短編②
夢小説設定
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夢の中にお頭が出てきた。
全体的な夢の感想は、
「・・・・変なの」
「頭痛ェ・・・!」
甲板を掃除中、そんなことを言いながら頭を押さえたお頭の姿が見えた。
二日酔い、どころの話じゃないんだろうな。
夢の中に出てきたお頭は、
強くてカッコ良くて優しかった。
お酒も飲むけど嗜み程度で。
書類もちゃんとやってた。
・・・・・・・・・・・・それでも、
何でだろう。
「お水、どうぞ」
「おっアコ!悪いな、助かる」
仕方なくお水を汲んで来て渡せば、
へらりと笑いながらそれを受け取るお頭。
「いつものことですから」
そう、いつものこと。
「そうだな、いつもアコは俺に優しいもんなァ」
しみじみと呟くお頭に恥ずかしくなる。
「何でお頭はいつも二日酔いなんですかね」
「アコに優しくして欲しいからだな」
「・・・・・ベンさんとこ行ってきます」
そう言ってくるりと背を向ければ、
がし、と肩を捕まれた。
そして1本しかない片腕に抱き寄せられた。
「他の男のとこになんか行かせねぇよ」
・・・・・・真剣なその顔が今朝の夢と重なった。
「・・・・今日、夢の中にお頭が出てきたんです」
「俺が?」
「すごく強くてカッコ良くて、優しかった」
「現実でもそうだろ?」
「・・・・・・お酒もあんまり飲まないし、しっかり仕事もしてました」
「・・・・・げほ」
わざとらしく咳をするお頭が少し笑えた。
そして近すぎる距離に心臓が落ち着かないまま、私は続ける。
「でも私、夢の中でお頭のこと、ああ何か嫌だなって思ってたんです」
何でだろう、
好きじゃないと思った。
こんなのお頭じゃない。
私はこの人について行きたいと思ったんじゃない、って。
「そりゃ良かった」
お頭はにこにこと嬉しそうに笑った。
「・・・良かった、ですか?」
「そんな俺を好きになるようなアコじゃなくて良かったってことだ」
「・・・・・・お頭反省してないですね」
「いや、まあ反省はしてる。すまん」
夢の中のお頭ならきっとこんな風に謝ることはないんだろう。
というか謝るようなことをしないんだろうな、と思う。
でも私はこうやって謝ってくれるお頭を好きだなって思ってしまうのも事実で。
「だが夢の中の俺にはアコはやれねえな」
不敵に笑うその顔も。
ちゅ、と額に落とされる酒臭い口付けも。
「・・・・・・私も、夢の中のお頭を好きにならなくて良かったです」
「現実の俺の方がカッコイイだろ?」
「夢の中のお頭はつまんないです」
やっぱりお頭は、
こうでなきゃ。
「好きなだけお酒飲んで、飲みすぎて後悔するくらい人生楽しんでるお頭が好き、ですから」
「・・・アコ」
「はい?」
「可愛いな」
「・・・・・・・・・そっか」
「ん?」
満面の笑みを浮かべたお頭を見て、わかった。
夢の中のお頭との最大の違い。
夢の中ではあんな風に楽しそうに笑ってなかった。
優しく笑ってはくれたけど、でもそれだけじゃ嫌。
「これからもずっとそんな風に笑ってて下さいね、お頭」
出来たら私の隣で。