短編②
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シャンクスにプロポーズされて、無事に結婚式も挙げた。
それから1ヵ月。
世間で言えばまだまだ新婚さん。
ラブラブなんでしょ?ってよく聞かれる。
・・・・・・でも今は、
最悪な状況です。
「・・・・・・すまん。ほんっとーにすまん」
頭を下げてくれるシャンクスに私は言葉が出ない。
料理をしてて、シャンクスが手伝ってくれるって申し出てくれたのでお願いしたところ。
ガシャン、と派手な音がした。
どうしたの、と行ってみて愕然。
・・・・・・レアもののキティちゃんのお皿が。
もう2度と手に入ることはないお皿が。
あまりに貴重だから食器棚の飾りとして置いておいたものが。
見るも無残な姿になっていたから。
・・・・・粉々。
シャンクスだってわざと落とした訳じゃないし、こんなに謝ってくれてる。
大丈夫だよ、って許してあげればいいじゃない。
・・・・・わかってるのに。
「・・・・もう、買えないのに」
口から出て来る言葉はシャンクスを責める言葉。
「ネットで買えないか調べてみる、高くても何処かで買えるかもしれねェ」
「いいよ」
「あーそれから知り合いのツテで何とかならんもんかも聞いてみる」
「・・・・いいよ、シャンクス」
「アコ・・・・」
「絶対無理だし。・・・そんな高いお金払わなくていいよ」
粉々になったお皿は捨てた。
・・・・捨ててから、また悲しみがこみあげて来る。
それから食器棚を見る度に、
あのお皿がないことを確認させられる度に涙が溢れる。
それから一昨日。
シャンクスは次の日にたくさんのサンリオグッズを買って来てくれたけど、私の心のモヤモヤは晴れない。
・・・・何だか気まずい。
ネギを切りながらそろそろシャンクスが帰ってくる頃だなぁ、と思う。
今日帰ってきたら許してあげないと。
わかってるんだけど。
「ただいま、アコ」
・・・ドキ。
「・・・・おかえりなさい」
「アコ、今日はケーキを買って来たんだ」
「ケーキ?」
差し出された大きな箱。
「開けてもいい?」
「ああ、勿論だ」
シャンクスの許可を得てそーっと箱を開けた。
そこには。
「わ・・・・・・」
大きなハローキティの立体ケーキ。
生クリームで飾られたキティちゃんの身体。
なんて可愛い・・・っなんて食べにくい!!
でもなんて・・・・っ美味しそう!
何よりやっぱり可愛いー!!!
「すごいだろう?この間の詫びにはならねェかもしれないが・・・」
「・・・・・これ、1万円はするよね確か」
「まあ、そんなもんだ」
「そんな高いの・・・・良かったのに」
ああ、駄目。
素直に有難う嬉しいって言わないと。
笑顔で。
・・・・・なのに、上手く笑えない。
「喜んでは・・・くれないか?」
寂しそうに笑むシャンクス。
ずき、と胸が痛んだ。
喜んでるよ。
・・・・嬉しい。
「だってケーキはなくなっちゃう」
「・・・・そう、だな」
「飾っておけないし」
「ああ、すまん」
「・・・こんなんじゃ」
駄目。
・・・・駄目だぁ、私。
「・・・・そうだな、駄目な男だな俺は」
寂しそうなシャンクスの声に耐えきれなくて、
「ご飯・・・・冷めちゃうから」
冷たくそう言い切った。
・・・・・・・もう駄目かもしれない。
「お、新郎様のご出勤だぜ」
ヒューヒューと口笛が聞こえたが、地獄への入口の音楽にしか聞こえない。
・・・・最悪な気分だ。
「どうだ、新婚の気分は。最高だろー?今のうちだけだぜ」
「・・・・・最悪なんだ、今」
へらへら笑っていたヤソップにげんなりと呟けば目が輝いた。
「お、喧嘩か?早速やるじゃねーの」
「俺はもう駄目だ・・・・」
「謝っていつも通り仲直り簡単だろ?」
「どう謝っても何回謝っても許してくれねェのさ」
「おいおい、何したんだよ」
「アコの大事にしてたレアものの皿を壊した」
「・・・・・やっちまったな」
「詫びに何か買って行ったんだろ?」
「グッズも買ったし昨日はケーキも買って行ったが・・・駄目だった」
「そんな心の狭い嫁さんとは離婚だな」
「馬鹿言うな。・・・悪いのは俺なんだ」
ようやく結婚出来たんだ。
・・・・それに、アコは優しい。
きっと心の底では許してくれているはずだ。
ここで諦められる訳がねェ。
「アコ、明日ピューロランドに行かないか?」
・・・帰って来たシャンクスが突然チケットを見せてそう言いだした。
「え、だって明日平日」
シャンクスは会社。
「有給をもぎ取った」
「えええ!?」
「平日の方が空いてるし、何より平日限定のパレードがあるんだろう?」
・・・・ずっと平日限定のパレードが見たいって思ってた。
でも口にはしなかった、のに。
「・・・・先週発売されたばっかりのグッズがあるの」
「いくらでも買えばいいさ」
「いっぱい、いっぱい買うよ?」
「俺が持つ。車にも詰めるしな」
「いい・・・・の?」
だってこんな最悪な私なのに。
「ああ。・・・抱きしめてもいいか?」
ためらいがちに私に腕を伸ばしたシャンクスに、私から抱き着いた。
「・・・・・ごめんね許してあげられなくて」
「いいんだ、俺が悪いからな。アコが許してくれるまでアコの好きなことをいつまででもしよう」
「シャンクスは悪くないよ、手伝おうとしてくれたんだもん」
何もしないで座ってるだけの旦那様なんて腐るほどいる。
なのに私は。
「もっと気を付けるべきだった・・・アコを悲しませちまったな」
「・・・・悲しかったけど、もっと悲しいことがあるって気付いたから、平気」
「もっと悲しいこと?」
ぎゅ、とシャンクスの腕が腰に回されて。
久しぶりのシャンクスの匂い。
・・・安心する。
「シャンクスに触れないこと、好きって言えない自分。・・・もう駄目だって思ったら」
真っ暗になった。
でもシャンクスが諦めないでくれたから。
ヒカリが見えた。
シャンクスが居なくなったら私もう駄目かもしれないと思った。
今までは1人でも平気、って生きて来たのに。
「・・・嬉しいよ、アコ」
ちゅ、ちゅ、と頬に唇の嵐。
「しゃん、くす」
最後に唇に甘くて優しいキス。
「・・・・許してくれ、アコ。愛してるんだ」
「・・・・これからも手伝ってくれる?」
「勿論だ、俺でよければ何でもしよう」
「・・・明日、楽しみだね」
「ああ、楽しみだ」
久しぶりに見た気がする、シャンクスの笑顔。
・・・やっぱりこの笑顔が隣にいなくちゃね。
「ね、シャンクス」
「ん?」
「今度行く時は3人がいいね」
「ああ・・・・そうだな」
可愛い娘とシャンクスと、3人でピューロランドに行ける日を夢見て。
新婚生活、楽しんでます。