短編②
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幸せになりたい。
そう思うのは普通のことで。
・・・・これと言って不幸だった訳じゃなかったけど、
私は昔からそう思っていた。
だからよく、四葉のクローバーを探した。
「で、今は幸せだーって気付いたの?」
「そう言う訳じゃないけど・・・中学生の時にすっごい見つかりそうな予感がして1日中探してて」
そんな私も20歳。
「飽きたのね」
「違う違う、雨降って来ても夢中で探してたから」
「・・・・風邪ひいたのね」
「そうそう」
呆れ顔のナミに苦笑して頷いたら、
「馬鹿ね、四葉なんか見つけるよりお金見つけた方が幸せになれるでしょうに」
「・・・お金だけが幸せじゃないわよナミちゃん」
「私はお金があるだけで幸せ」
・・・ま、人それぞれだけどね幸せは。
そんなことを話していた、
次の日のことだった。
大学のOBである、という自称超エリート会社勤めの男性から声をかけられた私は、
こともあろうに、
「愛してる。君を幸せにしたい」
・・・・・とまで言われてしまった。
返事は1週間後に、良い返事を期待してるよ、と。
・・・・幸せ、かあ。
「顔も悪くないし未来も給料も安泰のエリートよ!ここで断ったら次はないんだからね!・・・だって」
「・・・・あ、そ」
つまらなさそうにエースがご飯を頬張った。
「・・・美味しそうだねカツ丼」
「やらねェ」
「・・・・いらないけど」
や、本当はちょっと欲しいけど。
学食で幼馴染のエースとお昼ご飯を食べるのは恒例のこと。
私はオムライスをとっくに食べ終わってるけど、
食べてる途中で寝るエースが食べ終わるまで待つのもいつものこと。
「そんでさ、ナミが調べた結果その人有能で次期社長、とまで言われてるんだって」
「つまりお前は何が言いてェんだよ」
「・・・・どうしよう、って」
「何が」
「だからその人への返事」
エースは私の心中など知るか、と言わんばかりに即答で、
「断れ」
短く答える。
「ちなみに理由は?」
「受ける理由がねェだろ」
「・・・・そう?」
「よく知りもしない奴と一緒に居て幸せになれると思ってんのか?」
・・・確かにエースの言うことは正論だ。
「でも付き合ってみないとわかんなくない?」
でもだからと言ってすぐに断るのも。
良く知らないからこそ、
知れば好きになる可能性とかあるかなあ、とか。
「・・・付き合う気かよアコ」
「付き合う気はないけど」
「じゃあいいだろ」
「・・・愛されることに女の価値があるのよ、ってナミが」
「あ?」
「叶わない恋を嘆いてるより、愛されて女を磨きなさい!それが幸せになる秘訣よーって」
・・・・言われたから迷ってるんだ。
私の片思いの相手は脈なしっぽいし。
「・・・らしくねェこと言ってんじゃねェよ」
「え?」
「ほら」
エースが差し出した、カツ。
うわ、美味しそう!
「いいの?」
「食えよ」
「いただきますっ」
口に入れたカツはサクサクで、
たれの甘みがふんわりと口に広がって。
「美味しい・・・っ幸せー」
はああ、ホントこの学食のメニューにはハズレがないよねえ。
「ほらみろ」
「・・・・え、何が」
エースのドヤ顔に首を捻る私。
「愛云々じゃなくてもカツ丼1口で幸せだろ?」
「う・・・!」
「ならそんな男と付き合う必要ねェな」
「・・・・だね」
「つーか・・・・聞き捨てならねェ」
「何が?」
エースは少し怒ったような顔で、
残りのカツ丼をかきこんだ後、
「何だよ敵わない恋って」
「・・・・まんまだけど」
「どんな奴だ」
むすっとした顔で話し続ける。
「・・・・私に幸せをくれる人」
「誰だよ。・・・どんなこと、されたんだ」
言える訳ない。
例えば今カツ丼を1口くれたんだ、とか。
この間車に轢かれそうになったところを助けてくれたんだとか、
・・・・昔、
私にアレをくれたこととか。
「・・・内緒」
「・・・・・じゃあそいつに告白すりゃいいんじゃねェの」
「・・・・でも」
「上手くいきゃ幸せになれんだろ」
「そんな投げやりな言い方しなくても」
「・・・さっさと行けばいいだろ」
・・・エースが怖い。
怒ってる。
「今は・・・・・行けない。お守り、ないし」
「お守り?」
「・・・その人が、くれたの。四葉の・・・ペンダント」
ああ、もう駄目。
空気に流されて言っちゃった。
案の定エースは目を丸くして、
数回瞬きをした後、
「四葉の・・・ペンダント?」
驚いた様子を見せた。
・・・・中学生の時、
幸せになりたいとひたすら毎日野原に繰り出しては四葉のクローバーを探していた私。
幼馴染のエースは、
『まだ探してンの?馬鹿みてェ』
そんな言葉ばかりで、
弟のルフィは一緒に探してくれたりもしたけど、
簡単に見つかるものではなかったので、
すぐに飽きた。
ある時何故か、
ものすごく四葉を見つけられそうな予感がしてた日があった。
今日は絶対見つかる。
根拠もない自信を持って探していた時、
雨が降って来た。
ざーざー降りで、普通なら諦めて帰るのに。
私は帰らなかった。
翌日、私は熱を出した。
・・・四葉は、結局見つからなかった。
親に怒られたし、
身体はだるいし最悪で。
これもきっと四葉が見つからなかったせいだ、と思った。
でもその日、エースがお見舞いに来てくれた。
エースは、
『だから言っただろ馬鹿』
とやっぱり馬鹿にしながら、
『俺は見つけたぜ、四葉』
エースは私にそう言ったのだ。
ひどい。ひどいよ神様、私あんなに頑張ったのに。
そう思ったら悔しくて泣きそうになった。
そしたらエースは、
『やるよコレ』
そう言ってそれを置いて行った。
偽物のダイヤが詰められた、
四葉のペンダント。
キラキラしてて、すごく綺麗で。
・・・・その日の夕方から親は何故か優しくなって、
お粥も美味しくて、幸せだなあと思った。
・・・・エースがくれた、幸せ。
それから私は、四葉のクローバー探しをやめた。
エースが居てくれる幸せに、気づいたから。
・・・それからエースが好きだと、気づいたから。
でもエースは色恋には興味ないみたいだし(それはそれで安心なんだけど)、
脈はないみたいだし。
側に居られるだけで幸せだと思ってたから、
・・・言わなかったのに。
「・・・・言いたくなかったのに」
落ち込む私と真逆に、
「早く言えよ・・・!」
エースは興奮気味。
え、何で?
かと思えば、
「いや待て。言わなくていい」
とか言い出して。
「ど・・・どしたのエース」
「俺は・・・ずっとアコのことが好きだったんだぜ」
そしてエースの口から語られる衝撃の事実。
「・・・・・嘘ぉ」
「嘘じゃねェよ!」
「だってエース私のこと馬鹿にして、」
「そりゃ俺が居るのにアコが幸せになりたいとか言ってっからムカついてたんだよ」
「・・・・じゃあずっと」
私たち、両想いだったの?
「好きな奴とか初耳だし、すげー焦った」
「なんだあ・・・・そっか」
「俺がずっと幸せにするから・・・俺と付き合えよアコ」
エースは今までずっと私を幸せにしてくれた。
だから信じられる。
「うん、私も好き。私も・・・四葉エースにあげたい」
「・・・また探すとか言うなよ?」
「この間シルバーのネックレス見つけたの。御揃いで・・・嫌?」
「高いんだろ」
「・・・・バイト頑張るから」
「・・・俺はお前が居るだけでいいんだよ」
そしてやっぱりエースは馬鹿、と言って。
私の頬に口づけた。
幸せはいつも君がくれる。