短編②
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「私って食べても太らない体質だからァ」
道を歩いていて聞こえて来た女性の声に湧く殺意。
・・・・私は食べたぶんだけ太る体質だからァ。
・・・・・・普通は働いてれば食べられないし、
普通に食事してたら1日3食。
そうすればそんなに太ることはまずないと思う。
でも今の私は。
ケーキ屋さんの前に置いてあるメニューを見て、
泣きながら素通りするしかない状況だ。
・・・さっき食べたし、ケーキ。
「戻りましたー」
食事休憩を終えて会社に戻ると、
「おかえりアコ。今日は何を食べたんだ?」
恋人兼同僚のシャンクスがお出迎えしてくれた。
「今日はビーフシチューとサンドイッチとショートケーキ」
「ならおやつは和風でどうだ?」
「おまんじゅうとか?」
「こしあんたっぷりの、な」
「食べたいっ」
「決まりだな」
食べるのが大好きな私の為に、シャンクスはよくおやつを差し入れてくれる。
そして仕事に影響がなければおやつOKという何とも心広い会社のおかげで。
私はいつも心もお腹も満たされている。
シャンクスが、私の食べる姿が好きだって言ってくれてる。
私自身食べるのが大好きだし、
嬉しくてついついいつも食べ過ぎてしまう。
それで幸せ。
・・・だったのは昨日まで。
この間まで履いていたスカートがきつくなったことで、体重計に乗った私。
このままではいかんと決意した。
・・・・・・・・にも関わらず、
私は今日昼食をがっつりと、デザートまで頂き、更にまたシャンクスからおやつをもらおうとしている。
・・・駄目だこれじゃ。
わかってるのに、
手は自然と引き出しにある飴に伸びて行く。
はあ、とため息を吐きながら仕事再開。
好き嫌いがほとんどないっていうのも問題なのかなぁ。
デスクワークだからほとんど動かないし。
あぁ、痩せたい。
「アコ、まんじゅうだ」
「わぁ美味しそう!」
・・・・って、ここで食べたら駄目なのよね。
わかってはいるけど。
・・・・餡子の誘惑。
そして、シャンクスのにこにこと嬉しそうな笑顔。
私が食べているのを待っている。
おまんじゅうを1つ手に取って、ぱくり。
「ん。美味しい」
「そうか、良かった」
「甘すぎないさっぱりした餡子にこの薄皮が・・・最高・・・」
何個でも食べられる!
「今日はお茶も自信作だ」
「いただきます!・・・・んん、玉露だね!」
「正解。さすがアコだな」
「いつも有難うシャンクス」
「食べてるアコは可愛いからな。食べてねェ時も可愛いが」
言いながら優しく髪の毛を撫でてくれるシャンクスに。
・・・・・ダイエットしたい、と言えない私。
「そういや今度の日曜日は休めるんだろう?」
「うん、大丈夫」
「駅前に出来たブッフェの店予約しておいた、行かないか?」
「ほんとに!?」
「ああ、行きてェって言ってただろ」
「行きたかったの!嬉しい!」
テレビや雑誌で話題のブッフェの店。
予約殺到でなかなか行けない状況。
わーいやったぁ、と素直に喜んだのも一瞬。
・・・・・・私ダイエットしなきゃいけないんだった。
シャンクスはまだ気づいてない。
・・・何とか、気づかれないうちに痩せねば。
そう思うのに。
次の日、
「今日はクッキーだ。アコの好きそうなやつを買ってきた」
可愛い袋に包装されたクッキー。
「可愛い・・・!いただきます!」
それにつられてついつい開封、
ぱくり。
「さっくさくー!!しかもこれナッツついてる!すんごい美味しい!」
「じゃあ俺も」
「うん、シャンクスも食べて」
その方が私の体重も助かるし。
そう思ってクッキーをシャンクスの前に差し出したのに、
シャンクスはクッキーを無視して、
「あ、ん・・・・・」
私の唇と重なった、シャンクスの唇。
「甘いな」
「・・・甘いよ」
甘いってことは砂糖たっぷり使っててカロリーも高いってことだよ・・・・!
それからシャンクスは満足そうな笑みを浮かべて、
今度は頬にちゅ、とキス。
「アコの頬は気持ちいいな」
「っ!!」
太ったって・・・・バレた!?
顔むくんでる!?
「可愛い」
「・・・・あ、あはは・・・・ありがと・・・」
苦笑して誤魔化すしかなかった。
・・・・・・・・頑張ろう、ダイエット。
家に帰ってまずダイエットで検索。
んまぁたくさんある記事。
・・・・・読む気失せる。
他にも出て来るサプリメントの宣伝の数々。
でも値段が少々張る。
お金で体重を買うなんて・・・・!
努力で痩せないと!
・・・・とりあえず食事を減らそう。
そう決めて、朝ご飯を抜くことにした。
でも。
「おふぁようございますぅ・・・・・」
力が出ない。
ただでさえ満員電車+αの通勤で体力使うのに。
「大丈夫かアコ?」
「だっ大丈夫・・・・」
「ちゃんと朝飯食べたか?」
「・・・・・食べたよ」
食べてないけど。
とりあえず水分だけでも、と給湯室に行って珈琲を淹れる。
無意識に砂糖を入れようとして手を止めた。
・・・・ブラックにしよ。
そのまま席に持って行ったら、
「これも一緒に食っておけ」
とシャンクスがチョコレートをくれた。
「シャンクスぅ・・・・!」
感動して涙が出た。
・・・・・・・でもこれを食べたら意味がないの!
でもシャンクスの視線と、
チョコレートの甘い罠!
私を食べて、とチョコレートが言っている・・・・!
口の中に放り込んだら、広がるチョコレートの甘さ。
ほわぁぁぁ・・・・!
そして珈琲をごくり。
・・・・苦っ!
「デート、楽しみにしてるからな。体調崩すなよ」
「うん、ありがと」
昼も当たり前に食べ、夜はシャンクスの奢りで回転寿司。
夜。当たり前のように体重は増えていた。
結局ダイエットの記事を頑張って読むことにした。
1日3食、間食なしで。
炭水化物は控えめに。夜遅くはなるべく食べない。
なるべく動く。
どうしてもお腹がすいたら飴を舐めて時間を稼ぐ。
・・・・・・よし。
駅や会社ではエスカレーターを使わず階段を使用。
朝はトースト1枚に目玉焼き、ヨーグルトと珈琲(砂糖少な目)で我慢。
お昼も控えめに、デザートはなし。
夜はご飯少な目。
シャンクスからのおやつは、少しだけ食べて残して鞄に入れ、家に持ち帰って少しずつ食べる。
そうして4日目。
やっと・・・やっと2キロ痩せた!
と感動したのもほんの一瞬。
・・・・・忘れてた、
明日はシャンクスとデート。
・・・・・・・・・・ブッフェだ。
こんな絶望的な気持ちでシャンクスとのデートを迎える日が来るなんて思ってもみなかった。
「元気ないようだが・・・・」
シャンクスにも心配させてしまった。
「ううん、大丈夫」
「具合が悪いのか?何処かで休むか」
「平気。ブッフェの予約時間もうすぐでしょ?楽しみ」
「無理するなよ」
「うん、有難う」
「アコ」
「・・・・何?」
じっと顔を見られてドキッとした。
「朝飯、食べてないだろ」
「・・・・食べてない」
食べられるわけがない。
今日これから嫌ってほど食べる予定なのに。
小さく呟いた私を慰めてくれるようにシャンクスがぽんぽん、と頭を叩く。
・・・・ここまで来て、ダイエットしてるからなんて言えない。
最終手段として薬局で急遽買ってきたダイエットのサプリメント。
あとはたくさん咀嚼してゆっくり食べることを心がける。
このままリバウンドする訳にはいかないの。
自分の為にも・・・・シャンクスの為にも。
そうだよ。
シャンクスの為にも今日は食べることは楽しまないと。
苦しみながら食べる姿なんか見せたくない。
「ご馳走様でしたっ」
食べた・・・!食べたよ!計画通りに!
「アコ、口」
「くち?」
聞き返した私の唇の横めがけて、シャンクスの唇が飛んできて、ぺろり。
ちゅ、というリップ音を残してシャンクスは満足そう。
「・・・言ってくれれば良かったのに」
「した方が早いからな」
「でも・・・楽しかった、ご飯」
久しぶりに食事を楽しいと思った。
美味しいと、思った。
「ダイエットもいいがたまにはいいだろう」
「っ!!・・・・知ってたの?」
まさかシャンクスにバレてたなんて・・・!
「よく頑張ってるさ、アコは」
「・・・・・うん」
両頬をシャンクスの大きな手で包まれた。
「俺はどんなアコも可愛いと思うし、愛してる」
「シャンクス・・・・」
「俺も協力するから俺と一緒の時は可愛いアコを見せてくれ」
「ありがとぉ・・・・っ」
これからはシャンクスと2人でダイエット開始。
「口寂しくなったらいつでもキスするから言ってくれよ」
・・・・と、シャンクスが張り切っております。