短編①
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目を覚ますと、頭が痛んだ。
ぼーっとする。
船医さんに風邪だと診断されたのは数時間前。
掃除しなきゃ、なのに。
今日は寝てろ、とお頭に言われてベッドに入ったらすぐに眠りについた。
寝るまではお頭が側に居てくれたような気もする。
頭痛いし動きたくないなー。
あ、でもお腹はすいたかも。
そんなことを思ってると、ガチャ、とドアが開いた。
「目が覚めたかアコ。気分はどうだ?」
お頭が様子を見に来てくれたらしい。
「あたま、痛いです」
お頭は寝たままの私の額に手を当てて、
「まだ熱はあるな。食欲はあるか?」
「お腹すきました!」
出来るだけ元気に答えるとお頭は笑った。
「はは、そうか。なら良かった。粥を作ってきたんだ」
そう言って差し出したお粥はいい匂いがした。
「・・・・・・コックさんに作ってもらったんですか?」
「いや、厨房を使わせてもらってな、作ってきた」
「お頭が!?」
驚いた。
お頭が自ら作ったなんて。
「ほら、熱いうちに食え。起きれるか?」
「あ、はい」
ベッドから起き上がって、座る。
「・・・・残念だ」
「え、何がですか」
「両手があればアコにあーんして食べさせてやれたのに」
「そんなベタな展開いりません。有難う御座います、頂きます」
お頭からお粥を受け取って、スプーンで掬う。
2回程息を吹きかけて冷ましてから口に運んだ。
「・・・・・ん、おいし、です」
「そうか!良かった。全部食えそうか?」
「これなら、たぶん」
「なら食ったら薬飲んでまた寝とけ」
「・・・・はい、すみません」
お頭の作ってくれたお粥はほんとに美味しくて。
自分が情けなくなった。
「謝るたぁねえよ。お前は働きすぎなんだ、たまにゃ休んどけ」
「・・・・働きたいです。私」
「ん?」
「皆の為に出来ることがあるならしたい。助けて、もらったのに」
本当はあそこで終わっていたかもしれない私の命。
人生。
なくしたはずの笑顔。
「・・・・もう十分もらってるさ」
「でも、」
「俺の作った飯を美味いって言ってくれるのもアコくらいのもんだ。よし、全部食ったな?」
「あ、はい。ご馳走様でした」
「薬飲ませてやろうか?口移しで」
「ですからベタな展開いりませんて」
言いたいことを言わせてくれず、お頭はただ優しく笑う。
私は薬を受け取って水で飲み干す。
「その元気がありゃ心配ねえな。そしたらちょいと失礼」
お頭はそのまま私をベッドに寝かしつけて。
失礼、と言いながら自分も隣に入ってきた。
「おおおおおおお頭!?」
「おが多い。俺も具合い悪ィから寝ることにした。あ、これ船長命令な」
「うつっちゃいますよ!」
「・・・・俺が風邪をひくと思うか?」
「・・・・・・思いません」
ってそういう問題でもないんですけど!
「おやすみ」
そう言ってそのまま目を閉じたお頭に。
私はドキドキして。
でもその存在にすごく安心したことは内緒にしておこうと思った。
暗い部屋で1人で寝るのは、風邪っぴきには寂しかったから。
・・・・なんて、結局ベタな展開になった訳ですが。