短編①
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「それでね、最後に行ったお店でいいの見つけたんだー」
そう言う友達の右手、薬指に光るソレを少し羨ましく思ってしまう。
「いいじゃん、ペアリング」
「何かつけてると、離れても一緒って感じなんだぁ」
私にも恋人は居る。
けれど忙しい人であまり会えないのが普通。
・・・・・ペアリング、かあ。
でもマルコって指輪とかつけるの嫌がりそう。
そもそもこないだ指輪買ってもらったばっかりだし。
でも、いいなあ。
「アコ?どうしたい、ぼーっとして」
「・・・・おぉっと、失礼」
2週間ぶりのデート。
「悩み事なら聞くよい」
「や、そんなんじゃないから大丈夫。ありがとね」
「・・・俺じゃ頼りないかい」
少し不貞腐れたような顔のマルコに、私は可愛いなあと思ってしまった。
「そんなことないって。でも悩みとかそんなんじゃないからホント」
「何かあったらいつでも言えよい?」
「ん、ありがと」
手を繋いで歩ける。
側に居てくれる。
それだけでもいっか。
そう思えるから。
今はまだ言わないでおこう。
「アコは甘え下手だからねい。心配だよい」
「マルコは優しすぎるからねい。甘やかしすぎだと思うよい?」
「・・・真似すんじゃねえよい」
「えへ。私十分甘やかされてると思うけどなー特にマルコには」
「俺はまだ足りねえよい。もっと甘やかしてやりてえ」
言いながら私の頭を優しく撫でてくれるマルコ。
うん、これだけでも幸せだ。
「なんかお腹すいたかも。夕飯にしない?」
「そうするか。じゃ、行くよい」
「・・・・行くって、今日何処か決めてあるの?」
「ああ、もう予約してある」
レストランを予約なんて滅多にしないのに。
いつもはその日のノリとかで今日はラーメン!とかパスタ!とかなのに。
珍しい。
「・・・・・え、ここ?」
連れて来られたレストランは、超有名な所だった。
レストランバラティエ。
「入るよい」
「え、マジで」
言いながらさっと腕を出してくれるマルコ。
私はその腕に戸惑いながら捕まる。
エスコートしてくれるマルコは何だかすごくカッコ良い。
「・・・・私今日そんなにお金持って来てないんだけど」
「心配すんな。俺の奢りだよい」
何で!?
・・・・マルコ浮気でもしたのかなあ。
その罪滅ぼし、とか。
通された席は窓側で、夜景がすごく綺麗。
「よく予約とれたね?」
レストランバラティエの、しかも窓際席なんて予約殺到で何年待ち状態だと聞いたことがあるんだけど。
しかしマルコは平然と、
「ここのオーナーと親父が知り合いだったらしいんで、ちょいとねい」
と言ってのけた。
・・・・・さすが。
運ばれてきた料理もさすがで、
見た目も味も評判以上のものだった。
お会計もすんなりとマルコがしてくれて。
「・・・・ご馳走様。ここ来るってわかってたらもっとお洒落してきたのに」
「は、それは勿体ねえことしたよい」
丁寧にお店を送り出されて、
至福の気分。
「アコ・・・まだ時間あるかい?」
「ん?うん、大丈夫だけど」
「話しがある。そこの、公園で、少しいいかい」
そう言ったマルコの顔は何処か強張っている気がした。
私は頷いて公園へと足を向けたマルコに続いた。
話、か。
もしその話しがいいことなら、(昇進とか)私も思い切ってペアリング欲しいとか言ってみようかなあ。
思いながら私は見つけたブランコに座ってみた。
「お前・・・いい年してそれに乗るのかよい」
「いいじゃん、幾つになったって楽しんだもん勝ちだって。で、話しって?」
少し呆れたように笑うマルコに私も笑う。
マルコはそれから急に真面目な顔になって、私を見つめた。
「・・・今、言ったとおり、俺らもいい年だろい?」
「ん、まあそうだけど」
「幾つになってもアコが隣に居てくれるなら俺は幸せだと思う。・・・・アコ」
「え、」
「俺と結婚してくれるかい」
言いながら差し出された箱には、
光る、指輪。
何これまるでドラマみたい。
『ダイヤってのは違う時に贈るもんだろい』
以前寂しい思いをさせたからとジュエリーショップに行った時のマルコの言葉を思い出す。
私は立ち上がって、
「よ・・・よろしくお願い、します」
それだけ言うのが精一杯だった。
ドラマみたいに感動して泣くほどの余裕もない。
それでもマルコは優しく抱きしめてくれた。
「こちらこそ、頼むよい」
「私で、いいの?」
「アコがいい。・・・落ち着いたら指輪買いに行くか」
「え、何の?」
「結婚指輪に決まってんだろい」
・・・・結婚指輪。
そうか、
「その手があったか!」
がばっと顔をあげた私にマルコは驚いて、
「何のことだい?」
「・・・・や、実はマルコとのペアリングが欲しいなーって思ってて」
私も正直な胸のうちを話すと、
マルコは呆れたようにため息を吐いた。
「・・・だからお前は、欲しいのがあるならいつも言えっていってるだろい」
「でもマルコって指輪しなさそうだなって思って」
「ったく。・・・・結婚指輪ってのはペアリングなんて甘ェもんじゃねえよい?」
「そう?」
「束縛の証だ。・・・それでもいいんだな?」
まるで辛いことを強要するかのように、
確認される。
「・・・難しいことはよくわかんないけど、ずっとマルコの側に居て、マルコのこと好きでいる自信はあるよ」
「・・・アコにゃ勝てねえよい」
数週間後、
私とマルコの左手薬指に光る銀色の指輪。
これも1つのペアリング。