短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「馬鹿みたいに黙って俺に従えばいいんだよ」
「・・・・・うっわぁ、そんな馬鹿みたいなこと言う人初めて」
「・・・・お前明日から来なくていい」
「・・・・・はーい」
「という訳です」
「期待を裏切らない報告だな」
「恐れ入ります」
「褒めてねェってわかってるか?」
とか言いながら大爆笑するシャンクス。
もう何度目だろう、馴染みのカフェで、幼馴染のシャンクスにするこの報告は。
『仕事先決まったー!』
と言っては数日で、
『首になった・・・・』
の繰り返し。
「不器用だよなァアコ、勿体ねェ」
・・・・思ったことがすぐに口をついで出てしまう私は、
今までそのせいで何度も仕事を辞めさせられてきた。
それっておかしくないですか?
何で駄目なんですか?
・・・・と、突っ込みまくる新人。
・・・・考えてみれば確かにうざいよね。
「でもシャンクスが続くのは予想外だった。だってシャンクスなのに」
「失礼だな、仕事出来ない人間に見えるか?」
「・・・っていうか合ってないよね、仕事とシャンクスって」
「どの辺が、だ?」
「シャンクスに似合うのは・・・旅人とか、海賊とか」
自由が好きだから、シャンクスは。
仕事をこんなに上手くやれる人だとは思わなかった。
「それも悪くねェけどな。金は大事だろう」
「奪い取る」
「犯罪だな」
・・・・当たり前の正論にぐぅの音も出ない。
「・・・わかってるよ、ちゃんと真面目に働くのが1番」
ちょっと反省したのに、
「それも駄目だな」
まさかの駄目だしされた。
「何が駄目なの?」
「適当にそこそこ真面目に働くのが1番だ」
「・・・それが出来れば苦労はしないよ」
シャンクスは器用だから、それが出来るんだ。
「そこそこ良好な人間関係作って時間かけりゃ何とかなるさ」
「・・・・だからそのそこそこ良好な人間関係が作れないんだって」
「まあ今回は運が悪かったな、ブラック企業だろう。辞めて正解だ」
「でも次のとこ探さないと・・・」
生活出来ないよこのままじゃ。
「不思議なもんだなァ、働く気もあって採用もされんのに数日で解雇ってのも」
「・・・私人見知りだし」
「どっちかっつーとツンデレタイプだな」
「・・・・ツン?」
「ツンだろ?慣れるまでは近づくなオーラ出してた」
「出してないよぅ・・・顔は強張ってるかもしれないけど」
自分から声かけるのが苦手だから。
決してツンではない。
「その方が俺は安心だがな」
「安心?」
「いや、こっちの話しだ」
確かに仲良くなったらデレるかもしれないけど。
「短時間でもいいから働かねばー・・・」
うなだれる私にシャンクスは笑う。
「次はよく下調べして、会社の雰囲気も見ておくんだな」
「シャンクスどっか紹介してよう・・・」
「任せろ、と言いたいとこだが・・・難しいな」
「だよねー。こんな人間じゃ紹介したら信頼に関わるもんね」
ああ、もうネガティブな発想しか出来ない。
案の定、
「・・・ずいぶん後ろ向きだなァ」
シャンクスが苦笑する。
「そりゃ自信も無くすよ・・・」
自分が嫌になる。
「働かないって選択肢はないのか?」
「ないね。働いていたい。お金も欲しいってのもあるけど」
「紹介してやりてェがうちは頭も使うし力仕事もある、加えて男ばっかだし・・・他も似たようなモンだ」
「そっかぁ・・・」
それじゃ紹介してもらえない訳だ。
私は頭も悪いし力仕事も男性には負ける。
男ばっかりじゃやりにくいし。
「まあそうがっかりするな」
優しいシャンクスはいつもこうして落ち込む私を慰めてくれる。
泣きついて電話したら来てくれる。
わかってたはずなのに。
どうせまた解雇されたんだろ、ってわかっていながらも来てくれて。
怒りもせずに話しを聞いてくれる(たまに奢ってもくれる)。
「・・・・シャンクスが上司だったらいいのに」
シャンクスなら私のことを理解してくれて、
きっと上手くつかってくれる。
「だっはっは、アコの上司にゃなりたくねェなァ」
「・・・わかってるけど」
「いいや、お前はわかってない」
「わかってるよ。私のフォロー大変だもんね」
「もう慣れたから問題ない」
・・・・・複雑。
「フォローも愚痴聞くのもこれから何年だってやってやるさ」
「・・・・シャンクス優しすぎだよ」
「アコだけだけどな」
「私シャンクスの疫病神にはなりたくない」
「何なら一生憑りついてくれ」
「・・・シャンクス可哀想」
こんな私が幼馴染で。
泣きそうになってうつむいた私は、
「いい加減前を向け」
力強い声音に引き上げられた。
「・・・・うん」
「今の言葉の意味、わからねェだろうそんなんじゃ」
「・・・・意味?」
前を向けってこと?
「俺が、お前の上司にはなりたくねェのに厄病神として一生憑りついてくれって言った意味だ」
「・・・・シャンクスが優しいからでしょ?」
「それはお前だけ、とも言ったはずだな?」
「幼馴染だからでしょ?」
「・・・・本気でそう思って・・・・る、みたいだな」
・・・・思ってるけど。
「違うの?」
「違う」
「じゃあ何?」
「何だと思う?」
「わかんないから聞いてるんだけど」
言ってから、こういうとこが駄目なんだよなあと再び落ち込む。
でも落ち込んだのは一瞬だった。
何故なら、
「旦那として俺が支えたいって言えばわかるか?」
このセリフで私の頭は思考停止したからだ。
「・・・・・・・え、っと?」
旦那として?
「アコが働きたいってんなら止めねェ。家事も協力するしな」
「・・・・・うん?」
「だから俺は上司にはなりたくない」
わかったか?
とシャンクスが優しく笑って聞いてくる。
・・・・・わかってる?私。
「・・・・や、たぶんわかってない、私」
「はははっ、正直だなホントに。じゃあわかるように言おうか」
「お願いします」
ぺこりと頭を下げたら、
「結婚して俺に一生支えさせてくれ、お前を」
「・・・・・・けっこん?」
「さすがに結婚はわかるだろう?」
「・・・だって私、思ったことすぐ言っちゃうよ」
「知ってる」
「・・・馬鹿だし」
「それも知ってる」
「・・・・面倒くさいよ?」
「任せとけ、全部ひっくるめて愛してやる」
「・・・ほんとに?」
「ああ、約束する」
昔から、シャンクスの『約束』は絶対で。
破られたことは1度たりともなかった。
「・・・・結婚、してくれるの?私と」
「してくれるか?」
「・・・・うん、する」
次は永久就職が決まりそうです。