短編②
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「マルコさん、珈琲入れたんですけど飲みませんかー?」
夕飯も早々に終えて部屋に閉じこもってしまったマルコさんに、珈琲を持って行った。
「ああ、有難うよい。そこに置いてくれるかい」
・・・・・・・・・受け答えはいつも通りのはずなんだけど、
私はその答えに違和感を覚えた。
何だろう。
何か、違う。
「マルコさん、お仕事頑張り過ぎじゃないですか?疲れてません?」
最初は仕事のし過ぎで疲れが溜まってるんじゃないだろうかと思ったんだけど。
「いや、最近はそうでもねえよい」
「そう、ですか?」
あれ、じゃあ何だろ。
ふ、と伏せられた瞳が。
きゅ、っと結ばれた唇が。
・・・・・・・・・何か寂しそうで。
「珈琲、頂くよい」
「あ、はいどうぞ」
・・・・・・・もしかして、
マルコさん落ち込んでる?
「いい気分転換になった。アコ、有難うよい」
「マルコさん?」
「ん?」
もし本当に落ち込んでるのなら、これを聞くのは失礼なんだと思うけど。
「父さんに叱られました?」
「・・・・いや?」
「じゃあエースに悪戯されたとか」
「されてねえよい」
これにはほぼ即答で。
「・・・・・・・でも、マルコさん」
「何だい」
やっぱり聞かずにはおれない。
「落ち込んでますよね?」
「・・・・・・・・・・・単刀直入だねい」
「こんなことで変に誤魔化しても仕方ないですし」
「アコらしいねい」
ふ、と笑ったその顔にはやっぱり影があるようで。
「悩み事とか、ですか?っていうか聞いちゃ駄目ですか?」
「聞いてくれるかい?」
「わっ私でよければ!」
ごくりと唾を飲み込む。
だって、簡単な気持ちで踏み込んだ訳じゃないから。
私だって真剣だ。
マルコさんはそんな私を見て口を開いてくれた。
「情けねェ話だ」
「・・・・・・・・情けない、ですか?」
「好きな女1人口説けねえんだよい」
「!」
まさかの恋話!
マルコさんの口からそんな話が出てくるとは思わなかった。
「そっ・・・・その方は勿論船にいらっしゃるんです、よね?」
「いるよい」
「どれくらいの仲が聞いてもよろしいですか?」
でも、相談されたからには真剣に考える!
「顔を見れば世間話くらいはする」
「その方とお話しする機会があるのっていつですか?」
「飯食う時が1番多いよい」
「ちなみにどんなことをお話しされるんですか?」
「天気の話とか、飯の話だねい」
あれ、でも食堂でマルコさんがナースさんと一緒にいるとこあんまり見ないかも。
・・・・・・誰なんだろう好きな人って。
「じゃあとりあえずそこからワンステップ上がってみたらどうですか?」
「どうやって?」
「私協力します!その方の好きな料理とかデザートとか聞き出して頂ければ!」
「作ってくれんのかい?」
「腕によりをかけて!」
どん!と腕を出してみれば、マルコさんは今日初めて楽しそうに笑ってくれた。
「アコの腕は確かだからねい、期待出来るよい」
「うわあ有難う御座います!」
責任重大、頑張らねば!
「じゃあ頼む、と言いたいところだが・・・難しいんだよい」
「え、そうなんですか?」
「他にないかい」
張り切った私はがっくりと肩を落とした。
「んー後はスキンシップですかね」
「・・・・触れる、ってことかい」
「そうです!思い切って触れてみましょう!そして笑いかけてみませんか!?」
そしたらきっと相手の女性も心を開いてくれるはず!
我ながらナイスアイディア、と思ったら。
す、とマルコさんの大きな手が私の頭に乗せられて。
「・・・・こんな感じかい?」
「え。えっと、」
言いながらゆっくりと私の髪を撫でる手。
優しい眼差しに、微笑みに。
思わずドキッとしてしまった。
「脈はありそうなんだが・・・・アコはどう思う?」
「えーっと、相手の女性がわからないので何とも」
「わからないかい?」
「わ・・・・わかんないです」
さっきより近くなった顔に、心臓のドキドキは止らない。
顔も熱いし、え、ちょっと待っ、
「え、んっ」
どあっぷのマルコさんが不敵に笑ったかと思えば。
マルコさんの唇が、私の唇に触れた。
押し付けるだけのそれは、本当に一瞬で。
「やっぱ口説くのは無理そうだよい」
「え、え?」
「俺ぁ海賊だからねい。せっかく相談に乗ってもらって悪いが、奪わせてもらうよい」
「・・・・・・・・・・・・・・え?」
何が?
「おかげで元気が出たってことだい」
・・・・・・・・・ああ、うん。
マルコさん何だかすごくいい笑顔だし。
元気出たんなら、いっか。
と結論付けた私に追い討ちをかけるように。
マルコさんは再び唇を重ねて、
「愛してる、よい」
小さく呟いた。