短編②
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「おじさんはお姉さんの王子様だもんね?」
上陸した島で迷子になっていた小さな女の子を親元まで送り届けた時、
そう言われた。
お頭のことを王子様みたい、と呼んだ後。
あ、でも駄目ね、と。
「王子様・・・・?」
「女の子はみんなお姫様なの。お姉ちゃんの王子様はおじさんなんでしょ?」
返答に困ってお頭をちら、と見ると、
「ああ、その通りだな」
と嬉しそうに笑った。
・・・・・・・・・・お頭が、王子様、ねえ。
笑顔で手を振る女の子にお別れして、
改めて町を散策。
「お頭は王子様っていうより王様ですよね」
何て言ったって四皇だし。
「じゃあお前は王妃ってことか」
「え?」
「俺が王でアコが姫じゃいかんだろ」
「駄目なんですか?」
むしろ私は王に仕える人間くらいのもんじゃないかなあ。
・・・・・・・・・なんて言ったらお頭は怒るかもしれないけど。
「お前、わかってねえな」
「何がですか?」
「俺は王でも王子でも気にしねえってことだ」
苦笑を浮かべながらお頭の言うことはよくわからない。
そりゃ本来は海賊だから。
王でも何でもないんだろうけど。
そしてそんな話をした日の夜。
船に戻って明日買うもののメモをしていた私の部屋に、お頭が来た。
大きな袋を持って。
「・・・・・・・・・また何か変な物買ったんですか?」
それでそれを私に見せに来る、と。
いつものことながらどんなものを見せてくれるのか不安でもあり楽しみでもある。
「失礼だな。プレゼント持ってきたんだ、ほら」
「プレゼント?」
ほら、と言いながら私の目の前に差し出された袋。
「ラッピングは邪魔になるだろうと思って断った。嫌なら捨てていい」
「そんなこと出来ませんッ!・・・・有り難う、御座います。開けてもいいですか?」
「勿論だ」
あれ、でも今日何かあったっけ?
プレゼントもらうような日でもないのに。
疑問に思いながら袋を開ける。
中に入ってたのは、
「・・・・・・・・・・・・・・可愛い」
サーモンピンクを基調にした上品なロングワンピース。
「嫌じゃなきゃ着て見せてくれ」
「嫌なんてことないです。嬉しいです。・・・でも、何で」
驚きと嬉しさとで顔が大変なことになってるかもしれない。
それでも残る疑問をぶつければ、
「女の子は皆お姫様、なんだろ?」
目を細めて優しい笑みを浮かべるお頭。
それが何だかカッコ良くて。
「・・・・・・・っ女の子って年齢でもないですしお姫様って感じでもないですよ私」
「何だ、そういうのは嫌いか?」
「あっいえ!そういう訳じゃ、なくて」
「アコに似合うと思って買ってきたんだ。着てくれねェか」
「・・・・・・・・っはい」
素直になれない私に、お頭はただ笑ってくれた。
お頭には1回部屋から出てもらって、急いでもらった服に着替えた。
ドアを開ける前に部屋にある鏡に映してみる。
「・・・・・・・・・・・服は可愛いのになあ」
映った自分に少しだけがっくり。
「終わったか?」
「あ、今開けます・・・!」
ドア越しのお頭の声に慌ててドアを開けた。
「こ・・・・こんな感じ、です」
せっかく買って来てくれたのに似合わなくてごめんなさい。
そう思うと自然と俯く顔。
・・・・・・申し訳なくてお頭の顔、見れないなあ。
「・・・・・・・・・・・・・ああ、よく似合ってる」
「ほんと、ですか?」
「俺が見立てたんだ、当然だろう?しかし、姫ではないな」
ああ、やっぱり。
私じゃお姫様なんて無理だった。
「・・・・・ごめんなさ、「お前は王妃だろ?」
・・・・・・・・・・・・は?
謝罪しかけた私の言葉を遮ったお頭の言葉。
「さっきはああ言ったが、俺はそのつもりで選んできたからな」
「へ?」
「姫っつーのは王の娘のことだろ。俺はお前を娘になんかしたくねェからな」
「え、あの」
戸惑う私なんか知らないようにお頭はにこにこと嬉しそうに続ける。
「俺が王なら、アコは王妃だ」
な?と笑いかけるお頭。
「えええええ!?」
「いやーしかし想像以上だなこれは。可愛すぎる」
この人は、本当に。
・・・・・・・・想像以上の人。
「お頭・・・・有り難う御座います。でも私」
でも、私は。
言いかけてやっぱり言うのが恥ずかしくなって止めたけど。
「でも私は?」
お頭に促されて。
「・・・・・・・・私、お姫様でも王妃でなくても、お頭の隣に居られればそれだけで幸せなんですよ」
「ああ、そりゃあ俺も同じだ」
ここで初めて、私はお頭のあのときの言葉の意味を理解した。
『俺は王でも王子でも気にしねえってことだ』
ちゅ、と口付けられた頬が。
お頭色に染まった。