短編②
夢小説設定
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「好きって言わないの?」
「へ?」
調理中の忙しい時にサッチさんは何を言うのかと思えば。
「マルコにさ。好きなんだろ?」
「・・・・・・っ、危うく大怪我するとこでしたよサッチさんのせいで」
包丁を手に思いっきりやるところだった。
なのにサッチさんはカラカラと楽しそうに笑う。
「で、言わないの?」
「・・・・言いません」
「何で」
「私はまだ・・・ここに居たいから」
「・・・健気だねェ」
「いいんです」
好きって言ってフられてこの船に居ずらくなるくらいなら。
好きなんて言わずにこのまま側に居る。
・・・・って、
サッチさんにそう言ったばっかりだったのに。
その日の夜の宴。
珍しく私も飲んだ。
「飲み過ぎじゃねェのかい、アコ」
「このお酒美味しいですよーおつまみも自信作ですっ」
「・・・・聞いちゃいねェよい」
「マルコさんと一緒に飲めて嬉しいですー」
心地良くなって、
つい口が滑った。
「私マルコさんのこと好きだから」
あ、と思った時にはもう遅かった。
その時のマルコさんの、目が点。の表情。
・・・・・・慌てて、逃げた。
それからずっとマルコさんとは会ってない。
・・・・・・というか、会わないように努力してる。
言うつもりなんかなかったのに。
何で言っちゃったんだろう私の馬鹿。
「・・・・サッチさぁぁん」
「駄目」
「だって厨房に行ったら間違いなくやられる!!」
「・・・・あのな。いくらマルコでも仲間にそんなことは・・・・」
「しないと言いきれますか!?」
「・・・・うん、まあ」
マルコさんが私に会いたがってる。
皆からそう言われる。
だから会いたくない私としては厨房に行きたくないので。
・・・・サッチさんにお願いしてるんだけど。
「つーかあいつに何したのアコちゃん」
「・・・・・・その」
「告白でもした?」
「げふぅ!!」
「・・・・あらら、マジで?」
ピンポイントで当ててくるサッチさん怖い。
「・・・・です」
「じゃあいいじゃん返事しようとしてるんだろ、マルコ」
「その返事が聞きたくないから逃げてるんです!」
「えーつまんない」
「つまんないとかじゃなくて!」
「あ、マルコ」
その名前とさされた指に咄嗟に後ろを振り返った。
「楽しそうだねい、アコ」
「ひぁ・・・・っ」
その特徴的な頭を見て瞬時に足が動いた。
必死に走って走って、
逃げ込んだのは。
「・・・・・ごめんなさい父さん」
父さんの大きい身体。
「グララララァ!可愛い娘の頼みとあっちゃあ聞かない訳にはいかねェなァ!」
「ちゃんと隠れてる?」
「ああ、隠れてる」
「マルコさん来ても居ないって言ってね」
「わかってらァ」
念のため小声で話しておいて良かった。
「オヤジ!アコがそこに居るだろぃ!?」
バン、とすごい勢いで開けられたドアの外にマルコさんが居た。
「・・・・アコ?来てねェな」
「・・・・・・・そうかい、悪かったよいオヤジ」
「グラララ・・・!!気にするな」
ばたん、と静かにドアが閉まってほっと一息。
「はあ・・・良かった」
「ホントに良かったのか、これで」
「・・・・・と言われると胸が痛い」
「ありゃあわかってた、アコがここにいることをな」
「・・・・・あ」
そうだよね見聞色でそれくらいわかるよね・・・!!
「それでもあいつは納得して帰った、この意味がわからねェ程ハナッタレか?」
「・・・・うぐぅ」
「ま、好きにやんな」
「・・・・・・はい」
父さんは笑ってくれたけど、父さんにとって誇れない娘でありたくはない。
背筋をピンと伸ばしたら、
「行って来い」
「っはい!」
父さんが優しく背中を押してくれた。
父さんから勇気をもらってドキドキしながら扉を開けて。
「ひぃ・・・・っ」
心臓が止まったかと思った。
「・・・・可愛くない悲鳴だねい」
「ままま、まるっ、いっ、いらっしゃっ」
マルコさんがでんと待ちかまえてるなんて思わなかった!!
しかも可愛くないとか言われたー!!
向き合おうって決めたのに、
その覚悟は今の言葉の衝撃でがらがらと崩れ落ちた。
「・・・覚悟は出来てるんだろうねい、アコ」
「いま・・・破裂しました・・・!!」
「・・・何言っ、おい!」
私はまた逃げた。
逃げながら涙が頬を伝って、
袖で拭う。
それでもまたすぐにぼろぼろと涙は流れて来る。
「・・・っ可愛くなくて悪かったですねバーカ!!」
もう自棄よ!!
叫んで角を曲がろうとしたところで、
ガシ。
片腕を掴まれた。
「もう1回、言ってみろい」
「ぎゃー!!!いやー!!!」
「うるせェよい、落ち着け」
「無理ー!!!!」
顔が近い怖いっでも好きいぃぃぃ!!!
「・・・・アコ」
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
「・・・・・・いいから来いよい」
そのままぐいぐい引っ張られて、
連れて来られたのはマルコさんの部屋。
「ここここの間のことは忘れて下さいっ」
恥ずかしさと突然のことにパニックで。
出た言葉。
「・・・・今まで散々引っ掻き回しておいて、忘れろ、とはいい度胸だねい」
「いやそんな滅相もない!!」
「俺のことが好きだと抜かしておいて言い逃げかよい、アコ」
低い声で告げた後マルコさんは私の背中に両腕を回して。
そのまま力強く抱き寄せた。
「ま・・・・っ!?」
「忘れてなんかやらねェ、返事くらい言わせろい」
「・・・・・っはい」
・・・・・・フられるの覚悟の上。
「ったく・・・・先に言わせろよい。俺も、好きだ」
「・・・・・・・・・・え」
「俺のは忘れんなよい」
「ええええええ!!」
「俺も・・・・忘れねェよい」
「えええっ、まっ、わっ、」
「馬鹿と言われたこともねい」
「・・・・・それは忘れて下さいまじで」
耳元で笑い声が聞こえて、
「だって・・・・マルコさんが可愛くない、って」
「悲鳴が、だろい?」
「・・・・悲鳴、でも」
「アコは可愛いよい」
「・・・・・そんなこと言われたら逃げたくなります」
恥ずかしくて。
「逃げてみろよい」
捕まえてやる。
・・・・・・・もう逃げる気は、ないんだけど。