短編②
夢小説設定
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「う・・・・・・・くっ!」
上へ上へ、必死に手を伸ばす。
それでも届くどころか、目当てのものには掠りもしない。
「・・・・・・・・ん、っもう!!」
苛立ちを抑えて再びチャレンジ。
もう何回目になるかわからないジャンプ。
結果はわかってる。
でも、やるっきゃない!
「・・・・・・・とぅッ!」
全力で飛び上がってはみた、けど。
ほんの少し掠っただけに終わった。
「・・・・・はは」
もう笑うしかない。
サッチさんに頼まれて取りに来た調味料。
なんっで!!
何でこんな高いとこにあるの!?
いじめ!?
いい加減諦めて戻ろうかと考えたとき、
後ろに誰かが立った気配がした。
振り向く前に、
今まで取ろうとしていた調味料が、すっと取られた。
「え、」
「これだろ?」
私がずっと欲しかった調味料を手にとって、エースは爽やかに立っていた。
「・・・・・・エース」
「戻りが遅ェからサッチが様子見て来いって言うからよ」
「・・・・・・・・・・背が高いって・・・・」
「・・・・おい?」
「うわーん!有り難う!」
エースから調味料を受け取って、半泣き状態で倉庫を出た。
背が高いって羨ましい!!
私の苦労を一瞬で!
でも助かったからお礼は言うけど!!
でもでも悔しい!!!
背が高いからって・・・・・!
「背が高いのが何さ!」
そう叫んだ瞬間、
隣で寝ていたエースが目を覚ました。
私はお昼ご飯の海老ピラフを咀嚼しながら、
「牛乳飲んだけどこれが精一杯だったんだからね!」
目を丸くするエースに言い放つ。
「何だよ急に」
私はごっくんとピラフを飲み干して。
「背がっ・・・・背が高いって・・・!!」
「高いって?」
「う・・・・・・・・・・・・羨ましい!」
再び叫ぶ。
だって羨ましいんだもん!
「そっかァ?まあ便利ではあるけどな」
「でしょ?」
エースは背が高いから、私の気持ちなんてわかる訳ないんだよ・・・!
「でもよ、さっきみたいなことがあったら俺を呼べばいいだろ?」
「え、でも。・・・・・・・いいの?」
「いつでも呼べって。助けてやるよ」
ドキ、と心臓が動く。
エースに他意がないんだろうとは思うけど。
・・・・エースと同じくらいの身長だったら、こんな風にドキドキしなくて済むのに。
「・・・アリガトウ。スゴク嬉しいワ」
「おい。何で棒読みなんだよアコ」
それとも素直に喜べない私は性格が悪いのかな。
何か色々考えてたら悲しくなってきた。
幸い今日は後片付けなくていいし。
「ご馳走様でした」
「って、ちょっと待てよアコ」
「エースの気持ちはほんとに嬉しいよ、ありがとね」
精一杯の笑顔を作って、私は立ち上がった。
図書室でも行って背が高くなる本でも探そうかな、と考えながら廊下を歩いてると、
後ろから何かに襲われた。
「てきしゅっ・・・・!!」
ってそんな訳ないよね!?
そんな急に敵!?
慌てて首だけ後ろを向けると、
「・・・・・・・・・・・エース?」
少し怒ったような顔のエースが私を後ろから抱きしめていた。
「羨ましいだろ?」
「・・・・・・・・・・・・何それ」
「お前ちっちゃいからすっぽり入るんだよなー」
むかむかと湧き上がる怒り。
「離して」
「やだ」
「ちっちゃいからって馬鹿にしないで」
「してねェよ」
回されたエースの腕には力が入ってて、抵抗は無駄だと知る。
何なの、エースは何がしたいの?
「じゃあ何?」
「・・・・・そんなに気にすることか?」
「・・・・気にする」
はぁ、と耳元でエースの呆れたようなため息が聞こえた。
「や、ちょっくすぐったい」
「・・・・・・可愛い、と思うけど俺は」
「・・・・・・何が?」
「そういう反応するのが。今この身長差だからそうなった訳だろ?」
「・・・・・・・うん、まあそうだね」
エースが何言いたいのかサッパリなんだけど、話を続ける。
「俺的には満足だし」
「いやいやいや!私的には不満だけど!」
「じゃあ聞くけどよ、こうされんの嫌か?」
まじまじと聞かれて、考えてみる。
筋肉質の大きな身体にすっぽりと包み込まれて、
安心感。
あったかいし、嬉しい。
「・・・・・・・・・嫌じゃない」
「な?いいだろ?」
「・・・・・身長関係ある?」
「アコが背高かったらこんな風に出来ねェんだぜ?」
「・・・・・・・・・・うん、そうだね」
言われてみればそうかもしれない、なんて思えてきた。
・・・・・・・・単純だな私。
でも、うん。
「また背が低いのやだな、って思ったら・・・抱きしめてくれる?」
「抱きしめてやるよ、いつでも。嫌ってほど」
「・・・・・・・なら背が低いのも、いいかも」
「な」
「うん」
いいかもしれない。