短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
エースと恋人になって、
同棲を始めてから早数か月。
今までは誤魔化せてたけど、
今日は無理そう。
・・・薬が効かない。
薬、何時間前に飲んだっけ。
確かエースが仕事に行くのを見送って、
それからお腹痛くなって。
すぐに飲んだ。
今はお昼だから。
・・・・・もう4時間もたってる。
もう1回薬飲めば効くかな。
正直お腹痛くてそれどころじゃないんだけど、
何か食べないと今薬だけ飲んだら胃が荒れちゃうし。
そういえば、と戸棚を探ればエースがこの間、
『美味いんだコレ』と買って来てくれたお煎餅が1枚残ってる。
エースの言う通りさくさくで美味しかった。
軽い食感だし、これ1枚なら何とか食べられる。
「・・・・ぅー」
痛みを我慢しながら何とか食べて、
すぐに朝にも飲んだ薬を飲んだ。
女性ならではの、痛み。
月に1回のお客様、と呼んでたりもする。
もう心の中は痛いしかない。
お煎餅美味しいとか思う余裕はない。
ゆっくりと深呼吸しながらお腹をさすって横になる。
早く・・・・早く効いてお願い。
ああもう、
こんなんじゃ買い物にも行けない。
・・・・痛いよぅ。
は、と目を覚まして慌てて時計を見たらもう夜。
嘘!?私寝てた!?
お腹・・・は痛み消えてる、良かった。
でももう18時。
どうしよう買い物行ってないのにエースがもうすぐ帰って来ちゃう。
仕方なく食材をチェックすると、
「・・・・・カレーなら何とか」
なる、かも。
お肉は少ないけど。
ごめんねエース、と心の中で謝罪しながら急いでお米を研いで炊飯器にセットして。
玉ねぎを切ってる時に再びお腹がずきんと痛んだ。
・・・・また、来た。
「・・・・っ、ぅ・・・ぁ・・・」
ぁぁぁああ!痛い!!
思わずお腹を押さえてしゃがみこんだ。
「アコ?帰ったぜ」
その時ドアの開く音がして、エースが帰って来たことがわかった。
・・・・っ、どうしよう痛くて動けない。
「アコ?・・・・どうした!?」
ひょこっと台所に顔をのぞかせたエースが私の異変に気付いて、駆けつけてくれた。
「ごめ、エース・・・お腹、痛くて・・・っぅ」
「待ってろアコ!今119番すっから!」
「ちが、いいの・・・っ大丈夫、だから・・・」
「無理しなくていいから、後は俺に任せろ」
「でも夕飯まだ、うぁ・・・っぁいっ!!」
「救急車が嫌なら俺がおぶって行く!」
「くすり・・・っ!!そこに、あるから」
「薬?これか!?」
何とか頷いたら、
「待ってろ、すぐ飲ませてやる」
エースが痛み止めの薬と水を、さっと自分の口に放り込んだ。
え、私が欲しいのに・・・・!?
驚く私の唇にエースの唇が重なった。
「ん・・・・っ」
エースの口から私の口に移された水と薬。
ごっくん、と喉を通った。
「・・・・っは、ん・・・・」
「今ので大丈夫なんだな?」
「・・・・・う、ん」
「本当に病院行かなくていいのか?」
「薬・・・飲んだから、効く・・・と思う」
「今日ずっと具合悪かったのか?何で俺に早く言わねェんだ」
ぎゅっと抱きしめてくれたエース。
「昼間も薬、飲んで・・・・っぅ、良くなったから・・・っぐ」
「・・・変な病気とかじゃねェよな?」
「毎月来るの・・・」
「毎月!?」
・・・少し気まずいんだけど、エースになら言ってもいいかな。
「・・・生理」
「あ・・・・・・悪ィ、気づかなくて」
エースは一瞬目を点にして、
ほっとしたように息を吐いた後気まずさそうに呟いた。
「っは・・・・ぁ、・・・ぅ」
「辛いか?・・・・と、とりあえずベッドに横になるか?」
「・・・・ぅ、ん・・・ぁぁっ」
「歩くの辛いよな?・・・あーそしたら、アレだ、ベッドまで連れてってやるからな!」
「・・・エース、ごめ・・・」
「他にして欲しいことあったら言えな」
言いながらエースが私をお姫様抱っこしてくれて、
そのまま寝室のベッドにゆっくりと優しく降ろしてくれた。
「・・・・っはぁ、は・・・・」
「寒くねェか?もっと毛布いるか?」
「・・・へ、き」
「・・・・アコ」
私を心配そうな顔で覗きこんでくれるエース。
「ちょっと待ってろよ」
言ってエースは部屋を出て行ってしまった。
・・・・・痛いのと寂しいのとで、
涙が出そう。
「・・・・・ぅぐ・・・・」
・・・・やっぱ痛い。
「アコ!」
「エース・・・・?」
「少し動けるか?」
「え、うん」
エースは私の身体を優しく転がして、
「ぁ・・・・」
腰に温かいもの。
「カイロ、腰に貼っとくといいってどっかで聞いた。・・・・違うか?」
「ううん、違わない・・・・ありがと・・・・」
何処かほっとするあったかさ。
・・・でも、
「・・・っつぅ・・・・!」
痛みは変わらずやってくる。
「・・・っあと何したらいいんだ!?薬は飲んだだろ、腰もあっためてるし・・・」
「・・・も、大丈夫だから・・・側に居て」
「毎月・・・こんな辛い思いしてたのか?1人で」
「こんなに酷いの久しぶり・・・」
「そっか・・・・」
「・・・・うー」
心配してくれるのは嬉しいけど、申し訳ない気持ちでいっぱい。
「まだ・・・効かねェか」
「ん・・・・」
ふと温かくて優しい何かがお腹の上にそっと乗って、
ゆっくりと動き出した。
「・・・エース?」
それは、エースの手で。
「どっどうだ?少しは楽に・・・ならねェ、よな。そんな簡単には・・・」
少しだけ赤い顔。
・・・エース、照れてる?
あ、っていうか・・・。
「・・・・少し、痛みが消えた」
「ほんとか!?」
「不思議・・・」
本当に不思議なことに、エースがさすってくれた瞬間から少し痛みが和らいだ。
「い・・・痛かったら言えよ?」
「ん・・・大丈夫。気持ちいい」
「・・・・・おま、それは・・・」
「・・・何?」
「・・・・何でもねェ」
変な、エースと思える余裕も出て来た。
同時に可愛い、とも。
「・・・・っはぁ」
でもまだ痛む。
「・・・・・・・・・・・・アコ」
「ん?」
「・・・悪ィ」
「何でエースが謝るの・・・?」
「いや何となく。・・・っつーか、これから、する」
「え?」
聞き返す間もなくちゅ、とエースの唇が一瞬だけ私の口に触れた。
「・・・ごめんな、アコが大変な時に」
「ううん、嬉しい」
話せる程になってきた。
すーっと痛みが消えていくのがわかる。
「エースの手は魔法の手みたい」
「魔法?」
「子供みたいなこと言ってるなって思ってるでしょ?・・・でも、ホントに痛みが消えていくの」
「ホントに俺にそんな力があるんなら、アコの為だけに使う」
「私だけ?」
「ああ、アコだけの為に。約束」
小指と小指が絡んで、
何だかくすぐったい。
「何か・・・たまにはお腹痛くなるのもいいかも」
「いい訳ねェだろ?」
「だって・・・エース優しくしてくれるし」
「・・・悪かったないつもは優しくなくて」
「あははっ、ごめんね。いつも優しいよエースは。今日はいつも以上に優しいの」
「・・・具合悪くなったら無理しないで言えよ」
「うん、ありがと」
「あと俺に何が出来る?・・・何も知らねェから、俺」
「側に居てくれればそれで平気」
「出来ることなら代わってやりてェよ・・・」
「・・・そしたら私が辛いから駄目」
「俺はいいんだ、痛いのくらいどうってことないから」
「私の手は魔法使えないから」
「あー・・・まぁ、いつも冷たいもんなアコの手」
「エースの手はあったかい」
「・・・・おう」
話しながらずっと優しくさすってくれるエースの手。
大きくてあったかくて。
落ち着く。
ふとエースが無言になったので見てみると、
無心で私のお腹をさすってる。
「・・・・エース?」
名前を呼ぶとはっとして、
「べっ別に下心とかねェからな!?」
言い訳する子供のようにそんなことを言うもんだからおかしくて。
「ふふっ、あははっ、わかってる」
「・・・・元気になった、みたいだな」
「うん、だいぶ楽になった。まだちょっとだるいけど」
言葉に嘘はなくて、本当に痛みはだいぶ消えた。
・・・もう動ける。
でもそんなこと言ったらエースが離れちゃう気がして。
もう少しこんなエースを見ていたい、そう思った。
・・・・あれ、私何か忘れてない?
「・・・・・・あー!!!」
思い出した!
「どっどした!?やっぱまだ痛ェか!?」
「ごめんエース・・・・夕飯」
「・・・夕飯?」
「まだ途中だった、玉ねぎ・・・切りかけ」
「今日飯何?」
「・・・・買い物、行ってなくて。お肉少な目のカレーライス」
ごめんなさい、ともう1回謝ったら、
「カレーなら俺の大好物だろ?」
エースがにし、と笑ってくれた。
「有難う・・・すぐ作るね」
「まだ寝てろって」
「でも、」
もう痛みはないのに。
「俺にはわからねェ痛みだし・・・出来ることは少ないからやれることはやる」
「・・・じゃあ、お願いしていい?」
「ああ、任せとけ」
エースは料理が上手だから、楽しみ。
エースは、
「また辛くなったら遠慮なく呼べよ?」
と言い残して、台所に行った。
・・・・・何か、お腹すいたかも。
「アコ、食えそうか?」
「わ、いい匂い」
カレーのいい匂いが食欲をそそる。
起き上がってカレーを受け取ろうとしたら、
「ほら、食わせてやるよ」
「っいいよ自分で食べられる!」
「ん」
「・・・・うー」
重病人じゃないのに恥ずかしい。
でも、ほかほかのご飯に、たっぷりかけられた美味しそうなるー。
痛みが治まってしまえば普通通りの体調なのでお腹もすいてる。
「あー・・・・ん」
口に入れたカレーは熱々で、ちょっと辛いけどコクがあって美味しい。
「美味いか?」
「すっごく美味しい。・・・やっぱりエースの手は魔法の手ね」
「アコ限定の、な」
「身体あったまるからこれで明日も大丈夫」
「明日も・・・・なのか」
「1日じゃ終わらないの」
「・・・明日も痛かったら言えよ?・・・さすってやるから」
何処か照れたようにエースが言って、
ちゅ、と頬に口づけてくれた。
「はい、エースも」
「・・・・俺も?」
食べさせてもらってばかりじゃね、と今度は私からエースにカレーをすくって差し出した。
「・・・・ちっと辛くねェ?大丈夫だったか?・・・腹に刺激あると良くないだろ?」
何処までも私を心配してくれるエース。
・・・私は幸せものだなぁ。
「いいの、痛くなったらまたエースにさすってもらう」
「・・・・痛くなくてもいつでも言えよ」
「はーい」
エースの魔法の手で、
私の痛みは消えていく。
エースの優しさで、
私は幸せになれる。
そんなことを実感した1日でした。
後日、エースが真っ赤な顔ではみちつしょうが入りの紅茶を淹れてくれた。
身体も心もあっためてくれる、
私だけの魔法使いさん。