短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私最低なの」
「・・・・いきなりどうした?」
革命軍の参謀総長、サボが怪訝な顔で今まで飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置いた。
・・・・ナンバー2と呼ばれる、私の恋人。
「今日、夢見が悪くて」
「何だ、夢の話しか」
ほっとしたようにサボが再びカップに口づけた。
「・・・サボ冷たい」
「夢だろ?気にすることねェよ、そんなの」
「ちゃんと聞いてよ、サボ」
「どうせ俺達が危険な目にあったーとかだろ?」
図星。
ズバリ的中。
でも。
「・・・・そうだけど、それだけじゃないの」
「アコの身に何かあったとか?」
「・・・・私は無事だった」
「なら問題ないだろ?」
「サボが撃たれたの、私をかばって。・・・大怪我、して」
「あり得ない話しだ。だから忘れるに限る、だろ?」
わかってない、サボは優しいから。
優し過ぎるから。
「・・・・夢の中で私、自分が無事だったことに安心してたの」
そこまで言ってサボは私の気持ちを理解したようで、苦笑を見せた。
「それで最低?」
「・・・・・最低。サボがやられて重傷なのに、血流してるのに私は私のことだけしか考えなかった」
そんな自分が嫌いになった。
「俺は夢の中の俺によくやったって言いたいけどな。アコを守ったんだろ?」
「・・・・うん」
「俺は簡単に死なないから少しくらいやられても平気だし、目の前でアコが傷つくよりいい」
サボは私の髪の毛を優しく撫でてくれる。
大丈夫だ、と言うように。
その気持良ちさがあれは確かに夢だった、と思わせてくれる。
「・・・私だって目の前でサボが傷つくのは嫌」
「俺の方が嫌だ」
「私の方が嫌」
「俺」
「私」
2人で数秒睨み合って、
「・・・・・・大好き、サボ」
根負けした私が呟いたら、
「・・・俺も、アコが好き」
サボも笑ってくれた。
「好きなのに・・・・何であんなこと思っちゃったんだろう私」
「夢なんてそんなもんだ。それで自分を責めることはねェよ」
「・・・・でも」
気にしちゃうのが私の性分。
「夢のこと気にしなきゃいけないなら俺だってアコに色々としてるし」
「・・・・・・何?色々って」
呑気に呟くサボに問いかけたら、
サボはにぃ、と笑って、
「色々」
としか答えてくれなかった。
・・・これ以上は突っ込まないでおこう。
「ねえ、サボ」
「ん?」
「もう私のこと守らないで」
「・・・無茶言うな」
「もう私の側に居ないで」
「アコ」
少しだけ強くなった声音。
温厚な彼には珍しい強張った表情。
「・・・だって、私怖い」
あの夢がいつか現実になったら、と思うと。
弱気な私の手をサボがぎゅっと握ってくれた。
「俺はアコを守る。何があっても。でも死んだりしねェから」
「・・・・信じない」
「おいおい」
「サボは今だってかなり無茶してるでしょ?」
「してない」
「してる。何回ドラゴンさんに怒られた?」
「・・・・・・・・1回?」
とぼけた顔で答えるサボに、
「嘘。もっとよ。・・・嘘つきサボは嫌い」
ぷい、と横を向いてぱっと手を離した。
まさかそんなことされるとは思ってなかったらしく、
横目で見たサボは驚いた顔。
そして立ち上がって、私の手を掴んだ。
「なに、」
強い力で引っ張り上げられて私も立ち上がらされて。
そのまま勢いよくサボの胸に閉じ込められた。
「本気で怒られたのは1回だ。あとは厳重注意」
「・・・じゃあ私が心配した数は?」
「アコは心配し過ぎなんだよ」
「サボが無茶し過ぎなの」
「・・・・・・ごめん」
「反省してる?」
「してる。だからもうあんなこと言うなよ」
「側に居ないで?」
「それと、守るなってのも」
「・・・側には居て。でも守らないで、じゃ駄目?」
「だから無理言うなって」
困ったような声にサボの顔がいつまでも見れなくて、
サボの逞しい胸に顔を埋めた。
でもすぐにここが食堂だということを思い出して逃げようと試みるけど、
がっしりと回された腕の力が強くて逃げられない。
「同じ失敗は2度もしねェ」
「・・・何それ」
「さっき逃げられたから」
「・・・・ここ食堂だよ?いつ人が来るかもしれないのに」
「じゃあさっきの撤回すること」
「さっきの?」
「・・・・嫌い、って言っただろ」
頭上の弱弱しい声に顔が見たくなって、
顔を上げようとするも腕に阻まれて上がらない。
「サボ、ねえ」
「顔見るの禁止」
「怒ってる?」
嫌いって・・・言ったから。
「なぁ、アコ」
「・・・・なに?」
「好きって、言って」
「・・・・サボのことは好きだけど私を心配させても平気なサボは嫌い」
「じゃあずっとこのまま」
「・・・・・窒息死しちゃう」
胸元でぼそっと呟いたら少しだけ隙間が出来た。
でも腕の力は強くて、逃げられそうにない。
「別に平気な訳じゃない。・・・俺だって、アコに心配かけないようにとは思ってる」
「ホントに?」
「信じられない?」
「だって私が止めても行く時は行っちゃうしすぐ無茶して怪我して帰ってくるし」
「でも帰ってくるだろ?」
「帰って来ればいいってもんじゃないでしょ・・・・帰ってこないよりいいけど」
「アコを守ってついた傷なら愛の勲章だ。だからもう気にするな。わかったか?」
「わかりません。じゃあ私がサボの為についた傷も勲章だってサボは納得出来るの?」
「・・・・・出来ねェよ」
「ねえ、サボ」
「ん?」
「顔見たい」
「・・・・嫌いって言ったままだから駄目だ」
「ケチ」
「俺だってアコの顔見たいんだ」
「私の悲しむ顔?」
「・・・悲しむなよ、頼むから」
「悲しい。大好きなサボの顔が見られないから」
私を守りたいと言ってくれるサボのことは大好きだから。
そう答えたらそっと身体が離れて(それでも抱きしめられたままだけど)、
ようやくサボの顔が見えた。
数分ぶりのサボの顔は寂しそうで。
「・・・サボ?」
「惚れた女1人守れねェ男になりたくないんだよ、俺は」
何処か悔しそうに呟いたサボの表情がカッコ良くて、
思わずその唇に自分の唇を重ねてた。
「サボに守ってもらえる私は幸せ。・・・ありがと、サボ」
そういえばコアラが言ってたなぁ、なんて思い出す。
『男の子は単純な生き物なの。好きな女の子の為に命投げうっちゃう馬鹿ってこと』
「・・・アコ、もう1回」
「・・・有難う」
「そっちじゃない」
真剣な顔でもう1回、とせがむサボ。
・・・さっきまでカッコ良かったのに。
「じゃあ、約束して。ずっと私の側に居て私を守って。・・・ずっと」
だから、怪我してもいいから。
死なないで。
側に居て。
「ああ、約束するよ」
「怪我したらものすごーく心配するし泣くからね私」
「・・・気を付ける」
「あ、そっか。サボがやられたら私が敵を返り討ちにすればいいのね」
「危険だからやめて下さいお願いします」
がっくりと肩を落とすサボが可愛い。
「・・・最低な私でも、いい?」
「こんなに俺を心配してくれるアコが最低な訳ないだろ?」
「でも私、」
「夢の中でくらい俺の心配してなくていい。夢だろうが現実だろうがアコは俺が守るから」
「私は?」
「アコもアコを守ればいい」
「・・・仕方ないからそれで納得してあげる」
サボはワガママだなぁ、と苦笑した私をなだめるように今度はサボから、ちゅ、と口づけ。
「・・・・サボ、もっと」
「お望み通りに、お姫様?」
「お姫様より騎士がいい。だって私」
サボを傷つける人間は許さないもの。
それが例え私でも。
夢の中の私へ。
無事ならサボを傷つけた敵へ仕返ししてくれるよね?
私の夢なら、
守られたあとはちゃんと守ってね。