短編②
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「世の中にお金で買えないものがあると思う?」
「ある」
耳に入ってきた、
ドラマの台詞。
『世の中にお金で買えないものなんてねえんだよ!』
それを聞いてふと思い至った。
幼馴染でお隣さんのシャンクスの家に作りすぎたカレーを持って行ったら、
まあお茶でも飲んで行けよ、と。
上がった家で聞こえてきた。
「へー例えば何?」
「人の心、とかな」
「・・・・・・・・・・シャンクスがそんなこと言うとは思わなかった」
社長をしているお金持ちのシャンクスのこと、
ない、って言うかなと思ってた。
「実際苦労してんだ、今」
「そうなの?」
取引先とか、お仲間さんのことかな。
「お前は?どう思う?」
「たいていのものは買えると思うよ。人の気持ちも含めて」
「そうか?俺は惚れた女の気持ちを買えないんで苦労してるんだが」
「でもほら、美味しいもの奢ってくれたりアクセサリーとかくれたら喜ぶでしょ?」
「喜んではくれるだろうが、手に入る確約はないな」
「いい人!ってなって、そのうち好きになってくれるんじゃない?」
「そんな女ばっかじゃねえってことだ」
はあ、と珍しく弱気なため息を吐くシャンクスは流石に可哀相に見えた。
「でもほら、シャンクスには社長って言う権威もあるし!」
「そんなの関係ないって顔してる」
「・・・・・・・・そうなの?」
ていうかシャンクス、好きな人居たんだ。
ちょっと、ショックだなあ。
小さい頃から好きだった身としては。
ま、言えない私が悪いんだけど。
「な、買えないだろ」
「だね。まあお金で買えない人なら心で勝負だ!」
元気付けるように言えば、
シャンクスは苦笑を浮かべてお茶を啜る。
「・・・・・・・・・そろそろ、限界なんだ」
「ん、何が?」
「誰かにとられちまう前に俺のモンにしたい」
「・・・・どんな人なの?」
シャンクスにそこまで言わせるなんて。
「優しくて、強がりで・・・・そうだな、料理は得意だ」
「へーいいね。どんな料理?」
料理なら私も得意なのに。
「カレー」
・・・・・・・・・・カレーなら私も得意なのに。
でもそっか、それなら私もうカレー持って来れないなあ。
今まで結構持って来てたんだけど。
そんな私の気持ちを知らず、シャンクスは続ける。
「よくカレーを作りすぎたって言って持って来てくれるんだ、隣だからな」
「・・・・・・・え、」
「ちなみにやれることは全部した。他に俺はどうすればいい?」
「え・・・・・・・・えーと」
「・・・・・・・・なぁ、教えてくれ」
言いながら不敵な笑みで私をじっと見つめるシャンクスに心臓が大きく跳ねた。
もしかして、それって、
私のこと・・・・・って思っても、いいですか。
もし、そうなら。
「・・・・・・もしかしたら、その人はお金で買えるかもよ?」
「ほう、興味深いな」
ドキドキ鳴る心臓の音を聞きながら私は続ける。
「ただすっごく高いと思う」
「どれだけでも払うさ、手に入るなら」
言葉と同時に私の手に重なった、シャンクスの手。
・・・・・・いつの間にか、こんな大きくなってた。
私の中の、存在も。
「結婚式は人並みでいいとして、子供は2人欲しいでしょ?それから大学までは行かせたいし」
「・・・・・・それくらい余裕だな」
「老後は習い事もしたいんじゃないかな、と思うけど」
「させてはやれるが反対だな、俺は」
「何で?」
「老後は2人でゆっくり過ごしたい」
うーん、それも悪くないかもしれない。
なんて思うけど。
まだ2人とも、肝心な部分に触れてない。
「ゆっくり旅行とか?」
「そうだな、それもいい」
ここでふとした疑問が湧く。
「・・・・・・・・・・シャンクスはお金で買えるような人でいいんだ?」
「どんな手を使っても手に入れられるんならいい。・・・・そもそも、そんな女じゃないから惚れたし苦労もしてるんだがな」
「シャンクスにそこまで言わせるなんてすごいね、その人」
さすがにちょっと、シャンクスの思う相手が自分である自信なくなってきた。
でもシャンクスは、
「アコのつもりで言ってたんだが、お前は違ったのか?」
平然とそんなことを言う。
「・・・・・かなぁ、とは思ったけど」
「それで、どうなんだ?」
どうなんだ、っていざ言われると緊張してきた。
「シャンクスの言った通り、だよ」
「・・・・俺の?」
「私はお金で買われるような人間じゃないから。気持ちでしか、心は動かないけど?」
内心心臓がどうにかなっちゃいそうな程うるさい中、
精一杯の強がり。
たぶんシャンクスはそれを見抜いて、優しく笑った。
「ずっと好きだっだんだ、アコが。俺と結婚しよう」
「・・・・・・いきなりそこまで飛ぶ?」
「お前だって子供がどうのって話ししてただろう」
「あ、そっか」
「どうしてもっていうなら習い事もさせてやる。ただし、俺も一緒に行く」
「いや、習い事くらいで1人で行かせ、」
「駄目だ」
・・・・・・・・・・さいですか。
何か今から先が思いやられる気もするけど。
「じゃあ・・・・一緒に行こっか」
「それは、承諾ととっていいのか?」
「うん、やっぱお金じゃ買えないものもあるねー」
「・・・・・・・・おい?」
困惑顔のシャンクスに思い切り笑って、
「私もずっと好きだったよ、シャンクスが社長になるずーっと前から」
少しだけ赤くなったシャンクスの頬にキスしてやった。
「・・・・ほらみろ、金じゃ買えないものもあった」
そう言ってシャンクスは、
仕返し、とばかりに私の唇に、
そっと口付けた。
その照れたような、
くすぐったい笑みは、
お金じゃ絶対買えないもの。