短編②
夢小説設定
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「・・・・・・・・終わりそう?」
「・・・・・・・・・・・まだだよい」
せっかくの休みだっていうのに。
さっきからこんな会話しかしてない。
同棲を始めたばかりの恋人と、一緒に居るのに。
あーあ。
恋人になって数年。
色々めんどいから一緒に住まねェかい、とマルコに持ちかけられて。
やっと一緒に住めてるのに。
同じ部屋で、マルコはずっとパソコンとにらめっこ。
「・・・・・・・はぁ」
「悪いよい・・・」
マルコも申し訳なさそうにしてるので、
私も咎められない。
仕事だし、仕方ない。
「んーん気にしないで。本読んでごろごろしてるー」
実家から持ってきたダンボールを漁りながら、
さて何読もうかなあとごそごそ。
そして見つけた、絵本。
・・・・・眠れる森の美女。
こんなの持って来てたっけ、なんて考えつつ絵本を開いた。
うわ、懐かしい。
全部平仮名で、さくさく読み進めていくうちに、
何だかうとうとし始めちゃって。
・・・・・・・・ねむい、かも。
そう思った時には、遅かった。
・・・・・・・体が動かない、私。
あれ、やだな。
何かあった訳でもないのに悲しい。
悔しい。苦しい。
何だかそんなネガティブな感情しか湧き上がってこない。
ああ、私寝ちゃったんだ。
もう、このままずっと寝てようかなあ。
そう思って目を閉じようとしたら、
『アコ?』
名前を呼ばれた。
・・・・・誰、だけ。
この声。すごい好き。
「・・・・アコ」
優しい、声。
ああ、マルコだ。
「・・・・・・・・・・まるこ?」
ぱ、っと一気に周りの景色が変わった。
「・・・・・あれ?」
「起こしちまったかい?」
「・・・・・・・・・・寝てた?」
「よい」
「・・・・・・・ありゃあ」
いつの間にか寝ちゃってたらしい。
「仕事は終わったよい。悪かったねい」
「あ、お疲れ様。・・・・何か変な夢見てた」
「みたいだねい。呻いてたよい」
・・・・・・・恥ずかしい。
のっそり起き上がった私の頭をマルコは優しく撫でてくれた。
「・・・・・・マルコ」
「どうした?」
「・・・・・この絵本、捨てようかなあ」
「・・・・・絵本?」
知らずのうちに握ってた、眠れる森の美女。
このせいであんな夢見たんじゃないかしら、と思ってしまった。
「・・・・・・ねえ、マルコ」
ふと、湧き出た疑問。
「・・・・休日を無駄にした償いなら何でもするよい」
マルコは私が怒ってると思ったらしい。
私は笑って首を横に振った。
「ううん、そうじゃなくって。聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい?」
「・・・・もし私が、世の中に絶望してずっと眠っていたいって思って、実際そうなったらどうする?」
「・・・・・・・・また変なこと考えるもんだねい、お前は」
マルコは苦笑しながら、
「そうだな・・・さっさと起きろってぶん殴るよい」
「・・・・・・・・愛がない」
愛がない答えをくれた。
くそう、なんて奴だ。
数年付き合ってる関係とはいえもう少し甘い答えをくれたっていいじゃない!
がっくりと肩を落とした私をマルコは笑って、
「眠いなら寝りゃいい。疲れた時にはそれも必要だろい?無理に起こすことはしねェよい」
「・・・・・・でもずっと起きなかったら?」
「声をかける」
「何て?」
「起きろ、ってよい」
「生きるのに絶望した人間にただ起きろって言ってもさぁ・・・」
「・・・・面倒くせェよい」
はあ、と呆れのため息。
でも私は、
「・・・・・・・聞きたいな。マルコの言葉で」
マルコの口から。
じっとマルコの目を見つめれば、
そっと抱き寄せられた。
「・・・勝手に1人で傷ついてんじゃねェよい。俺が居るだろうが。起きるまでは側に居てやるからさっさと起きろい」
耳元で囁かれる、マルコのあったかい言葉。
「生きるのは辛いことばっかでもねェからよい。・・・俺が、幸せにしてやる」
・・・・・・・・・何かこれって、
「・・・プロポーズ、みたいだね」
「それでいいよい」
「はぁ!?」
何となく言ったのに肯定されてしまった。
え、ちょっと待って今のがプロポーズぅ!?
「起きるかい?」
「・・・・・・・・・・・・っ、起きる」
っていうかもう完全に目、覚めた。
「んじゃ、仕事も終わったし式場予約でもするかねい」
「え、ちょっと早くない!?って、ん・・・・」
驚く私をうるさい、とでも言うように唇で塞ぐマルコは、
嬉しそうに、
とても楽しそうに笑う。
「早くねェよい。・・・・ずっと、考えてたからねい」
「そ・・・・そうなの?」
「アコが世の中に絶望する前にさっさとやるに限るよい」
「・・・もし絶望しても、」
「声はかけ続けてやる。・・・・俺が、起こしてみせるよい」
「・・・・・・幸せにしてね、旦那様」
「任せろい」
そうだね。
起きたら、
この世界にはマルコがいる。
それだけで、
私が起きてる理由になるかもね。