短編②
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「片付け手伝うわよアコ」
「え?」
突然入って来たナースさんに首を傾げれば、
「あら聞いてない?」
不思議そうな顔が返って来た。
「え、何も」
・・・・・ナースさんが説明してくれたこと曰く、
「この間久しぶりに少し派手な戦闘があったでしょ?それでアコの部屋を直したいって」
・・・・とのことで。
3日程私は部屋を出て行かなければならないそうだ。
確かに壁がちょっと壊れてた。
で、勿論それならナースさんの部屋で3日間お世話になるもんだと思って、
手伝ってもらって片付けた荷物をナース部屋に持って行ったら、
「あらアコの部屋はここじゃないわよ」
「え、じゃあ何処に・・・」
「エース隊長の部屋」
「・・・・はああああ!?」
「ちなみに船長命令」
仲の良いナースはしれっと続ける。
「私が頼んでおいたの。アコ、エース隊長のこと好きでしょ?」
「すっ・・・好きだけど!」
まずいでしょういくら何でも!
「チャンスじゃない?」
「いやでも男の部屋に女が・・・って間違いが起こったらどうするんですか!?」
「起こったら問題ある?」
「大アリです!そもそもエースは何て言ってるんですか!?」
「快諾して下さったそうよ」
「・・・・・マジですか」
という訳で。
エースに片思いすること数年。
告白するより前に、3日間エースと同じ部屋で過ごすことになってしまいました・・・・!
エースの部屋の前で立ち止まり、
入る為の心の準備。
深呼吸して、ドアを見つめて。
「・・・・はあ」
ため息。
それでもエースの部屋以外今日から3日間行ける場所がないし、
覚悟を決めてドアをノックしようとしたら、
ガチャ、とドアが開いた。
「・・・・何やってんだよアコ」
「・・・・あ。今ノックしようかと」
思ってたとこ。
あはは、と笑ったらエースが荷物を持ってくれて、
「これだろ?アコの荷物。3日間よろしくな」
「こ・・・こちらこそ」
部屋に入れてくれた。
なるべく部屋に居ないようにしよう。
「何か元気ねェな?」
「そんなことないよ・・・」
「・・・この間のやつで何か壊れたか?」
「いや、別に何も」
「・・・・・そんなに俺の部屋嫌か?」
エースが真面目な顔で聞いてきたので慌てた。
「そんなことない!・・・・けど。エースに申し訳ないなあって」
私のフォローにエースはほっとしたように微笑んで、
「ンなこと気にすんなって。ベッドはアコが使えよ」
「無理!!」
「・・・・無理?」
無理に決まってるじゃないですか!
エースが今まで使ってたベッドに私が寝るなんてそんな恥ずかしいこと!!
「申し訳なさすぎて・・・使えないってこと・・・」
「じゃあ2人で寝るか?」
もっと無理!
「わ・・・私簡易布団借りてくるから」
「俺もそうしてェんだけどよ」
「・・・・え?」
「今回貸してくれねェみたいだぜ」
「・・・・何でまた」
「さァな。アコが来る前に借りに行こうとしたらそう言われた」
「・・・・・そっか」
「だから俺がどっかで雑魚寝すっかと思ってたら」
「・・・・・たら?」
「オヤジに駄目だって言われた」
・・・・・ぐぅの音も出ない。
「えーとでも、ベッドはエースが使って?」
「それも駄目だ」
「・・・何で?」
「ナースがベッドは絶対アコに使わせろって」
「・・・・エースさ、父さんはともかくナースさんの言うことは絶対じゃないし」
「まぁナースのことは抜きにしてもアコがベッド使えばいいだろ」
「でも・・・」
「使えって。な?」
「・・・・・・有難う」
エースの押しに負けて頷いてしまった私のバカ。
優しいエースが好きだけど・・・!
今はエースの優しさが憎い。
それからしばらくしてナースさんにお風呂入りにいきましょーと声をかけられて、
お風呂に入りに行って。
さっぱりしたところでエースの部屋に戻る。
「た・・・ただいま」
「おーおかえりー」
緊張しながら戻ったけどエースは通常通り。
「そーいやアコ、俺今日見張り番だから先に寝てていいぜ」
「あ、うん。わかった」
良かった・・・!エースが居ない!
寝る前に差し入れくらい持って行ってあげようかなと思いつつ、
見張り番に行くエースを見送って、
厨房に行ったらサッチさんがすでにエースに差し入れを持って行った後だったので素直に部屋に戻った。
・・・落ち着かない。エースの部屋。
エースの匂いがする、気がする。
改めて使わせてもらうベッドにそっと触れてみる。
・・・・ドキドキ、する。
もっと触れたい、もっと。
そう思ってるうちにベッドに横になってた。
・・・・エースの匂いが強くなった。
ドキドキするのに、どこか安心する。
幸せだなあと思いながら目を閉じて、
そのまま寝てしまった。
「ん・・・・」
次の朝、目が覚めるとそこに。
「・・・・っ!!」
エースの寝顔。
なななな何でっ・・・・!
あ、ここエースの部屋・・・・!
でも私ベッドで・・・エースは床で寝るんじゃ!
「・・・・あ。朝か?」
「朝・・・・です。おはよう」
「おはよ」
にこっと笑うエースの可愛いこと。
・・・じゃなくて。
「エース・・・・?何で、ベッド」
「あ?あァ、見張りん時アコが来てくれなかっただろ?」
「あ、うん。サッチさんが差し入れ持って行ってたから」
「でも部屋来たら寝てたから、見張りん時会えなかった分も顔見てやろうと思って」
「・・・・・へ?」
「見てたら俺もベッドで寝たくなった」
「・・・・あ、そう」
「ちょっとキツかったか?悪かったな」
「どういたしまして・・・・」
呆然と返すので精一杯の私。
いや元々エースのベッドだから謝ることないんだよエース。
「じゃあ私厨房行ってくるね・・・」
「おう、アコの作る飯楽しみにしてる」
「・・・ありがと」
2日目はなるべく部屋に居ないようにした。
厨房とか甲板とかで過ごした。
幸せなんだけど心臓が持たないから。
けれども夜はやって来る。
眠気も襲ってくる。
宴の途中で雑魚寝してる人たちもいるけど、
私はそうはいかない。
・・・・エースの部屋に戻らないと。
片づけを終えて部屋に行けば、
珍しくエースが机に向かってた。
「・・・・どしたのエース」
「反省文。さっき酔って船焦がしちまって」
あらら。
「珍しいねエースがそこまで酔うなんて」
「・・・・・昨日ヤバかったからな」
「え、何が?」
「・・・・何でもねェ。先、寝てろよ」
「あ、うん」
赤い顔のエースに促されてベッドに入る。
ああ、今日もエースの匂いに包まれて眠れる幸せ。
「じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
幸せを噛みしめながら目を閉じたけど。
・・・・告白は、出来そうにないなあ。
少しだけ自分の情けなさにがっかりしながら、
それでもエースに抱きしめられる夢を見た。
3日目の、朝。
「・・・・・・・・何で」
昨日も1人でベッドに寝たはずだ。
にも関わらず隣には当然のようにエースが寝てて。
私を抱きしめるように腕が、絡んでて。
頭真っ白。
逃げようとしたら、ぎゅうっと力が入った。
「・・・・・エース?」
小声で名前を呼んだらうっすらと目を開けたエースと目が合った。
「・・・・・んぁ、悪ィ・・・我慢、できなかった・・・」
半分寝ぼけてるみたいに舌足らずに話すエース可愛い。
・・・・は置いといて。
我慢?
「あはは、今日は私床で寝るからエースベッドで寝なよ」
エースそんなにベッドで寝たかったのかぁ、
やっぱり悪いことしちゃったな。
「・・・違ェよ」
「ん?」
「今日で、最後だろ」
「・・・・何、が?」
「アコが俺の部屋で寝んの」
「そう・・・・だね」
一向に離れる気配がないエースと何とか会話をしながらも、目は合わせられない。
「俺今夜は我慢出来ねェ」
「・・・なに、が」
私の質問にエースは、
唇と唇を、重ねた。
「・・・・・・・・・・・・へ?」
「順番逆になって悪いけど、好きだ」
「・・・・ええええ!?」
「あー・・・そんで今日絶対手ェ出すから、部屋に戻るのはやめとく」
「え!?」
バカみたいにえ、しか出てこない私。
「どっかで適当に寝るから心配すんな。・・・でももし、アコも俺の事好きって言ってくれんなら」
「・・・・なら?」
エースは頬をぽりぽりかきながら少し戸惑って、
「その辺にいるから探してくれよ。・・・でもそん時は覚悟しとけよ、アコ」
そこまで言ってエースは初めて腕の力を緩め、
ベッドから抜け出し部屋を出て行った。
夜、やることが全部終わったら。
私も、順番逆になっちゃったけど。
好きだよ、って言いに行こう。
3日目の夜に起こることは、
間違いか正しいか。
2人だけの秘密。