愛してもらえるし、
エースを幸せに出来る。
エースの口の中に入って、
エースと1つになれる。
・・・・それくらい、好きなんだ。
エースのことが。
「じゃあ告白だな」
「は!?」
「告白して付き合っちまえばいいんじゃね?」
「・・・・それが出来たらサッチさんに相談してないってわかりませんかね」
「無理?」
「無理です」
「そっかー・・・じゃあ襲っちまえ」
「・・・・愛する人と一緒に死ねってことですか。じゃあその前にサッチさん殺しますね」
「ちょっと待ってアコちゃん怖い。じゃなくて俺そんなこと言ってないから」
ああ、もう駄目。
悲し過ぎて頭くらくらする。
「じゃなくてさ、色仕掛けで反応試してみ?」
「色仕掛けぇ?エース相手にですか」
「少しでも顔赤くなりゃこっちのもんだって」
「・・・・自信ないです」
物凄く悪いっていう訳じゃないけど、
ナースさんたちのスタイルに比べたら自信なんかない。
「まず胸元開けて」
「そうですかサッチさんは私に死ねとおっしゃるんですね?」
「・・・・アコちゃん?」
「胸ないのに胸元なんて・・・・っ!」
「いいからいいから、そんで近づいて上目遣いで抱き着く!」
「無理ですぅぅぅ!!!」
「そんで寒いから抱きしめて?とか言って」
「ぎゃああああ!!!そんな恥ずかしいこと出来ないぃぃぃ!!!」
恐怖に怯える私なんか知らん顔でサッチさんは続ける。
「ものは試し、俺をエースだと思ってやってみ?」
「無理です!だってサッチさんエースじゃないし気持ち悪い!」
「酷い・・・・いやでもエースだと思うんだよ、何事も想像力は大事だからな?」
・・・・とサッチさんは言うけど。
「・・・・・・・・・・・じゃあ、いきます」
「来い!」
せっかくサッチさんが付き合ってくれてるんだ、私も頑張らないと・・・!
「・・・・・だっ」
そっと近寄って、サッチさんの身体に腕を回した。
あああああ!緊張で吐きそう!
「はい、そこで抱きしめてってセリフ。可愛くな?」
この状況で可愛くとか無理!
「だっ・・・・・だだだだ!だき・・・・妥協・・・しま・・・す」
「・・・・・ごめんね俺で」
駄目、もう無理。
がっくりと肩を落としたら慰めるようにサッチさんが抱きしめ返してくれて。
ああ泣きそう、って思った瞬間。
「アコーオヤジが呼んで・・・・・・・・・・・悪ィ」
ドアが開いて、
・・・・入ってきたエースが私とサッチさんを見て、
すぐにドアが閉まった。
バタン、という音が悲しく響く。
「・・・・・・・・・・・・・・サッチさん今の」
「・・・・・・あらら」
「・・・・誤解、されましたよね絶対」
「いやいやいや、肉食怪獣エース君のことだ、半々だろ」
「サッチさんさっきと言ってること違う」
終わった、私の恋。
「と・・・とにかくほら、オヤジが呼んでるみたいだし?行きがてらエースに誤解だって言って来な」
「・・・・でも」
「上手くいけば妬いてくれてるかもしれねェし、な?」
「・・・・・はい」
力なく歩いて行って、
父さんの話しはたいしたことじゃなかったことにほっとした。
・・・だから、何の話しかは数秒で忘れた(父さんゴメン)。
はあああ、と深い深いため息を吐きながら歩いていたら、
甲板で海を見つめるエースを見つけた。
・・・・・・よし、勇気を出して話しかけてみよう。
「・・・・・え・・・エース」
「・・・・おう」
「今、父さんとこ行ってきた。ありがとね」
エースは振り返って、普通の顔。
「ああ、何の話しだったんだ?」
「や、たいしたことじゃなかった」
「そっか」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あ、駄目だ。
気まずい。
「・・・さっき、悪かったな」
先に沈黙を破ったのはエース。
困ったように笑いながら、話しかけて来る。
「さっき・・・・って」
「サッチとアコがそういう関係だとは思わなかったけど・・・仲良かったもんなお前ら」
・・・・・・・はい、もう完全誤解してます。
「そういう関係って、」
そんなんじゃないよ、って言おうとしたら、
「付き合ってんだろ?水臭ェじゃねえか俺にくらい言えよな」
・・・・エースの言葉に遮られた。
せめて・・・せめてサッチさんとそういう関係じゃないってことくらいは言わないと!
「付き合ってないよ・・・私」
思い切って言ってみたらエースは目を丸くした。
「・・・・付き合ってねェのにあんなことしてたのかよ」
「そっ・・・・それには理由が・・・・あって!」
「理由?・・・ってまさか」
エースが突然真剣な顔になったのでドキッとした。
カッコいい・・・エースの真剣な顔!
と思ってたら、
「二股か?」
・・・エースがとんでもないこと言い出した。
「はい?」
「実はサッチには本命が居て、だから隠れて付き合ってんだろ?」
「ええええ!?」
「やっぱそうなのか!?・・・・サッチの奴」
「え、ちょっ、エース?」
「心配すんなアコ、俺が言って来てやる」
「え、や、あの・・・」
「そもそもアコもアコだ、何で知ってて付き合ってんだよ」
「いや違くて」
「そんなに好きなのか?サッチのこと」
「いや私別にサッチさんのこと好きでは」
「じゃあまさか脅されてんのか!?」
・・・・・何か、
どんどんすごいことになってるんですけど。
「サッチさんそんな人じゃないから!むしろ脅されても脅し返すから大丈夫!」
「・・・じゃあ無理やりされたのか?」
「そういう訳でも・・・・ない」
私の言葉にエースはひたすら首を捻る。
こ・・・・ここまで来たら全部言うべきなの?
「俺は何もしなくていいんだな?」
「・・・・・・う」
「アコが大丈夫だって言うなら俺も何も出来ねェ」
でも、とエースは言った。
「でもアコが助けを求めんならどんな手使っても助けてやる。だから困ったことがあったら俺に言えよ」
そして、髪を優しく2回撫でてくれた。
「・・・・・うん、有難う」
・・・妹扱いなんだとしても、嬉しい。
「で・・・理由は俺には言えねェんだな」
「あ・・・・」
話し戻っちゃった。
「いや・・・別に言いたくなきゃいい」
「す・・・・・・好き・・・な人、が」
好き。エースが好き、と言おうとしたけど。
やっぱり言えなかった。
「好きな奴?・・・・が居るのか?サッチじゃなくて」
「サッチさんじゃない、好きな人。・・・・その、相談して。それで、あの時は」
練習、って言うか。
そこまで言って何て続けたらいいかわからなくなって口ごもったら、
「練習?・・・・で抱き合ってたのか」
「・・・・まあ、そういうこと・・・です」
恥ずかしながらも頷いたら、
「じゃあ俺が代わる」
「・・・・・・・は、い?」
え、今のエースの言葉の意味わかんなかった。
「俺が練習相手になる」
にィ、と唇を引き上げてエースが笑う。
そして、
「あ、」
エースの手が腰に回されて、
ぐ、っと引き寄せられた。
エースの鍛えられた筋肉が目の前に来たと思ったら、
あっという間に密着した、身体と、身体。
「こんな感じか?」
エースのぬくもりが、匂いが、
頭に心に充満する。
「ええええエースっ!!」
「・・・・やっぱ、俺じゃ嫌か」
「いいい嫌っていうかこれ練習じゃない!!」
「練習じゃない?」
「本番じゃん・・・!!」
「サッチは練習で俺は本番?」
突然のことに身体が、顔が熱くなってパニックになって、
私はとんでもないことを口走った。
「だっだって、サッチさんはエースの代わりで、だからエースはエースの代わりにはなれないよ!」
「・・・・・・俺?」
「サッチさんが俺をエースだと想像してみろって言うから・・・っ!」
「じゃあアコの好きな奴ってのは俺なんだな?」
がばっと身体が離されて、驚いてエースの顔を見れば目を輝かせている。
な・・・何!?
「な、アコ」
「う・・・うん」
「じゃあもうサッチと練習する必要ねェな」
「え、何で!?」
「俺もアコのこと好きだから、これからはずっと俺が相手してやるよずっと」
「・・・・・・っ、うそ」
「嘘じゃねェよ。何なら次はキスの練習付き合うぜ?」
「・・・・・それ練習じゃないってば」
「じゃあ本番」
それからゆっくりと、唇が重なった。
これからは、練習も本番もエースが相手。