短編②
夢小説設定
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会いたいのに逃げたくなる。
・・・・顔を見たいのに、
こちらに顔を向けられたら背けてしまう。
矛盾してるこの気持ちは何だろう。
・・・・・・どうして私、
こんなにも苦しいんだろう。
・・・・・・・・・・私が最近避けてること、絶対気づいてるよね。
絶対気にしてる。
何も言わないけど。
・・・・・・お頭。
「アコ」
「すみませんお頭私今忙しいので」
「何してるんだ?」
「・・・・・・・・掃除です。皆散らかすんだから」
「俺も手伝おう」
皆が飲んだ後の片付け中お頭に声をかけられた。
もうすぐ終わるし、
平気なんだけど。
本当は嬉しい。
このまま一緒に片付けして話したい。
でも。
・・・私の心が平気じゃない。
「結構です」
瓶をまとめてお頭に背を向けた。
「・・・・・・アコ」
名前を呼ばれるだけで胸が痛い。
「・・・・・お気持ちだけ頂きます」
「手伝えることがあったらいつでも言ってくれ」
「・・・・はい」
ゴミをまとめて捨てて、
部屋に戻って出たのは大きなため息。
「ああああ・・・・・・」
・・・・お頭が優しいことにつけこんで。
そっけない態度。
私の馬鹿。
こんなんじゃいつか嫌われる。
・・・・・・そんなの、嫌なのに。
・・・・・・・・嫌われたくない。
私は・・・・もしかして。
私はお頭のことが。
好きなの・・・・・?
「酔っぱらってセクハラしたとか」
「したかもしれねェ」
「・・・それだな」
「それか!?」
「それに怒ってるんだろアコは」
アコの様子がおかしい。
俺を避けてる、上に態度がそっけない。
・・・・怒ってる、とは違う気がするんだが。
「・・・・怒ってたら俺にぶつけてくると思わねェか?」
「怒りを通り越した、とか」
「・・・・・呆れてるっつーことか?」
「怒りをぶつけるのも嫌なくらい嫌われちまった・・・ある気がするぜ」
「顔も見てくれねェんだぞ!?」
「だからよ」
「今までは可愛い目を向けて話してくれてたんだ」
「・・・・・だから」
「ちょっとからかうと顔を赤くして怒るんだ、最高に可愛いんだ」
「・・・・だからそういうとこだよ、原因は」
「・・・・・様子見るしかねェか」
「そういうこった」
・・・・脳裏に焼き付いた笑顔が、離れねェ。
いい加減認めないといけないのかな。
お頭のことが好きだって。
・・・・・・駄目。
認めたらたぶんもっと見られなくなる。
認めなければ今までみたいに戻れるかも、しれないのに。
・・・・・・戻れる、かな。
あやふやな今でもこんな状況なのに。
・・・・・・・・こんなに胸が苦しいのに。
今日何回目かのため息が漏れた時、
軽いノック音がした。
いつもの癖で何も考えずにドアをあけて固まった。
「アコ、コックが甘いモンを用意してくたそうだ・・・食いに行こう」
「お・・・・・っ、あ、っ、」
慌ててドアを閉めようとするもお頭の足が挟まって出来なかった。
そしてその瞬間背中がぞくりと粟立った。
「・・・行こうな?アコ」
お頭の笑顔が、怖い。
「い・・・今お腹すいてない、ので」
床に向かってごめんなさいと呟けば、
「そうか」
と小さい返事がして扉がぱたんと閉まった。
・・・・あ、駄目。
泣く。
そう思ったら足が勝手に動いてた。
「お頭っ」
「アコ?」
「の・・・・・喉は、乾きました・・・・っ」
胸がいっぱいで甘い物は食べられそうにないけど。
自然と、口がそう紡いでいた。
するとお頭は破顔した。
「ああ、行こう」
・・・・・向き合って確かめよう。
逃げたままでいる私がこの船に居ちゃ駄目だ。
・・・・・・ドキドキドキドキ。
お頭に聞こえてるんじゃないかと心配になる程大きい心臓の音。
試しにちらりとお頭の顔を見る。
「はあうっ」
目が合った!!思いっきり!!
「・・・・具合が悪いのか?」
思いっきり顔を逸らしてしまった・・・!
「・・・・いえ」
「顔が赤いな」
「赤いですか!?」
「熱があるんじゃないのか?・・・・どれ」
どれ、と伸びて来た手が私の額に添えられた。
「・・・少しあるか?」
あ、もう駄目。
・・・・私、お頭のこと好きだ。
心配そうな瞳に、
大きくて冷たい手に。
くらりと目眩すらした。
「・・・・・あるかも、です」
・・・・でもなんか、好きだって認めたら少し楽になれた気がする。
これからが前途多難なんだけど。
ぱっとお頭の手が離れて、
「っと、これもセクハラか?」
「え?」
「嫌だったら言ってくれ、しないよう心がける」
「そっ、そんなことは・・・・!!」
苦笑したお頭すら愛しく見えた。
もう重症だ。
今まで何で気づかなかったんだろうこの気持ちに。
で、またお頭と目が合って。
お頭が嬉しそうに微笑んだ。
その瞬間、心臓を奪われた。
そう表現するしかない程の衝撃。
「食欲がないとも言ってたな・・・船医んとこ行くか」
ほら、と立ち上がって差し出された手をつい見つめる。
「・・・・アコ?立てねェ程悪いか?」
「たぶん、お頭の手をとったらもっと苦しくなります」
「そ・・・っそんなに俺のこと嫌い・・・か?」
ぴしっと固まったお頭に今度は私が苦笑する。
「好きだから、ですよ」
「・・・・・何だって?」
この気持ち、気づいたからには言わずにおれない。
「好きですお頭。お頭が居なければ熱だって出ないしご飯だってばくばく食べられるのに」
そう伝えた瞬間腕を掴まれて引っ張られた。
その先に待ち受けてるのはお頭の大きくて広い胸。
「・・・・そんなこと言われたらもう離せねェぞ」
耳元でぼそりと、
「アコがとことん逃げて避けても追いかける」
あ、やっぱ気づかれてた。
「もう逃げません。・・・お頭、私のこと」
「俺は好きじゃねェ」
・・・・・・はう。
「愛してる、だ」
「・・・っ私の方が愛してます!!」
「だっはっは!!それなら俺も負けねェさ」
お頭が原因だけど。
治せるのもお頭だけ。
恋の病、でした。