短編②
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「アコの喜ぶ顔が見れりゃそれでいいんだ」
・・・・とお頭が言う。
お頭(2人きりの時はシャンクスな、と念を押される)に今までたくさんのプレゼントをもらってる。
食べ物からアクセサリーに至るまで、本当にたくさんのものを。
で、じゃあ私も何かお返しを、というといらないと言われる。
・・・・冒頭の言葉に繋がる訳で。
・・・・・・私だって。
お頭の、シャンクスの喜ぶ顔が見たい。
ということで。
島に着いて2日目。
1人でこっそり船を抜け出して来た。
少し大きめの何でも揃うお店。
昨日シャンクスとデートしたけど、
これが欲しいとかそういうことは言ってなかった。
シャンクスにプレゼント、となれば思いつくのはお酒。
・・・・服とかは興味なさそうだし。
食べ物にもこだわりなさそう。
ああ、世の中にはこんなにもたくさんの物が溢れてるのに!
シャンクスへのプレゼントがお酒一択なんて寂しい。
おつまみ系いいかも、と思ったけどせっかくなら身に着けて欲しいというか残って欲しい。
でもネックレスなんてつける人じゃないし、
時計だって必要ない。
ネクタイも右に同じ。
・・・・でもスーツ着たシャンクス、カッコイイだろうなぁ。
想像したらドキドキしてきた。
でも窮屈とか言って着てくれなさそうだから却下。
指輪・・・・もつけないだろうし。
・・・・・・・・・じゃあ何を買えば。
いやいや諦めない。
私の持ってるお金でお頭を喜ばせるんだから。
とりあえずおつまみ系の珍味とお酒は買っておこうかな、絶対喜んでくれる自信あるし。
「いらっしゃい、ゆっくり見てってよお嬢ちゃん!」
「有難う御座いますっ」
優しそうな店主のおじさんに甘えてじっくり店内を見ることにしよう。
・・・・・・・・で、何でこんなことになってるんだろう私。
薄暗くて狭い部屋。
手と足にはロープが丁寧に縛られている。
しかもきつくてちょっとやそっとの力じゃ取れそうにない。
幸い目隠しはされてないから何とか状況を理解出来るかもしれない。
耳も無事だし。
聞き耳を立てていると、聞こえて来た男の声。
「顔にゃ傷1つつけてねェだろうな」
「勿論でさァ、上物ですぜ」
あれ、今の声。
・・・・何か聞き覚えがあるような。
「常連客でもねえんだな?」
「初めて見る顔でござんす、問題ありやせんよ」
「ならいい。準備が出来次第出発だ。・・・ふん、高くで売れそうだな」
・・・・・・・耳だけで把握した。
なるほど私高値で売られるのね。
・・・・・・・・・お頭には出かけるって言って来てないから。
つまりこれは。
・・・・・・・・最悪の状況ということ。
さーっと顔から血の気が引いていくのがわかった。
どうしようどうしよう!
・・・・待って。今。
客がどう、とか。
それにそう、あの声。
・・・・・『いらっしゃい、ゆっくり見てってよお嬢ちゃん』
優しくそう声をかけてくれた、おじさん。
ああ、思い出した。
お頭へのプレゼント選んで、レジでお会計を済ませて。
帰ろうとしたところで後ろから襲われたんだった。
頭が少しクラクラするのは薬品をかがされたせいね、きっと。
「っ」
そうだ!お頭へのプレゼント!!
あれなくなったら困る!と慌てて探して、
暗闇にようやく慣れた目がそれを見つけた。
部屋の、隅っこ。
良かった、無事。
手足は縛られてて動けない。
でもプレゼントが無事なら。
・・・・・諦める訳に、いかないよね!
相手が何人いるかはわからないけどとにかくまだ私が眠ったままだと思わせることが大事。
声も音も出さないようにそっと歩く。
声が聞こえてない方へ歩いて、縛られたままの手で触れてみる。
・・・・ドアとか窓みたいなものがあれば、と思ったんだけど。
がっかりと肩を落として壁伝いに移動しようとした瞬間、
足が何かにぶつかってガタン、と音がした。
「あ・・・・っ」
やっちゃった。
当然のようにドアが開いた。
「よお、目が覚めたかいお嬢ちゃん」
「・・・・すみません急に眠くなってしまったみたいで」
「おやおや、もっと眠ってていいんだよ。寝かせてあげようか?」
「いえ、もう帰ります」
「おじさんが良いところに連れて行ってあげるよ、だから大人しくしてな」
「・・・・左袖にナイフ、隠してますね?」
きらりと光った左袖。
「ほおお、わかってるじゃないかい。大事な顔を傷つけられたくなかったらそのままおねんねしてな」
「顔に傷がついたら減点」
「・・・何だと」
「力任せに手や足を傷つけても下手に骨までいったら動かせなくなって更に商品価値は下がる」
「っこの女ァ!!」
逆上して冷静さを失ったところで隙をついて逃げる作戦だったけど、
失敗した。
私が。
・・・・・動けなかった。
無意識のうちに目を閉じて、その瞬間を待った。
・・・・でもいつまでも衝撃も痛みも何も来なくて恐る恐る目を開けた。
見えたのは、
「俺の可愛いアコに物騒な物を向けてくれるな」
「おかっ・・・・・」
ナイフを取られて気絶させられてるおじさんと、
・・・・・お頭の姿。
「怪我はないか?アコ」
「・・・・っはい、お頭」
そっと片手を差し出されてその手を取った途端、ものすごい勢いでぐい、っと引き寄せられた。
そしてすぐさま耳元で、
「2人きりの時は?」
囁いてくる。
「・・・・ごめんなさいシャンクス」
ちょっと、今回ばかりは。
「・・・・本当に死ぬかと思いました」
「俺に黙って出掛けるからだ。まったく、船に居ないことを知った時は肝が冷えた」
「反省してます・・・・!」
「反省の印は?」
促されて仕方なく、お頭の頬にちゅ、とキスをした。
そしたら、
「ちなみにこの男、かなりのナイフ使いだ。骨は上手く避けてすぐに治る傷をつけられただろう」
「・・・・うわ」
ぞっとした。
「挑発するなんてもってのほかだ、アコ」
当然だけど怒ってる、お頭。
「・・・守りたいものが、あったから」
「アコの命以外に守るべきものなんてねェだろう?」
「あるんです!・・・・あそこ、に」
部屋の隅っこに置かれた買い物したばかりのプレゼント。
まだラッピングもしてなかったのに。
「・・・こりゃあカラスミか。それと・・・ベルト?男物か」
「・・・・はい」
シャンクスが紙袋のものを手に取る。
お酒のおつまみにと思ってカラスミを、
身近に感じてもらえるものを、とベルトを購入した。
「・・・アコは俺をどう思ってるかは知らんが、俺以外の男にプレゼントってのは許せるもんじゃないんだが」
「シャンクスのに決まってるじゃないですか」
「・・・俺に?アコが?」
「驚かせたくて黙って出て来たんです。絶対渡したかったから・・・・っ死ぬつもりだって、なくて」
ちゃんと無事に帰って渡すんだ、って。
そう言ったら今度はシャンクスから深いキス。
「・・・・嬉しいよアコ」
離れた唇から嬉しい言葉。
「だがアコを危険な目に合わせてまで欲しいモンはねェ。それは覚えておいてくれ」
「・・・・・は、い」
「アコ・・・俺が最も喜ぶものを知ってるか?」
「え・・・知りません」
「これを言うとあいつらに笑われるんだが・・・・」
「・・・はあ」
「アコの笑顔を独り占めするのが俺の最高の喜びっつーことさ」
照れくさそうに笑ったシャンクスに胸が締め付けられた。
そして思いっきりの笑顔で、
「大好きですシャンクス」
そう伝えてもう1度、
今度は唇に私からキスをした。
・・・・・海賊の頭にしては、
お金のかからない人だなぁ。