短編②
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「はい、これお茶」
「ああ、有難うアコ」
「今日はルイボスティーにしたの」
「・・・楽しみにしてる」
シャンクスの為に淹れたルイボスティー。
マイメロディーのポットに入れて渡した。
ネクタイは地味めだけど、
小さくキティちゃんの絵が入ったもの。
うん、可愛い。
私の大好きなキャラクターに包まれた、
大好きなシャンクス。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ちゅ、と軽いキスをして、シャンクスが出て行くのを見送った。
それから洗濯と後片付けをして、
ちょこっとオヤツを食べて。
・・・・うん、まだ時間ある。
あそこに行こう!
で、やって来たサンリオショップ。
あ、このポーチ新作!
ストラップも可愛い・・・・!
鞄もいいなぁ、シャンクスとお揃いで持ちたい。
はあっこのエプロン買っちゃおう!!
これ着けて料理しよ!
あーでも汚したくないし!
悩むなぁ。
ああっこのぬいぐるみも可愛い・・・!
サンリオ最高!!
幸せな気分でふと周りを見渡して、
私は時間が止まったような気がした。
・・・・・・・・あ、れ?
・・・・周りに居るのは、
小学生から高校生くらいまでの女の子ばかり。
考えたくないけど、
今まで考えもしなかったし気づかなかったけど。
・・・・・もしかして私、浮いてる?
考えてみれば男の人だってほとんど居ない(たまに見かけるけど)。
・・・シャンクスは優しいから、言わないだけで。
本当は呆れてる?
このままだと嫌われることだってあるかもしれない。
いつも身に着けてもらってるキャラグッズだって、本当は恥ずかしかったかもしれない、なんて。
・・・・・・・・今更、気が付くなんて。
どうしよう。
シャンクスに嫌われるなんて絶対嫌。
普通の女の子にならなきゃ。
手に取ったエプロンを置いて、
私は家に帰った。
慣れて来たとはいえまだ辛いもんはある。
この際外側は気にしないことにしよう。
「・・・美味いなルイボスティー」
アコが心をこめて淹れてくれたんだ、
それだけで十分だ。
弁当箱は卵のキャラクターで、これならまだいい。
蓋を開ければハートを模ったおにぎり。
・・・可愛いことしてくれる。
「おーいつも通りたっぷり愛情のこもった弁当だなァ」
ヤソップが後ろから覗きこんで来た。
「羨ましいだろ」
「・・・いや、それでいいのか。弁当箱は恥ずかしがるのに」
「弁当の中身は普通だろう?」
「ハートが?」
「可愛いだろ、アコの手作りだぞ。しかも美味い。最高だ」
「・・・羨ましいわその性格」
ん、弁当も美味い。
呆れ顔のヤソップを余所に弁当を堪能した。
「ただいま、アコ」
「おかえりなさい、シャンクス」
帰ってすぐに、違和感に気が付いた。
「アコ?」
「どうかした?」
「・・・いつものエプロンじゃないんだな?」
アコはいつも『キティちゃん』のエプロンを着用している。
だが今は、無地の紺色のエプロン姿。
アコは何を着ても似合うから問題はないが。
「いつもの、洗濯してて」
「他のもあっただろう?シナモン、だったか?」
「シナモロールね。・・・汚したくないから、今日はこれでいいかなって」
「そう、か」
・・・驚いたな。
キャラクター物を身に着けていないアコに出迎えられるとは思わなかった。
だが、これは序章に過ぎなかった。
「はい、お待たせ」
「お、美味そうだ」
出て来た美味そうな料理の数々。
これはいつものことだが、食卓に並ぶその食器が違う。
シンプルな食器のオンパレード。
いつもなら皿からグラスまでキャラクター物のカラフルなものが並ぶ。
それを嬉しそうに見るアコは可愛くて、俺はそんなアコを見て1日の疲れを癒していた・・・・のだが。
「・・・食べないの?シャンクス」
「いや、いただきます」
美味い、と言えばアコがほっとしたように微笑んだ。
やっぱ可愛いなァ。
このままアコを喰っちまいてェ。
・・・・が。
そう思ったのも一瞬。
「アコ、いつもの食器はどうした?」
「え、あ・・・・・熱々の唐揚げ乗せたらキティちゃん可哀想でしょ?」
「・・・そうか、優しいなアコは」
俺の問いに明らかに動揺を見せるアコ。
確かに今までも愛でてはいたが、今までこんなことを言うことはなかった。
俺が居ない間に何かがあったことは明白。
キャラクター小物の一切ない食卓で食事をするアコの姿は寂しそうだ。
気にはなるが、アコから何も言ってくれない以上、これ以上何か聞くのは酷というものだろう。
まあ、明日になればいつものアコに戻ってるかもしれねェしな。
「そういや今度の日曜日、久しぶりに出かけないか?」
最近デートもしてなかったし、
アコの好きなキャラクター小物の店でたくさん買ってやろう。
「行く!」
少しだけ元気の出た様子のアコに安堵しながら、次の日曜日こそ、と決めた。
「・・・・おかしい?」
真っ白なワンピースが輝いて見える。
「・・・いや、似合ってる」
可愛い。ものすごく可愛い。
だいたいアコは何着たって似合う。
キティちゃんとマイメロディとかシナモンとかのシャツを着てなくても、
例え普通のワンピースだったとしても。
・・・・例え、鞄も靴もアクセサリーも普通のものだったとしても。
家に居る時は勿論、
出かける時はこぞって、
『バッグはこれにしてーあ、ネックレスはキティちゃんにしよっかな』
と楽しそうに選び、幸せそうに出かけるアコが、だ。
・・・・・普通の服だって可愛くない訳じゃない。
ただ、このままだとまずいな。
「今日は駅のデパートに入ってるあの店に行くか?」
「あ・・・・・・ううん、今日は、いい」
「・・・・珍しいな?」
「うん、いいの」
まるで自分に言い聞かせるようにアコは言う。
「好きじゃなくなったのか?」
「・・・そういう訳じゃないけど、たまにはいいかなって」
最近アコはこの話をすと顔を曇らせる。
「何か欲しい物ねェか?」
せめて元気を出してもらおうと質問したら、
「キティとダニエルのうぇっ・・・・」
・・・・勢い良くそう言いかけて、
途中ではっとなったように止めた。
明らかにおかしい。
「遠慮しなくていいんだぞ、アコ」
「・・・・カフェアイシーのケーキが食べたい」
「・・・わかった、行こう」
「・・・・・参った」
デスクに顔を伏せたら、ヤソップの笑い声が聞こえた。
「そんなに好きだったのか?」
「当たり前だろう。・・・愛してるさ」
「ほー猫やらウサギやらのキャラをか」
「違ェ。アコをだ!」
「最近猫やらウサギのネクタイもしてないから寂しいんじゃねーの?」
「まあ、間違ってはいないが・・・」
「ついに愛想つかされたって訳か」
カラカラと楽しそうに笑うヤソップの首をしめてやりたい。
「心当たりはねェんだ、まったく」
深いため息を共に嘆いたら、
「嫌がったのがバレたんだろう」
「・・・・それが駄目なのか?ベックマン」
「聞いたことがある。女が恋人に明らかな女物を身に着けさせるのは浮気防止だと」
ベックマンが呆れ顔で、それでも聞き捨てならないことを言いだした。
「浮気防止?」
「自分の存在をちらつかせることで他の女をよせつけないってことらしい」
「ははーん、なるほどな。それを拒否するイコール浮気しますってとられた訳か」
「・・・・ヤソップ、それ以上言うな」
「さっさとプロポーズしないってのも理由かもしれんな。この間意気込んでたみたいだが、してないんだろ」
「・・・・日曜日、しようと思っていたんだが」
「・・・・だが?」
「用意した指輪が・・・・キティちゃんのだからだ」
だから、今のアコには渡せなかった。
「・・・そりゃ渡せねェわな」
「頼む、ヤソップ、ベックマン。アコに理由を聞いてくれ」
「はァ!?無理に決まってんだろ!?」
「だいたい会う機会もない」
「ある」
「いつだ」
「今だ。忘れた弁当を持ってきてくれるはずだ」
「・・・・策士かこの野郎」
そこへちょうど、
「シャンクスーお弁当忘れてたから持ってきたよ?」
「ああアコ、わざわざ持ってきてくれたのか」
ちら、と目線でヤソップとベックマンに合図。
「受付の人が入っていいって言うから来ちゃった。あ、シャンクスがいつもお世話になってます」
ぺこりと可愛らしくお辞儀するアコ。
「あ、ああどうも・・・最近シャンクス君の弁当が普通なんてからかい甲斐がない・・・・あ」
・・・・・・ヤソップ後で殴る。
からかい甲斐がない、彼はそう言ってから明らかにしまった、という顔をした。
・・・・・やっぱりシャンクスはからかわれてたんだ。
それをシャンクスはきっと私に言えず、我慢してたんだ。今まで。
「っごめんねシャンクス」
良かった、今日は普通のお弁当箱とマグにして。
思いながら、お弁当を置いて逃げるように部屋を出た。
駄目、泣きそう。
「アコ!」
後ろから追ってきたシャンクスに腕を掴まれた。
「・・・・っ今日は普通のだから、お弁当箱も・・・中身も」
「アコ、いいんだ。俺は気にしてねェ」
「もういいよ、シャンクス・・・・っ」
そこまで優しくしてくれなくて、いいよ。
こんな私じゃシャンクスの奥さんになんてなれる訳、ないんだ。
「ぐでたまのお弁当箱ならって思ったけど・・・恥ずかしかったよね、ハートの、中身も」
「いやむしろ中身は最高だった。・・・じゃなくてな、俺は浮気したりなんかしねェから」
「・・・・・・・・へ?」
・・・・・いきなり何のこと?
「だから今までみたいにしていいんだ、アコ」
「でも私のせいで恥ずかしい思い、」
「してない。俺はアコが居るから幸せなんだ」
シャンクスの強い視線に射抜かれたと思ったら、シャンクスの腕が私の背中に回された。
「・・・・シャンクス」
「浮気防止の為でもいい、俺は気にしないから今まで通りにしてくれ。そんなアコが好きなんだ」
「浮気防止?」
「・・・違うのか?」
「・・・・好きだから」
シャンクスも、サンリオも好きだから、だよ。
「最近、アコ自身も封印してるな?」
「・・・・だって」
だって、シャンクスに嫌われたくないから。
でももう遅かった。
嫌われてはなくても、きっとシャンクスは私のせいで今まで嫌な思いをしてきた。
「アコがそんなんじゃ」
駄目だ、とシャンクスが言った。
・・・・・ごめんなさい、以外の言葉が見つからない。
「・・・・・ほんとに、ごめんなさい」
「アコがサンリオも俺も好きだと言ってくれないと・・・・俺はこれを渡せない」
「・・・・え?」
これ、と言ってシャンクスが差し出した紙袋。
その中には、
「キティとダニエルのウェディングドール・・・・」
私が欲しかったもの。
それと、小さな小箱。
その中には、
「俺と結婚してくれないか?アコ。サンリオごと愛してる」
ダイヤモンドと、ダイヤを飾るキティちゃんのリボンのついた、
サンリオの指輪。
・・・・・婚約、指輪?
「・・・・・だって私たぶんずっとキティちゃん好きだよ?」
「それでいい」
「いいの?呆れたり、しない?」
「いいんだ、アコ。・・・返事を聞かせてくれないか?」
「・・・・あのね、キティちゃんの婚約届があるんだけど」
「それで提出しよう」
「ピューロランドで式、挙げたいなって、ずっと、私の夢、」
「叶えよう。俺が新郎でいいなら」
「・・・・・・私が新婦でいい?」
「勿論だ」
シャンクスが私の額にちゅ、と唇を落とした。
シャンクスと出会えて、
シャンクスが私のことを好きになってくれて本当に良かったと、
今日ほど思ったことはない。
「・・・・・あいつら会社だって忘れてねーか。つーかこれで殴られるとか冗談じゃねーよ」
「お前は1回殴られた方がいいと思うぞ」
「ベンちゃんひっどーい」