短編②
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「すみません、実は僕占いの勉強中でして・・・良かったら貴女を診させてもらえませんか?」
「あ、間に合ってます」
貴重な休みの日に出かけたのがいけなかったのかしら。
もうすっかりおばさんになった私に声をかけてくるなんて怪しすぎる。
まだバリバリ働いてるけどさ。
「そこを何とか、お時間とらせませんので」
いやいや、もう既に何秒か無駄にしてます。
駅前に出てきたらコレだよ。
キャッチセールス。
「占いに興味ありません」
「占いは貴女の未来を切り開きますよ!」
「じゃあ占って下さい。私はこの後西口に出ればいいですか東口に出ればいいですか」
別に目的なく出てきたんだけど、
せっかくだから出来たばっかりのカフェにでも行こうかと数秒前に思ったとこで。
そのカフェは西口にある。
「ずばり、東口に幸運が待っているでしょう!」
「有り難う、西口に行ってみる。君幸あれ」
まだ何か言いたさそうな青年を残して、
私は足を進めた。
行く場所、は。
「ああ・・・・私は大馬鹿者だよ」
「成績は昔から良くなかったな」
「・・・・・・・そのぶん友達は居ましたー」
「でも男は居なかった」
「必要なかったから」
私は本当に大馬鹿だ。
西口のカフェに行こうとしてたのに。
占いに左右されて東口に来てしまうなんて。
・・・・・・・・それにしたって、
何が東口に幸運が待っているでしょう!だ。
待ってたのは、
「好きな奴くらい居なかったのか?」
・・・・・・・・高校の同級生。
シャンクス。
「・・・・・・・・・・いないよ」
高校の頃の、私の想い人。
シャンクスはカッコ良くて信頼もあって、
男女問わず友達が多かった。
だから、告白すら出来なかった。
会えて嬉しい気持ちは少し。
・・・・会いたくなかった、って気持ちの方が大きい。
お互い大人になって、
ばったり会って。
話しに出てくるのはきっと、今のこと。
きっとシャンクスはもう結婚して、子供も居るんだろうな。
・・・・・・・・・昔の恋とはいえ、
好んで聞きたくはないんだけどな。
ああ、やっぱり西口に行けば良かった。
カフェじゃなくても。
そしたらシャンクスには会わなかったのに。
ばったり出会って、立ち話になってしまった。
「じゃあ今は?独りか?」
「・・・・どうせ独りですよ」
「そう怒るな。今日この後は?」
「西口のカフェ。・・・・に行く予定だったの、本当は最初から」
「ここは東口だぞ?」
「・・・・・・・・・騙されたの」
「誰に」
「占い師の研修生。東口に行くといいですよーって」
ふてくされた私を見てシャンクスは苦笑した。
「それを信じたのか?」
「信じた訳じゃ・・・ないけど。むかついたから逆の逆をいこうかと」
「だっはっは!アコは変わってねェな」
「そんなことよりシャンクスは大丈夫なの?時間」
「ああ、用は済んだ」
「ふーん・・・・・」
ばったり会ったもんで何となく立ち話ししてたけど、
さてどうしよう。・・・・と思っていたら。
「で、行くんだろう?西口のカフェとやらに。俺も行っていいか?」
「シャンクスも?いいけど」
予想外のお誘い。
「じゃあ行こう。俺としてはついてた」
「ついてた?」
西口目指して歩きながら、首を傾げる。
「連絡を取ろうと思ってたんだ」
「私に?」
「同窓会」
「げ。マジで」
「詳しくは中で話そう」
噂の西口のカフェは確かに、お洒落で居心地がいい店だった。
・・・・・・最初から1人でここに来れば良かった。
「1ヶ月後、場所は東口から歩いて5分の居酒屋だ」
「東口?」
「ああ。俺が幹事だからな、下見に行ってきたとこだ」
「それで東口に居たんだ」
「来るだろ?」
「どう、しようかな・・・・・」
正直迷う。
「迷ってるなら占いにでも頼ってみたらどうだ?」
「・・・・・・・・本気で言ってる?」
楽しそうに笑うシャンクスの顔は、
あの頃と同じように見える。
「俺が占ってやるさ」
「は?」
シャンクスが占い!?
「シャンクスって占いとか信じる方だっけ?」
「いや?だが・・・・利用出来るものはするべきだと思ってな」
「よくわかんないんだけど」
「占いの結果。アコは同窓会に来るべきだと出ている」
「占いかぁ。どうせなら恋愛運でも占ってよ」
もう半分自棄で言ってみたら、シャンクスは不敵な笑みを浮かべた。
・・・・・・・・こんな顔、初めて見た。
「来月の同窓会、開始1時間前に東口に行くといい。運命の相手と出会えるだろう」
「何それ。・・・っていうかシャンクスは・・・どうなの?」
「ん?何がだ?」
「結婚、とか。・・・・お子さんもう大きかったりして」
恐る恐る聞いてみたら、
「結婚?してないな。相手もいない。今は、だが」
「・・・・・・・・・・・・そう、なんだ」
ほっとした。
ものすごく。
・・・・・・・・・だから、どうだっていう訳じゃないのに。
私、最低だ。
自分から好き、とも言えない癖に。
「同窓会は参加にしとく」
「え、あ」
「1時間前に東口に幸運あり、だぞ。覚えておけよ」
「・・・・・・・・・わか、った」
戸惑いながら頷けば、
シャンクスは珈琲1杯分にしては有り得ない、
1000円札を置いて、
「しゃっ、・・・・!?」
私の頭をぐしゃぐしゃ、と撫でて(というより髪を引っ掻き回して)去っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・幸運、かあ」
今日はこの後同窓会に着ていく服でも買いに行こう。
同窓会当日。
雑誌の占いも、
テレビの占いも。
最下位。
・・・・・・・・それでも、
シャンクスの『占い』を信じて、
1時間前に東口に行けば。
未来の旦那様と、
出会った。
(シャンクスって占い信じてるの?)
(いや、全然)