短編②
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「絶対幸せにするから俺と結婚して下さい」
夕陽の綺麗な海辺で、
エースにそうプロポーズされたのが数週間前。
私は喜んで頷いて、
1週間は幸せな気分に浸って。
でもそれからが大変だと知った。
結婚の準備。
婚約届やら結婚式の日取りやら。
でも、1番大変なのが、
お互いの両親への挨拶。
今日はまず先に私がエースのご両親への挨拶。
「うぅ・・・緊張するよぅ」
「アコなら大丈夫だって。別にオヤジもおふくろも結婚反対してねェし」
「反対されても負けないけどね!」
「・・・・緊張してるんじゃなかったのかよ」
「してるけど負けないの」
「ははっ、頼もしいな!」
エースの家の前で立ち尽くす私たち。
強気で言ってみるけど、やっぱり不安なものは不安で。
そんな私を理解してくれてるエースは、
ぎゅっと手を握ってくれた。
「頼もしいアコも可愛いけど、俺も頼れよな」
「・・・・うん、ありがと」
不思議と不安が少し消えていく。
エースのあったかさが不安を勇気に変えてくれる。
「じゃ、行くか」
「お邪魔します!」
・・・・・で意気込んで行ったものの、
結果は、
「気は利かないし大喰らいだから大変だけどよろしくねアコさん」
とお母様に言ってもらえて。
「孫だ楽しみだなァエース」
とお父様にもアッサリ認めてもらえた。
安堵したのも束の間。
だって次はエースが私の両親に挨拶に来る番だから。
「私にはすごーくいいお父さんなの」
「・・・だな」
私の家に行く前にカフェでエースと2人で作戦会議。
・・・・うちの父は一筋縄じゃいかないから。
「私も一緒に買い物行ったりするくらい大好きだし」
「結婚のことは言ったんだよな?」
「うん。・・・とにかくエースに会わせろって」
その一点張りで。
私が何を言っても駄目だった。
「まァ気持ちはわからないでもねェ」
「・・・・そう?」
「俺だってアコと俺の娘が男連れてきたら許せねェし」
「あははっ、エース気が早いよ。でも嬉しい」
「とは言え誰が相手だろうとアコのこと諦めたりしないからな」
私だって、お父さんに何言われたってエースと結婚するのを諦めるつもりはない。
でも今日はまだ問題がある。
「頑張って、って言いたいところなんだけどね・・・エース」
「・・・何だよ?」
「今日お母さん急用が入って駄目になっちゃったの」
「・・・・マジか」
「だからお父さんと私とエースだけ、なんだけど。・・・・大丈夫?」
「ここで逃げたら男じゃねェ。やってやるよ」
不利な状況になっても誰を責めるでもなくやる気になってくれたエース。
「・・・・じゃあ、行こっか」
「おう」
という訳で。
「ただいまお父さん」
「お邪魔します!」
深々と頭を下げて丁寧にお辞儀するエース。
「おかえり、アコ」
「あの・・・彼が、エース君」
笑顔で私を出迎えてくれた父さんは、
エースを見てすっと笑みを消した。
「初めまして、アコさんとお付き合いさせて頂いてます」
顔を上げたエースは真っ直ぐに父さんと向き合って言い切った。
頑張ってエース・・・!
「アコの父のシャンクスだ。よく来たな」
「・・・うす」
「あああのねお父さんっ今日は大事な話しがあってっ!ほら、居間行こっ居間!エースもどうぞ!」
2人の間に流れた空気に慌ててエースを居間に通した。
「単刀直入に言わせてもらいます。アコさんを・・・娘さんを僕に下さい」
椅子に座ってすぐ、隣に座ったエースが目の前の父さんに言い放った。
「駄目だな」
・・・対して父さんもすぐに否定。
「でもねお父さん、エースはちゃんと正社員で働いてて給料も安定してるし」
「それくらい当然だろう。アコと結婚したいってんなら金のことで苦労させるなんてあり得ない話しだ」
・・・お父さん、厳しい。わかってたけど。
「必ず大切にします。俺にはアコさんしか居ません」
「俺にとっても大事な娘だ」
「・・・どうあっても結婚は承知出来ないってことですか」
「娘が不幸になることをわかってて承知出来る親は居ないと思うが?」
「私はエースと居て幸せなんだけどな」
「可哀想にアコ・・・こっちにおいで」
お父さんがおいでおいで、と私を手招き。
ちら、と横に居るエースを見るけど、お父さんと睨み合ったまま。
どうしよう、と迷ったけど。
このままお父さんを不機嫌にさせてもエースに不利になるだけだから、とお父さんのところへ。
「・・・はい」
「いい子だ」
着いた途端頭をなでなでされる。
いつもなら嬉しいけど、今は嬉しくない。
「お父さん、私はエースと一緒に居て幸せだから」
「アコ、結婚てのはそんな甘いモンじゃねェんだぞ」
「わかってる」
「いや、わかってない。まだ3年やそこらの付き合いじゃ結婚は早い」
「・・・あと何年付き合えばアコさんとの結婚を許してもらえるんですか」
「少なくともあと10年だな。本当に好きなら待てるだろう?」
にや、と余裕の笑みを浮かべる父さんと、
ただ真っ直ぐに真剣な顔で見つめ返すエース。
そしてエースは、立ち上がった。
「・・・エース?」
エースは私と父さんの前まで来て、
「・・・・俺は」
一言口にした後、床に膝をついて、
頭を下げた。
「エース!?」
「俺は10年待てます。でも俺が不甲斐ないせいでアコさんを待たせたくはありません」
「・・・っお父さん!エースここまでしてくれてるんだよ!?」
なのに私は何も出来なくて、もどかしい。
「確かに若いのにたいしたモンだ。よし、勝負しないか?」
「勝負?ってお父さん暴力的なのやめてよ」
「俺は何でも受けます」
「よく言った。酒は飲めるか?」
「飲めます」
「んじゃあ飲み比べ勝負だ!」
「飲み比べって・・・・そんなのお父さんに勝てる訳ない!」
大酒飲みなのに!
「俺は逃げねェ」
「エース・・・」
「こらこら、アコはどっちの応援するんだ?」
「エース」
「・・・父さん寂しいぞアコ」
いきなり父さんにぎゅっと抱きしめられた。
「っお父さん!」
さすがに恥ずかしくなって怒ったら、
すごい力で腕を引っ張られて、父さんの腕から脱出。
と思ったら今度はエースの腕の中。
「ほう、俺の前でアコに不埒な真似するとはいい度胸だ」
「過保護過ぎんのもどうかと」
「お前みたいな悪い虫つけねェように頑張ってたってのになァ」
「エースは悪い虫じゃないから。もう、お母さんに怒られても知らないからね!?」
ここまで怒っても平気平気、と嘯く父さんと、
真剣に向き合ってくれてるエースの飲み比べ対決。
結果は、
「ほら、こぉんな小さいアコも可愛いだろう。羨ましいだろ」
「俺だってコスプレしたアコの写真あるし」
2人とも見事に酔っぱらい。
「・・・って何見せ合ってんの2人とも恥ずかしいからやめて!」
「アコはなァ、こーんな小さい時からおとしゃんと結婚するーって言って可愛かったんだぞ」
「アコは会った時から俺と結婚意識してたって言ってたからな!」
ああっさっきまでのカッコイイエースは何処に行ってしまったの!?
「アコの作った弁当の美味さを知らんだろう。特に卵焼きは絶品だ」
「弁当くらい何度も食ってる。卵焼きも美味ェけどすげェのは肉だ。味付けが最高」
「・・・卵焼きだ」
「肉だ!」
何の話し!
「アコの自信作は卵焼きだな?」
「肉だよなアコ?」
2人が一斉にこちらを見たので。
「・・・・・カボチャの煮つけだけど」
私の答えに2人の目が点になった。
「・・・・確かに美味いな」
「・・・俺ァアコの作るモンなら何でも好きだぜ」
「それには同感だ」
気まずさそうに呟いたと思ったら、
今度はがしっと手を取り合った2人。
「・・・結婚は認めてやる」
「ホントお父さん!?」
「ただしうちの近くに住むこと。頻繁に顔を見せることとさっきの写真を渡すことが条件だ」
父さんの言葉に思わずエースと顔を見合わせて笑った。
「っ有難う御座います!やったなアコ!」
「やったぁエース!!」
喜んでエースと抱き合おうとしたけど、
「俺の前でいちゃつくのは100年早ェ」
・・・父さんに阻止されてしまった。
でも、
「エースは私の旦那様なんだからね」
父さんは結婚を認めてくれたんだから。
「結婚を認めただけだからな・・・!」
「結婚を認めてくれりゃ十分だ。な、アコ」
「ね、エース」
お酒臭かったけど、
やっぱりエースはカッコイイ、
私の旦那様。