短編②
夢小説設定
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「やっぱりプロポーズは夜景の綺麗なレストランがいいか?」
「私に聞かないで下さい」
「サプライズで車の中とかの方がいいか」
「・・・・・・いやあのですから」
「デートは何処に行きたい?」
「行きません」
「遊園地でも水族館でも好きなとこ連れてってやるぞー」
・・・・・これが恋人なら、
さぞかし甘い時間だったことだろう。
例えここが学校であっても。
教室で、たった1人の為の補習の時間であっても。
彼が・・・先生でなければ。
私が・・・・生徒でなければ。
「先生、補習」
「後でいいだろそんなの」
「・・・・・・先生がそれっていかがなものかと」
「細けェことは気にすんな」
細かくない。
私の将来に関わる大事なことだ。
「先生・・・勉強教えてもらえませんか?」
「・・・・・勉強したいのかアコ?」
「いや別にしたくはないですけど。でも補習やる気で来たんですよ今は」
「やる気があるのはいいことだがなァ」
「だって私今回のテスト結構自信あったんですよ」
でも結果は赤点で、仕方なくその事実を受け止めてここに居る訳だから。
「そうだろうな」
「でも赤点だったじゃないですか私」
「答えは間違ってなかったがな」
「・・・・・・・・・・・じゃあ何で呼ばれたんですか私」
私の質問にシャンクス先生は楽しそうに、
「解答欄ずれてたせいだな」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
何とも衝撃的な答えをくれた。
解答欄・・・・ずれ・・・てた?
「途中からずれてたんだよ。答えがあってただけに勿体ねェよなァ」
・・・・・・・・・・何たる衝撃。
「・・・・・・・・・・・帰ります」
ドジやっちゃったのは問題だけど、
答えがあってたんなら私がここにいる必要はない。
「待て待て」
「・・・・・・自分を殴りたいです私」
阿呆過ぎる。
「そう落ち込むな。何か美味いもんでも奢ってやるから」
「先生えこひいきーって言われますよ」
「間違ってはねェな」
・・・認めちゃったよ。
「俺のせいで誰かにいじめられてるのか?」
はあ、とため息を吐いた私に少しだけ心配そうな顔で聞いてくれるシャンクス先生は、
普通に考えればいい先生だ。
優しいし頼りになるし、教え方もそこそこ上手い。
・・・・私だって、先生のことは好きだ。
「いじめられてたら助けてくれるんですか?」
「当たり前だろ?・・・で、どうなんだ?」
「じゃあコレお願いします」
「・・・・・・何だ、これ」
私が引き出しから取り出した、色紙。
「取引したんです」
「取引?」
「先生のサインと生写真ゲット出来たらもういじめないって」
先生は苦笑しながら、
「こんなんでアコが助かるんならいくらでも書いてやるさ」
「・・・・・生写真は?」
「生憎だが今は持ってねェんだ。携帯、持ってるか?」
「え、先生は?」
「職員室だ。取りに行くの面倒だからな」
・・・・仕方なく私の携帯を出したら、ぱっと先生にとられた。
あれ、まさかの没収?
かと思いきや先生は私の座るイスの横に来てしゃがみ、
カメラを自分の方に向けて。
「ほら、いい顔作れよ」
カシャッ。
・・・・・・・シャッター音。
「・・・・・・・・・シャンクス先生」
「お、良く撮れたな。後で俺のに送ってくれ」
先生は満足そうな笑みを浮かべて、
「これ。俺のアドレスだから頼むぞ」
裏にアドレスが書かれた名刺を渡してきた。
「・・・・・・・これいくらで売れると思います?」
「ははっ、売れるか?売れたら好きなもん買っていいぞ」
いいのか。
怒れよそこは!教師として!
「・・・・・・嘘ですよ。いじめられてないです私」
「そうか、なら良かった」
「先生、皆の前では普通だし。ただ今日補習があるって言ったらサイン頼まれたんです。生写真も」
「一応教師だからな、生徒は守る」
「一応教師なら生徒に変なこと言わないで下さい」
「わかってねーなァ。教師だって人間だし、男だ。生徒を好きになることだってあるさ」
・・・・・・進路指導の時、だった。
初めて先生に好きだと言われたのは。
でもずっと生徒としてお気に入りだと思ってたし、
プロポーズ云々とかはからかってるだけだと思ってた。
「・・・先生もいい年齢ですもんね。結婚に焦ってるんですか?」
でも最近、先生の本気がわかって少し怖い。
「大学行きてェっつーんなら待てる」
「卒業と同時に結婚ですか?」
「お前だって俺のこと好きだろう?」
どくん、と心臓が大きく動いた。
「好きですよ。先生として」
・・・・好きだよ先生。
優しくてカッコ良くて頼りがいがあって。
・・・・・・・・初めて私の夢を笑わないでくれた人。
幼い頃笑われたトラウマからずっと言わないでいた夢。
だから、誰にも言ってない。
『小説家になりたいです』
『いいな、アコならいい作家になりそうだ。俺も全力でサポートする』
その言葉が、目が真っ直ぐで。
目が・・・離せなくなった。
「そうかァ・・・じゃあどうすっかな。要は教師として見れなくすりゃいいんだろ?」
「はい?」
「お前の中の教師の俺を取っ払う」
「せ・・・・先生?」
先生の真剣な顔が近づいてきて、
あっという間に・・・見えなくなった。
先生の唇が、
私の唇にくっついて。
すぐに、離れた。
「・・・・・・・・・・は」
「訴えるか?何なら教師辞めてもいい」
「な、なに言っ・・・」
「そうすりゃ先生じゃなくなるだろ?」
「・・・・・・・そういう問題じゃないんですけど」
真っ白な頭でようやく出した言葉。
「作家にはいろんな経験が必要だろ?教師と禁断の恋ってのもいいんじゃねェかと思うんだが」
でもこの言葉にはっとなった。
・・・・・・・確かに。
「それと、素直な心も大事だと思うが?」
「う・・・・・」
不敵な笑みで私の心を抉ってくる。
・・・・・・先生らしくて、
教師っぽくない。
「・・・・デビュー作は禁断の恋で決まりかなあ」
「全力でサポートさせてもらう」
「あははっ、よろしくお願いしますね先生」
「素直でよろしい」
撮ったばかりの2ショット。
お守り代わりに待ち受けにした。
小説家になりたいことも、
禁断の恋をしてることも。
内緒。
内緒の夢、内緒の恋。