短編②
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6月某日。
エースが、
海に落ちた。
「落ちたんじゃねェ、潜ったんだ」
「わざわざ溺れる為に?」
まだ少し力が入らない様子の濡れたエースの髪をタオルで拭きながら苦笑した。
「仕方ねェだろ・・・・見つけられねえんだ」
「探し物!?海の中に!?」
それはもう諦めた方がいいんじゃ、と思わず出そうになった。
でもそんなこと言ったらエースはきっとムキになる。
エースは能力者で泳げないのわかってるはずなのに。
「ああ、絶対見つける」
「何かなくしたの?大事なもの?」
「なくした訳じゃねぇけど・・・どうしても見つけてェんだよ」
「・・・・海にあるの?」
「ああ、たぶんな」
エースの目に宿る意思は固そうで、
きっと私には止められない。
「もう・・・無理しないでよ」
こんなもんかな、とタオルを動かす手を止めた。
「ん、サンキュアコ」
エースの笑顔に力が戻ってほっとした。
・・・・・のも束の間だった。
次の日もエースは海に飛び込んだらしく、
結果は当然の如く溺れて助けられたとのこと。
話しを聞いてエースの部屋に行けば、
エースはベッドでぐったりしてた。
「・・・・よォ」
「よォ、じゃないでしょ。まったくもう」
「悪ィ」
私を見て力なく手を挙げたエースは反省してなさそうだ。
「反省してる?」
「・・・・してる」
「嘘」
「嘘じゃねェ。・・・アコのンな顔見たら反省だってする」
「じゃあ次からは海には?」
「気を付けて入る」
どん。
真顔で答えるエースにがっくりと肩を落とした。
・・・・・駄目だこりゃ。
「違うでしょ!?もう入りませんでしょ!?」
「アコの気持ちは嬉しいけどよ、入らねェ訳にはいかない訳があるんだよ」
「・・・・何」
「それは言えねぇ」
「そもそも何探してるの?」
「それも言えねぇ」
「・・・・・あのねエース。自分が能力者だってわかってる?」
「俺は諦めねェ」
「でもエースに万が一何かあったら、」
心配する私にエースが、
「何があっても俺はアコを置いてどうにかなったりしねェ。・・・約束する」
・・・私の言葉を遮って力強く答えた。
嬉しいけど・・・・!!
「ん」
短く言葉を紡いでエースが小指を出してきた。
・・・約束の、証。
「・・・・ん。約束ね、エース」
「おう」
エースの笑顔と、
重なった小指は温かかった。
更に次の日。
「まだまだァ!」
「いいぞエース頑張れ!」
・・・・エース?
何だか騒がしい声が聞こえたので甲板まで出てみると、
「・・・・何してるの?」
エースとサッチさんが、
というかエースが漁業らしきことをしていた。
・・・・うん、釣りではないよね。
だって網持って何かやってるし。
「これならアコも心配ねェだろ?」
「・・・網で探し物を掬い取るの?」
「ま、そんなとこだ。万が一海に落ちても隣にサッチが居りゃ安心だしな」
「俺に任せとけってんだ、アコちゃん」
・・・・イマイチ不安だけど。
まあ海に入られるよりはいいかな。
「そんなことよりアコ、今日は波が荒いからあんま出歩かない方がいいぜ」
「あ、うん」
エースの言う通り今日は船の揺れも大きい。
いやでもそんな時に漁業って。
「・・・・って、わっ」
言われた側から船が大きく揺れて、
それに対応出来ず身体が傾いた。
地面に衝突すると思って目を閉じたけど、
ぽす。
私の身体が収まったそこは、
「・・・無事か?アコ」
「・・・・あ・・・ありがと、エース」
エースの腕の中。
真剣な顔のエースと目が合って、
「っ漁業頑張ってね!」
何だか恥ずかしくなって慌てて逃げた。
・・・・・・ドキドキする。
熱い顔で部屋に入ろうとしたら、
「風邪かい?」
「え、あ・・・マルコさん」
マルコさんに声をかけられた。
「顔が赤いよい」
「いえ、ちょっと・・・っていうかマルコさんの方こそ眼鏡、珍しいですね」
滅多に見れない眼鏡姿のマルコさんは渋い顔をして、
「エースに厄介なことを頼まれちまってよい」
とぼやいた。
「厄介なことですか?」
「アコ」
「・・・・はい」
「エースのことは好きかい?」
・・・・・・・はい?
マルコさん真剣な顔で何聞くんですか。
「・・・好き、です」
「ならいいよい」
納得したように頷いてマルコさんは去って行った。
・・・・・何だったの?
6月の12日。
父さんに呼ばれて部屋に行ったら、
花束をプレゼントされた。
「うわぁ、素敵。有難う父さん」
オレンジ色の花。
「グラララ・・・!よく似合ってるぜ」
「何て花?」
「サンダーソニアとかいう花さ。あと数時間もしたらエースに取られちまうからな」
「・・・・・エースに?」
何でエース?っていうか・・・何で花束?
嬉しいけど。
「さあ、そろそろ部屋に戻んな。エースが待ちくたびれてるだろうからな!」
・・・・よくわからないまま自分の部屋の前に行ったら父さんの言葉通りエースが居た。
「エース?どうかした?」
「・・・その花、どうしたんだよ」
「あ、これ?父さんがくれたの。素敵でしょ?」
「何だオヤジか・・・びっくりさせんなよ」
「・・・・・何が?」
「そんなことよりアコ、今日夜12時に俺の部屋来れるか?」
「え、いいけど」
特に予定もないので頷いたらエースの目が輝いた。
「っしゃ!約束だぜアコ」
「何か作ってく?」
「いや、いい。絶対来いよ!」
「わ・・・・わかった」
エースの気迫に押されながら何度も頷いたらエースは嬉しそうに帰って行った。
・・・・・・・・・・皆変!!
そして12時ぴったりに、
私はエースの部屋へ。
「エースー入るよー」
声をかけたけど返事がない。
まさか居ない!?それとも寝てる!?
あれだけ必死に約束させておいて!!
「っもうエース!?」
ドアを開けて入ったら真っ暗で、
目の前でぽっ、ぽっ、と何個か火が点き始めた。
「・・・・エース?」
暗闇に少し慣れた目が捕らえたのは、
「・・・ケーキ?」
ケーキにささったろうそくに火がついたらしい。
「火、消せよアコ」
暗闇からエースの声がして、
言われた通りふ、とろうそくの火を吹き消した。
瞬間ぱ、と電気が点いた。
「あ・・・」
明るくなった部屋。
見えたのは、美味しそうなチョコレートケーキとカラフルな部屋の飾り。
そして、何処か照れくさそうなエース。
「誕生日おめでとう、アコ」
「・・・・・たん・・・・・じょび・・・・私誕生日だ!今日!!」
「ははっ、今気付いたのかよ」
そっか、だから父さんがお花!!
「今気付いた・・・・・!」
衝撃を受ける私に、
「ケーキはサッチからな。そんでコレが俺とマルコから」
これ、とエースから手渡されたそれは、
「真珠の・・・イヤリング」
「ホントはネックレス作ってやりたかったんだけど2個しか見つからなかったんだ、悪ィ」
「・・・・・ってもしかして海の探し物って」
「ああ、真珠探してた」
「2コ見つかっただけでも奇跡だよ・・・!信じられない」
信じられない、その為に自分が溺れるのも承知で海に入ってたなんて。
「それにこれ・・・手作り?」
「ああ、マルコに金具作ってもらった」
・・・マルコさんの言ってた厄介なこと、って。
「有難う・・・・エース・・・・・っ」
「つけてみろよ、アコ」
「う・・・うんっ」
部屋にあった鏡を見ながらつけて、
「どうかな・・・・・っ」
どうかな、と振り返った瞬間。
ちゅ、という可愛い音と、あたたかいものが唇に触れた感触がした。
・・・・目の前にはエースの顔。
「オヤジからもらった花、わかるか?」
「え?え・・・・っと、サンダーソニア」
「花言葉は祝福、祈りなんだってよ」
「そ・・・そうなんだ?」
「マルコからも許可もらったし、今夜は2人きりで祝おうな」
「う・・・・うん?」
「今日はめでてェ、アコ」
それからエースは、
私にケーキを食べさせてくれたり至れり尽くせりのおもてなしをしてくれて。
「来年も2人きりで祝わせてくれよな」
と笑った。
エースが、
海に落ちた。
「落ちたんじゃねェ、潜ったんだ」
「わざわざ溺れる為に?」
まだ少し力が入らない様子の濡れたエースの髪をタオルで拭きながら苦笑した。
「仕方ねェだろ・・・・見つけられねえんだ」
「探し物!?海の中に!?」
それはもう諦めた方がいいんじゃ、と思わず出そうになった。
でもそんなこと言ったらエースはきっとムキになる。
エースは能力者で泳げないのわかってるはずなのに。
「ああ、絶対見つける」
「何かなくしたの?大事なもの?」
「なくした訳じゃねぇけど・・・どうしても見つけてェんだよ」
「・・・・海にあるの?」
「ああ、たぶんな」
エースの目に宿る意思は固そうで、
きっと私には止められない。
「もう・・・無理しないでよ」
こんなもんかな、とタオルを動かす手を止めた。
「ん、サンキュアコ」
エースの笑顔に力が戻ってほっとした。
・・・・・のも束の間だった。
次の日もエースは海に飛び込んだらしく、
結果は当然の如く溺れて助けられたとのこと。
話しを聞いてエースの部屋に行けば、
エースはベッドでぐったりしてた。
「・・・・よォ」
「よォ、じゃないでしょ。まったくもう」
「悪ィ」
私を見て力なく手を挙げたエースは反省してなさそうだ。
「反省してる?」
「・・・・してる」
「嘘」
「嘘じゃねェ。・・・アコのンな顔見たら反省だってする」
「じゃあ次からは海には?」
「気を付けて入る」
どん。
真顔で答えるエースにがっくりと肩を落とした。
・・・・・駄目だこりゃ。
「違うでしょ!?もう入りませんでしょ!?」
「アコの気持ちは嬉しいけどよ、入らねェ訳にはいかない訳があるんだよ」
「・・・・何」
「それは言えねぇ」
「そもそも何探してるの?」
「それも言えねぇ」
「・・・・・あのねエース。自分が能力者だってわかってる?」
「俺は諦めねェ」
「でもエースに万が一何かあったら、」
心配する私にエースが、
「何があっても俺はアコを置いてどうにかなったりしねェ。・・・約束する」
・・・私の言葉を遮って力強く答えた。
嬉しいけど・・・・!!
「ん」
短く言葉を紡いでエースが小指を出してきた。
・・・約束の、証。
「・・・・ん。約束ね、エース」
「おう」
エースの笑顔と、
重なった小指は温かかった。
更に次の日。
「まだまだァ!」
「いいぞエース頑張れ!」
・・・・エース?
何だか騒がしい声が聞こえたので甲板まで出てみると、
「・・・・何してるの?」
エースとサッチさんが、
というかエースが漁業らしきことをしていた。
・・・・うん、釣りではないよね。
だって網持って何かやってるし。
「これならアコも心配ねェだろ?」
「・・・網で探し物を掬い取るの?」
「ま、そんなとこだ。万が一海に落ちても隣にサッチが居りゃ安心だしな」
「俺に任せとけってんだ、アコちゃん」
・・・・イマイチ不安だけど。
まあ海に入られるよりはいいかな。
「そんなことよりアコ、今日は波が荒いからあんま出歩かない方がいいぜ」
「あ、うん」
エースの言う通り今日は船の揺れも大きい。
いやでもそんな時に漁業って。
「・・・・って、わっ」
言われた側から船が大きく揺れて、
それに対応出来ず身体が傾いた。
地面に衝突すると思って目を閉じたけど、
ぽす。
私の身体が収まったそこは、
「・・・無事か?アコ」
「・・・・あ・・・ありがと、エース」
エースの腕の中。
真剣な顔のエースと目が合って、
「っ漁業頑張ってね!」
何だか恥ずかしくなって慌てて逃げた。
・・・・・・ドキドキする。
熱い顔で部屋に入ろうとしたら、
「風邪かい?」
「え、あ・・・マルコさん」
マルコさんに声をかけられた。
「顔が赤いよい」
「いえ、ちょっと・・・っていうかマルコさんの方こそ眼鏡、珍しいですね」
滅多に見れない眼鏡姿のマルコさんは渋い顔をして、
「エースに厄介なことを頼まれちまってよい」
とぼやいた。
「厄介なことですか?」
「アコ」
「・・・・はい」
「エースのことは好きかい?」
・・・・・・・はい?
マルコさん真剣な顔で何聞くんですか。
「・・・好き、です」
「ならいいよい」
納得したように頷いてマルコさんは去って行った。
・・・・・何だったの?
6月の12日。
父さんに呼ばれて部屋に行ったら、
花束をプレゼントされた。
「うわぁ、素敵。有難う父さん」
オレンジ色の花。
「グラララ・・・!よく似合ってるぜ」
「何て花?」
「サンダーソニアとかいう花さ。あと数時間もしたらエースに取られちまうからな」
「・・・・・エースに?」
何でエース?っていうか・・・何で花束?
嬉しいけど。
「さあ、そろそろ部屋に戻んな。エースが待ちくたびれてるだろうからな!」
・・・・よくわからないまま自分の部屋の前に行ったら父さんの言葉通りエースが居た。
「エース?どうかした?」
「・・・その花、どうしたんだよ」
「あ、これ?父さんがくれたの。素敵でしょ?」
「何だオヤジか・・・びっくりさせんなよ」
「・・・・・何が?」
「そんなことよりアコ、今日夜12時に俺の部屋来れるか?」
「え、いいけど」
特に予定もないので頷いたらエースの目が輝いた。
「っしゃ!約束だぜアコ」
「何か作ってく?」
「いや、いい。絶対来いよ!」
「わ・・・・わかった」
エースの気迫に押されながら何度も頷いたらエースは嬉しそうに帰って行った。
・・・・・・・・・・皆変!!
そして12時ぴったりに、
私はエースの部屋へ。
「エースー入るよー」
声をかけたけど返事がない。
まさか居ない!?それとも寝てる!?
あれだけ必死に約束させておいて!!
「っもうエース!?」
ドアを開けて入ったら真っ暗で、
目の前でぽっ、ぽっ、と何個か火が点き始めた。
「・・・・エース?」
暗闇に少し慣れた目が捕らえたのは、
「・・・ケーキ?」
ケーキにささったろうそくに火がついたらしい。
「火、消せよアコ」
暗闇からエースの声がして、
言われた通りふ、とろうそくの火を吹き消した。
瞬間ぱ、と電気が点いた。
「あ・・・」
明るくなった部屋。
見えたのは、美味しそうなチョコレートケーキとカラフルな部屋の飾り。
そして、何処か照れくさそうなエース。
「誕生日おめでとう、アコ」
「・・・・・たん・・・・・じょび・・・・私誕生日だ!今日!!」
「ははっ、今気付いたのかよ」
そっか、だから父さんがお花!!
「今気付いた・・・・・!」
衝撃を受ける私に、
「ケーキはサッチからな。そんでコレが俺とマルコから」
これ、とエースから手渡されたそれは、
「真珠の・・・イヤリング」
「ホントはネックレス作ってやりたかったんだけど2個しか見つからなかったんだ、悪ィ」
「・・・・・ってもしかして海の探し物って」
「ああ、真珠探してた」
「2コ見つかっただけでも奇跡だよ・・・!信じられない」
信じられない、その為に自分が溺れるのも承知で海に入ってたなんて。
「それにこれ・・・手作り?」
「ああ、マルコに金具作ってもらった」
・・・マルコさんの言ってた厄介なこと、って。
「有難う・・・・エース・・・・・っ」
「つけてみろよ、アコ」
「う・・・うんっ」
部屋にあった鏡を見ながらつけて、
「どうかな・・・・・っ」
どうかな、と振り返った瞬間。
ちゅ、という可愛い音と、あたたかいものが唇に触れた感触がした。
・・・・目の前にはエースの顔。
「オヤジからもらった花、わかるか?」
「え?え・・・・っと、サンダーソニア」
「花言葉は祝福、祈りなんだってよ」
「そ・・・そうなんだ?」
「マルコからも許可もらったし、今夜は2人きりで祝おうな」
「う・・・・うん?」
「今日はめでてェ、アコ」
それからエースは、
私にケーキを食べさせてくれたり至れり尽くせりのおもてなしをしてくれて。
「来年も2人きりで祝わせてくれよな」
と笑った。