短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドキドキドキドキ。
・・・・・・・このドキドキは、恐怖だ。
私は何故か、マルコさんの部屋に呼ばれたから。
でも何故呼ばれたのかが、わかってない。
私何かした!?
怒られる!?
怖い・・・・ああ、怖い。
でも呼ばれたからには行かなくちゃ。
コンコン、と軽くノックして。
「マルコさん、失礼します」
覚悟を決めてドアを開けた。
「ああ、呼び出しちまって悪かったよい」
「・・・・・・私は一体何故呼ばれたのでしょうか」
素直に疑問を口にしてみる。
怒られるなら早い方がいいし、理由も知りたい。
マルコさんは不安な私に軽く笑って、
「アコ、酒は好きかい?」
「・・・・・お酒ですか?普通に好きですけど」
「この酒、わかるかい?」
この酒、とマルコさんが手にしていたのは和の国の有名なお酒。
「わ、それ」
「たまたま手に入れたんだがよい、味のわかる奴にしか飲ませたくねェ」
「わ、私に・・・!?」
「ついでにこれに合うツマミなんかも作ってもらえるとありがてェ」
「喜んで!!」
サッチさんにバレないように、と。
こっそりキッチンを借りて簡単なツマミを作って、
再びマルコさんの部屋へ。
「美味そうだよい、アコに頼んで正解だったみたいだねい」
「和の国のお酒ですよね、なので和の国の料理を作ってみました」
天ぷらと、海鮮てまり寿司。
マルコさんがグラスのお酒を注いでくれて。
「乾杯」
「あ、有難う御座います・・・・乾杯」
2人だけの宴、開始。
良かった、こんな素敵なことで。
ほっと安心しながらお酒を口に含む。
「・・・・これ結構強いですね」
「そうかい?・・・口に合わねェかい」
「いえ、美味しいです。香りもいいし味も強くなくて、和食に合いますね」
度は強いけど美味しいことに変わりはない。
「そりゃ良かった。・・・・もっと飲めよい」
「あ、どうも」
美味しいお酒を勧めてくれるのは嬉しいんだけど、
こんなにペースが速いと酔っちゃう。
「まだ飲めるだろい?」
「・・・・いやいや、酔っちゃいますって」
「問題あるかい?」
マルコさんはしれっとそんなことを言う。
大アリだよ!!
酔っぱらって潰れてマルコさんに迷惑かけて明日怒られるなんて絶対嫌!
「ご迷惑をおかけする訳にはいきませんので・・・!」
「酒に誘って素面で帰す訳ねェだろい?」
えええええ・・・・・・・!?
「飲んでばっかだから酒が回るんだろい?ほら、食えよい」
マルコさんが天ぷらを私の前に突き出した。
「じじじじ自分で!」
「いいから口開けろよい」
仕方なく口を開けたら、そこに放り込まれた熱々の天ぷら。
「あ、ふっ・・・っ!!」
熱ぃ!!!!
「熱かったかい?」
「はひ・・・!!」
し、舌が!!
「見せてみろよい」
「へ!?」
「舌、出せ」
はははは恥ずかし過ぎて無理です!!
と言っても無駄だと思われる程マルコさんの目が真剣、で。
「・・・・・・あい」
恐る恐る火傷したかもしれない舌を出す。
「いい眺めだねい」
「・・・・え?」
「こっちの話しだよい。少しばかり赤いがこれくらいなら大丈夫だろい」
「・・・は、はひ・・・・!?」
舌を引っ込めようとした瞬間の、一瞬の出来事だった。
ぺろり。
マルコさんの舌が、私の舌をなめ、た。
「い・・・・・っ!?」
今何が!?
「・・・ああ、俺も酔っちまったみたいだよい」
そして自身の舌を見せつけるように唇を舐める。
・・・妖艶ともいえるマルコさんにくらりと目眩がした。
「アコも酔ったみたいだねい」
「・・・・や、あの」
酔ったっていうか。
酔わされたっていうか。
「何だい?」
ずい、とマルコさんの顔が迫って来た。
これはヤバい、と直感的に悟った。
「ご馳走様でした、私はそろそろ・・・・っ」
逃げないと。
立ち上がった私の肩はマルコさんの力強い腕に押さえつけられ、
「まだいいだろい?酒も肴もこんなに残ってんだい」
もう何度目かのお酒が注がれた。
に・・・・逃げられない。
大人しく座らされて、仕方なく目の前のお酒に口をつける。
もうこんな状況、飲まなきゃやってられない!
「いい飲みっぷりだねい」
「有難う御座いますっ」
ドキドキドキ。
この鼓動は、何だろう。
落ち着かない自分を無理やり落ち着かせながら、
今度はちゃんと冷まして天ぷらを口に入れた。
うん、さくさくで美味しい。
・・・・ふと、
「・・・・・マルコさん?」
マルコさんの視線に気づいた。
じぃ、っと私を見てる。
まるで観察するような目で見て、
でもそれはすぐに、ふ、と柔らかい笑みに変わって。
・・・・・ドキッとした。
「気づかないもんかねェ」
「え!?まっまさか何か料理に不備が!?」
食べても気づかないのかって言いたいの!?
「んな訳ねェだろい?」
「でっでは何か・・・!?」
「わからねェかい」
「わかりません!!」
はっきりと答えたらくつくつと笑い声。
「素直だねい。可愛いよい、アコ」
「かっ・・・・・きょ、恐縮です!」
「まだ飲み足りないみたいだねい」
「や、そんなことは!」
もう結構飲みましたが!?
おののく私にマルコさんは一向に気にした様子もなくようやく飲み切ったグラスにまたお酒を注ぐ。
うう・・・・。
「何なら口移しで飲ませてやろうかい?」
駄目だこの人完全に酔ってる!!
「ま・・・マルコさんはもうお止めになった方が」
「止める気はねェよい」
「で、ですが・・・・」
「力ずくで止めるかい?」
「無理です!!」
私の即答にやっぱりマルコさんは楽しそうに笑って、自分のお酒を口に含んだ。
そしてそのまま、
「え、ん・・・」
マルコさんの唇が私の唇と重なり、
自然と開いていた唇に流れ込んできたお酒。
私は静かにそれをごくりと飲み込んだ。
「え・・・・えええええ・・・・・・・!?」
「止められなきゃこうなるよい」
「どういうことですか!?」
「こういうことだい。もう1回やるかい?」
「結構です!!っていうか・・・・」
「・・・っていうか?」
「・・・・私も結構ヤバいです」
まじで酔って来た。
「やっとかよい」
「・・・・はい?」
「なかなか手強いねい」
ドキドキ、くらくら。
「てごわ・・・・?」
「辛そうだねい、横になるかい?」
「あー・・・・はい」
返事した瞬間身体が宙に浮いた。
「のおおおおお!?」
マルコさんの両腕が私の身体を支えてる。
お、お姫様抱っこ!?
優しくベッドに降ろされた。
「甘いねい、アコ」
「・・・・・へ?」
何が?
目の前にマルコさん、その奥に天井が見える。
「男と2人で酒飲んで酔わされて、何もない訳ねェだろい?」
「・・・・・意味が、よく」
「こっちゃ下心しかねェってんだよい」
ちゅ、と厚ぼったい唇が額にくっついて離れた。
ドキドキドキドキ。
この鼓動は。
恋心故か、
はたまた恐怖か。
・・・・・それとも、
この後起こるであろうことへの期待、か。
どきどきどき。