短編②
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「これ、着てくれるか?」
「・・・・・・これって」
お頭に渡されたものを広げてみると、
何とも可愛らしいドレスだった。
「んで、準備が出来たら呼んでくれ」
「え、と・・・・あの」
「今日は出かけるって言ってあっただろう?」
「そう・・・・ですけど」
今日船が島に着いた。
そして、着く何日も前からお頭に、
『島に着いたら出かけるからな』
と言われており。
でもそんなのいつものことだと、適当にはいはいと流してた。
・・・・・でも、あれ?
何かちょっといつもと違う。
よくよく考えてみればお頭の気合の入れ方もなんか違う。
それに出かけるのもいつもは着いた瞬間からなのに、
今日は夕方まで待てって言われてたし。
「俺が選んだんだぞ、その服」
「・・・・はあ」
「楽しみにしてるからなアコ」
そう笑って、お頭は一旦退出。
・・・・綺麗なドレス。
戸惑いながらもちゃんと着て、
「おかしらー・・・・」
ドアを出て呼んだら、すぐそこにお頭は居た。
「お・・・・・こりゃいい」
「ちょっと・・・派手じゃないですか?」
裾にたっぷりのレース、
ウエストに大きなリボンのついたピンクのドレス。
そしてとどめに、
「よく似合ってる。最後はこれな」
「あ、」
胸元に大粒の真珠のネックレス。
「じゃあ次、こっちの部屋だ」
「えええ?」
あれよあれよと言う間に連れてこられた部屋には、
何故か女の人が1人居た。
え、なんでうちに女の人?
「俺が呼んだんだ。よろしく頼む」
「はい、お任せ下さい」
お頭が頼む、と言って。
女の人がお任せ下さいと笑顔で頷いて。
「こちらにお座り下さい」
「え、はい」
よくわかんないけど言う通りにしたら、
目の前に女の人。
「失礼します」
どん、と置かれた箱から女の人が取り出したのは。
・・・・化粧道具。
それから、
あっという間だった。
「はい、完成」
どうでしょう?と鏡を見せられた。
「・・・・別人、みたい」
「ふふ、素敵よ。楽しんで来てね」
「・・・・へ?」
楽しんできて?何を?
「では私はこれで」
粛々とお辞儀をして、女の人は出て行った。
ぽかん、としてる私にお頭が近寄ってきて。
「・・・今までも可愛かったが、綺麗になったな」
私の顔を見て満足そうに微笑む。
・・・嬉しい気持ちと、
これから何が起こるのかわからない不安が同時にこみあげる。
「・・・・私、どうすれば良いんでしょうか」
正直な気持ちをお頭に問いただしたら、
「何もしなくていいさ。そのまんまで」
・・・・よくわからない答え。
まあでもお頭ってこういう人だし、
お頭のことは信じられるから。
・・・・あれ、よく見ればお頭も。
「・・・お頭、スーツ」
黒のスーツを、着てる。
ボタン最後までしてないとこがお頭らしいけど。
「カッコいいだろ?」
「・・・・っはい」
滅多に見れないお頭の姿を目に焼き付けて、
「よし。じゃあ行くぞ」
「あ、はい・・・」
何処へ、とは聞かず(聞いても答えてくれないだろうし)船を降りた。
「わ、すごい・・・・」
何も言わないお頭に連れていかれた場所は、
何処かの国のお城のような、レストラン。
飾りつけから料理まで、すべてが凝っていて、
確かにお洒落してきて良かったと思わせる。
「美味いかアコ?」
「・・・美味しい、です」
料理も本当に美味しい。
お酒も上等のお酒を飲んでご機嫌。
「でも、何で」
こんなとこに連れてきてくれたんですか?と聞こうとしたところで、
急に音楽が鳴りだした。
「お、始まったな」
お頭が楽しそうに言って、
出てきた男女のカップル。
ぞろぞろとさっきまでお客さんだった人たちも立ち上がって、
・・・音楽に合わせて踊りだした。
「俺達も行くぞアコ」
「本気ですかお頭!?」
「適当に踊っときゃ大丈夫だ。俺に任せろ」
「え、ちょ、ほんとに!?」
お頭片腕なのに!
ぐ、っと引っ張られて皆が踊ってる中に混ざって、
・・・・片腕なのに本当に上手に、
私をリードしてくれた。
「な?楽しいだろ?」
無邪気に笑うお頭に、
心から湧き上がる『楽しい』
「はい!とっても!」
それからしっかりデザートまで食べて、
夜景も鑑賞して店を後にした。
「はあ・・・楽しかった。ご飯も美味しかったし・・・ご馳走様でした」
「楽しめたんなら何よりだ」
「でも食べ過ぎて・・・ドレスちょっと窮屈かもです。帰ったら脱いでもいいですか?」
「ああ、俺が脱がしてやろう」
「・・・自分で脱ぎます」
「だっはっは、そりゃ残念だ」
「でも・・・何だか今日はシンデレラになった気分でした」
「シンデレラ?」
「お頭知りません?」
「知らねェな」
小さい頃聞かされた物語。
思い出しながら、話す。
「継母にいじめられてきた襤褸を着たシンデレラが、魔法で綺麗になってお城に行くんです。そこで王子様と出会って」
「アコはもともと俺と一緒だっただろう?」
「最後まで話聞いてくださいね?シンデレラは王子から逃げるんです」
「・・・・ほォ」
「何故なら魔法が切れる時間になってしまうから。魔法が切れたら、元の襤褸を着た自分になってしまうから」
そう言った瞬間、ぐっと腰を掴まれた。
「・・・私は逃げませんよ?」
「当たり前だ。誰が逃がすか」
「まあ、それでシンデレラみたいだなって」
夜になったら服も脱ぐし、
化粧も落とさないといけないから。
「気に入ったんならまた着りゃいい。化粧はさすがにしてやれねェが・・・」
「・・・聞いてもいいですか?」
「ん?」
「何で今日こんなことしてくれたんですか?」
ずっと聞きたかったこと。
お頭はそのまま私を引き寄せて、
「前に雑誌見てただろ?」
「え・・・」
「それにドレスアップした姿が見たかったんだ」
もう、何か月前か忘れたけど。
確かに私はあんな雰囲気のレストランの載ってる雑誌を見てた。
・・・そんなこと、忘れてたのに。
「有難う御座います、お頭」
「だがシンデレラとかいうのにゃ、させねェ」
「あはは、なりませんよ私も。だってお頭は襤褸の私も愛してくれるでしょ?」
「勿論だ」
船に帰って、
部屋でお頭にキスをされた瞬間。
私の魔法は解けましたとさ。