短編②
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とある恋愛映画の主題歌が流れた。
あ、この曲。
私の携帯の着信メロディ。
現在恋人3年目のマルコには似合わないと言われたけど、
私の大好きな恋愛映画で、
大好きな主題歌。
そしてこの曲が流れたということは、相手はマルコ。
『今から行く』
今日はマルコがうちに夕飯を食べに来て、
そのまま泊まって行く日。
『了解、お疲れ様』
簡単に返事して、新しく買ったばかりのエプロンを装着。
うん、ぴったり。
・・・よし!
今日の夕飯はオムレツと唐揚げとサラダ。
それにもずくスープ。
先にスープとサラダを仕上げて、
もうすぐ帰ってくるころを見計らって卵を溶く。
フライパンに流し込んで、まだ半生の所にケチャップライスを乗せて。
くる、っと。
火を止めてお皿に盛ったところで、
「邪魔するよい」
マルコ到着。
「いらっしゃい」
「・・・そのエプロン初めて見るねい」
早速マルコがエプロンをじろり。
「可愛いでしょ?」
「どうせ汚れるもんだろい?何でもいいと思うがねい」
「わかってないなぁ、マルコは。乙女はどんな時も可愛くありたいものなの」
「それなら裸エプロンでもしてくれた方が嬉しいよい」
・・・がっくりと肩を落とす。
「・・・マルコに乙女心を説いた私が馬鹿だった」
「そりゃ悪かったよい」
全然悪びれない様子のマルコがスーツを脱ぎながら笑う。
・・・・くそう、こんなんでもカッコイイんだから参っちゃう。
「それより座ってて。今オムレツ出来たとこだから。ふわとろなんだよ、ふわとろっ・・・」
出来上がったばかりのオムレツにケチャップでハートを描いてくるりと振り返って私は目を丸くした。
「・・・俺ァ乙女心なんてわからねェからよい。ムードとか知ったこっちゃねェ」
「・・・・まる、こ」
「だから今言わせてもらうよい。アコ、幸せにするから・・・よい。俺と結婚してくれ」
マルコが持っていた小さい小箱の中に光る環。
返事は、1つ。
「・・・・・喜んで、お受けします」
こうして私たちは夫婦になった。
婚姻届けも無事に受理され、
引っ越しもした。
結婚式も何とか終わった。
その疲れが一気に来たのかと思ってた。
「アコ、大丈夫かい?」
「うん、大丈夫。・・・・ちょっとだるいだけ」
「病院行けよい」
「大袈裟だって。寝てれば治るよ」
私は具合が多少悪くてもあんまり病院に行かずに生きて来た。
前にそう言ったらマルコにわからないでもないと言われた。
でも今回は、
「行かねェってんなら仕事休んで連れて行くよい」
・・・マルコが譲らなかった。
仕事を休ませるなんて出来ない。
「わかったよぅ、明日病院行って来る」
マルコに仕事を休ませるわけにはいかない。
「診断書ももらって来いよい」
「・・・・妻を信じられないのー?」
「妻だから心配なんだよい」
「ちゃんと行くから。マルコもしっかり仕事してきてよね」
「わかってるよい」
小指と小指を絡めて、2人の約束。
・・・・・で、病院に行った結果。
「おめでとう御座います」
3ヵ月ですね、と言われた。
信じられない、このお腹の中に新しい命が居るなんて。
・・・マルコは、信じてくれるだろうか。
・・・・っていうか、マルコが、パパ・・・・。
「帰ったよい」
帰って来たマルコに、
「おかえりなさいパパ」
と言ってみた。
マルコは持っていた鞄をどさっと落として、小さい目をいっぱいいっぱいに丸くさせた。
「・・・・・・・パパ?」
「ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・話し、聞きたい?」
「・・・っ話し聞くに決まってんだろい!聞かせろい!」
あまり見られないマルコの焦った顔が、可愛くて私は大好きだ。
「3ヵ月だって。もうすぐつわりも来るかもね。鉄分摂取と軽い運動して下さいねだって」
「・・・妙に落ち着いてるじゃねェかよい」
神妙な顔のマルコも可愛い。
あ、駄目だ私重症かもしれない。
「え、私産むつもりだけど。駄目なの?」
「良いに決まってんだろい!?・・・じゃなくて、まるで経験あるみてェに余裕だなってことだよい」
「だって慌てても仕方ないもん。それにマルコがパパなんだからきっと大丈夫」
笑ってそう言ったら、
マルコは何故か呆れたような顔ではーっとため息を吐いた。
「・・・俺ァ何も出来ないよい・・・」
「あららー?私の旦那様ならきっと2人分守るから任せろいって言ってくれると思ったんだけど」
「・・・ったり前だ。必ず守るよい」
だから、とマルコが優しく抱きしめてくれた。
「・・・必ず無事でいろ。アコも・・・俺たちの子も」
「うん、勿論」
2人静かに唇を重ねた。
「ね、マルコ」
「何だい」
「男の子がいい?女の子がいい?」
「無事に生まれりゃどっちでもいいよい」
「・・・夢がないなぁ」
「至極まっとうなことを言ってるだけだい」
マルコらしい言葉に笑って、
幸せを噛みしめた。
「マルコー夕飯出来たよー」
「んな重たいモン持つんじゃねェよい!!」
・・・・・私の妊娠がわかってから、マルコがものすっごい過保護になった。
「お茶持っただけだから大丈夫」
「支度は全部俺がやる」
「でも、マルコ仕事で疲れて」
「平気だよい。いいから座ってろい」
「大丈夫なのに。あ、私ご飯いらない」
「あ?駄目だよい、ちゃんと食え」
「ご飯の匂いが駄目になっちゃったみたいで」
「・・・つわりってやつかい」
「そうみたい。お肉もちょっと血生臭くて食べられないからマルコだけ食べて」
酷くはないものの、やっぱり辛い。
「・・・じゃあ何なら食えるんだよい」
「・・・・・・味噌汁と漬物とか」
てへ。
「・・・・待ってろい」
「え、マルコ?」
マルコが急に立ち上がって、台所に向かった。
不思議に思いながら待つこと数分。
「出来たよい」
マルコが持ってきてくれたのは、
何とも美味しそうな。
「味噌汁ご飯?」
「・・・味噌汁に飯入れて煮込んだ。これなら食えねェかい」
「マルコが・・・料理・・・」
してくれるなんて。
「・・・料理なんて大層なもんじゃねェよい」
「嬉しい!頂きます!」
これなら食べられそう!
熱々のそれをぱくり。
「ん!熱ーい!でも美味しい!」
「・・・ちゃんと冷ましてから食えよい」
「マルコが冷まして」
なんて冗談で言ってみたら、
「・・・貸せ」
仏頂面で手を出した。
お椀を渡せばスプーンですくって、厚ぼったい唇を突き出して、ふーふー。
・・・嘘みたい。
「・・・食えよい」
「あーん・・・美味しい。幸せ」
「大袈裟だっての。まったく・・・心配させんなよい」
言いながら頬を赤くするマルコに募る愛しさ。
「ありがと、マルコ。ごめんね仕事で疲れてるのに」
「仕事中でも何でも異変があったら連絡しろよい」
「うん」
「重てェモンは絶対持つな。知らない奴が来たら出なくていい」
「・・・わかった」
「絶対無理するなよい」
「わかってる。・・・っふふ、あははっ」
こみあげて来た笑いは我慢出来なかった。
「・・・何で笑ってんだい」
「・・・っごめんね、嬉しくて」
マルコはちっと軽く舌打ちをしたけど、
照れ隠しだってわかってる。
「・・・まぁ、泣かれるよりはいい・・・よい」
「素直じゃないなぁマルコは。笑ってる君が1番好きだよって言ってくれればいいのに」
「誰が言うかそんなこと!」
「・・・・言って?」
「・・・アコはずっと阿呆みたいに笑ってりゃいいんだい。俺の隣で」
少しの沈黙の後、マルコはしっかりと言ってくれた。
「大好き、マルコ」
「・・・・よい」
それから1か月後。
マルコの部屋で見つけた、本の束。
そのタイトルは、
『赤ちゃんが出来たら』
『妊娠発覚後にすること』
『赤ちゃんの為の胎教本』
・・・・・エトセトラ。
私が1冊も買ってないのに!!
「ねぇマルコこの本、」
「っば、んなモン持つんじゃねェよい!!」
慌てて私に駆け寄るマルコをのんびり見つめていたら。
「大丈夫だってー・・・・あ!!」
「アコ!?」
「今動いた!・・・お腹、動いた!」
「・・・そう、か」
私の大騒ぎに呆然と呟くマルコ。
「ね、触って」
「・・・・・・・・・・こう、かい」
恐る恐るマルコが私のお腹に触れる。
それに応えるように、またお腹が動いた。
「ほら!」
「・・・・・妙な気持ちだい」
「たくさん、愛してるよって伝えてあげようね」
「・・・・ああ」
そして新しい命が、
生まれた。
「ホントのパパだね、マルコ」
「・・・父上と呼ばせるよい」
「何そのスパルタ教育」
時が流れていくのが本当に早くて、
生まれた男の子・・・エドは3歳になった。
「まーうこー」
「・・・・父上どころかマルコ呼びだね。私のせいかも」
「・・・仕方ねェよい」
言いながらせがまれるままエドを抱っこするマルコの優しい目が、大好き。
「・・・あー!!エド!ママのお洋服にお醤油こぼしちゃったのー!?」
ふと見たらエドが楽しそうに私のお気に入りのワンピースにお醤油をじょばー。
「駄目でしょエド」
最近いらずらが多い。
でも怒ってみても、
首を横に振って嫌々、とするだけ。
・・・まったくどうしたら。
「エド。今お前がしたことはママを悲しませることだよい。ママを悲しくさせていいのかい?」
マルコがしゃがんで、エドに向かって静かに言い聞かせる。
「・・・・かなしいの、だめー」
「ママが好きだろい?」
「すき!」
「なら守らねェと駄目だ。わかったかい?」
「うんわかった!」
マルコの言葉に目をキラキラと輝かせるエド。
・・・・マルコ、すごい。
「わかったらママにごめんなさいするんだろい?」
「ママごめんなさい!」
「よく言えました。いい子ね」
私に撫でられて嬉しそうにするエドは、マルコに似てる。
・・・・・これは将来が楽しみかも。
「アコ・・・新しい買ってやるからそんな落ち込むなよい」
「あ、ううん違うの。大丈夫。・・・なんかね、マルコすごいなぁって思って」
「家事と同時に育児してるアコの方がすごいだろい?」
「何か・・・マルコと結婚してからずっとマルコの意外な面が見られて嬉しい」
「・・・・そうかい?」
「ほんとはね・・・結婚も妊娠も少し不安だったの。でもマルコが頼もしくて嬉しかった」
「言っただろい?幸せにするってよい」
「うん、幸せ。・・・これからも幸せにしてね、パパ」
「当たり前だ」
なんていつものようにちゅ、なんてしたら。
「エドもちゅーする」
「っ!!」
・・・・エド忘れてた。
「じゃあパパとママからのプレゼントだよい」
「せーの」
ちゅ。
たくさんの愛、
3人で。