短編①
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『私、シャンクスと結婚する』
プロポーズされてから一ヶ月と少し。
あることがきっかけでそう決めて、
それからは改めて指輪を受け取ったり役所に婚姻届を提出したりと忙しくなった。
「今までお世話になりました」
勤めていた職場にご挨拶。
「寂しくなるわね。でも寿退社なら仕方ないものね・・・仲良くやるのよ?」
「あはは、有難う御座います」
挨拶したい人には全員済ませて、もう来ることはない会社を出た。
決していい会社とは言えなかったけど、それでも仲良くしてくれた人も居たし、やりがいがある仕事だった。
少しだけ寂しい。
なんて思い出に浸っていると、
「アコ!」
聞きなれた愛しい声が耳に届いた。
声の方向に目を向けると、そこには高級車に乗ったシャンクス。
「シャンクス?」
シャンクスはドアを開けてくれて、目線で乗れよ、と合図する。
私は戸惑いながら助手席に乗り込んだ。
「挨拶は終わったのか?」
私がシートベルトを締めたのを確認するとシャンクスは車を動かした。
「うん。シャンクスはどうしてここに居るの?仕事は?」
シャンクスは大手会社の社長で。
移動手段は車を使うけど仕事中は自分で運転することはない。
「ベンに追い出された」
「は!?」
「鼻が伸びてる、口元がだらしない、これじゃ仕事にならん、だと」
「・・・・何やってんの」
社長がそれで大丈夫なの、会社。
「今日はアコが長く勤めてきた職場と最後の別れの日だろう?そういう日くらいは側に居てやれってことさ」
「・・・・ふぅん」
私にはソレが冗談なのか真実なのかはわからないけど、ベンさんとシャンクスは何処か通じ合ってるとこがあるから。
案外そうなのかもしれない。
「せっかくだしこのまま飯でも食いに行くか?」
「んー」
「他に行きたいとこがあるならそこに行くが」
「ん・・・特にない、かな」
「・・・・アコ?」
「ん?」
特にお昼前だけどまだお腹はすいてないし、行きたいところもない。
・・・というか、未だに仕事を辞めた実感が湧かなくて不思議な感じ。
「何だ、マリッジブルーってやつか?」
運転しながら苦笑するシャンクス。
別にシャンクスに不安がある訳じゃない。
それこそ小さい時から一緒に居て。
・・・・カッコ良くて優しくて強くて。
私のこと以外では心も広いし、
家に帰ればたまに料理をしてくれたりもする。
今では大手会社の社長で。
むしろ不安なのは、
「本当にシャンクスでいいのか、って考えてる訳じゃないよ?むしろ逆」
「逆?」
「シャンクスにとって私でいいのかなって」
社長の奥さん、というものが務まるのか。
「・・・・幸せにする、って口約束だけじゃ不安か?」
「あ、それは無理だと思う」
私がさり気なく言うと、温厚な彼には珍しく少しだけむっとした表情を見せた。
「理由は?」
「だって私今でも幸せだもん。これ以上幸せにはなれない」
シャンクスは前を見据えたまま、一瞬目を見開いて、それから私の大好きな優しい笑みを浮かべた。
「可愛いこと言ってくれるなァ。だがなアコ、俺は欲張りだってこと忘れてねえか?」
「へ?」
「幸せにするさ。今以上に、な」
・・・・・こんな時、シャンクスの顔を正面から見れないのが少し寂しい。
きっとカッコイイ顔なんだろうなあって思うから。
横顔でも十分カッコイイんだけど。
「あ、ちょっとコンビニ行ってもいい?喉渇いちゃった」
「了解」
シャンクスにお願いして、近くのコンビニに停めてもらった。
シートベルトをはずして出ようとすると、
「なァアコ・・・少しデカくなったか?」
「・・・・何が?」
嫌な予感はしてた、けど。
シャンクスは私の質問には答えず、
すっと手を伸ばした。
・・・・むに、と掴んだのは私の胸。
「ちょっ、シャンクス!」
「やっぱデカくなってるな。この間のマッサージのおかげか?」
「・・・・馬鹿」
にやにやしながらいつまでも離れないシャンクスの手をぺし、と軽く叩いて、私は車を出た。
そして飲み物を買って戻ると、
「・・・・何これ」
さっきまで私が居た助手席に、大きな花束。
「気に入らなかったか?」
「退職祝い?」
花束を手に持って、改めて座りなおす。
シャンクスは不敵に笑って、
「いや?アコが俺の物になった祝いだ」
そんなことを言うもんだから、
「馬鹿。・・・好き」
車の中で2人、静かに唇を重ねた。