短編②
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コツ、コツ。
足音が近づいてくるのがわかる。
お願い、開けないでここだけは。
・・・・・見つかる訳にはいかない。
真っ暗な部屋でひたすら祈る。
頭を抱えて、
少しでも動かないように。
じっと待つ。
相手が過ぎてくれることを。
でも、
キィ、バタン。
ドアが開いた。
でもまだ大丈夫。
部屋に入っただけでは私は見つけられない。
だからどうか、このまま帰って。
来ないで、来ないで・・・・!
ドキドキと心臓の音がうるさくなって、
「見ィつけた」
・・・・・見つかってしまった。
もう駄目だ。
ゲームは、終わりだ。
「・・・・・・・・・・容赦ないねエース」
「当たり前だろ。俺の勝ちだな」
にやりとエースが笑った。
・・・・・悔しい。
15分程前の話し。
「アコー何か作ってくんねェ?」
仲間であり恋人であるエースがそう言って厨房にやって来た。
ちょうどお昼の後片付けが終わったとこで、
私は一休み、と思っていた。
「駄目。エースがツマミ食いし過ぎてるせいで食材少な目なんだから」
「じゃあ何か面白いことしようぜ」
「・・・・マルコさん巻き込むのはやめてよ」
「ってもなァ、2人で出来ることなんてねェし」
マルコさん怒らせると怖いんだから。
・・・っていうか私は休みたい。
でもエースにも付き合ってあげたい気はある。
「んーじゃあさ、私が隠れるからエース探して」
「いい歳してかくれんぼかよ」
「私が見つかったらエースの言うこと1つ聞く」
「・・・何でも?」
「何でも」
「マジか」
「その代わり私を見つけられなかったら私の勝ちだからね?エースが私の言うこと聞くんだよ?」
「いいぜ。その勝負、受けて立つ」
・・・・ということで勝負成立。
モビーは広いし、
そう簡単に見つかるもんでもないはず。
そう思っての勝負だった。
・・・・・・で、結果がコレだよ。
「俺の部屋のベッドの下、か。なかなか考えたなアコ」
「・・・・意外性をついたつもりだったんだけど」
「甘ェ。アコの考えてることはすぐにわかるぜ、俺は」
「・・・・わかったよぅ」
約束は約束だ。
仕方ない、何か余ってそうな食材探して何か作るか。
「んじゃまあせっかく俺の部屋だし・・・・ベッドもあるし、いいことするか」
「ちょっと待ってそれ悪役の台詞よエース君」
おやつじゃないの!?
「悪役だろ?俺海賊だし」
「そうだけど・・・・っ!」
隠れる場所間違えた・・・・!
焦る私に、
「まァでも今は腹減ってるから、そっちの方が先だな」
「後はないけどね!」
エースは平然と私の顔が熱くなるようなことを言う。
「何か作ってくれよ、アコ」
「いいよ、何食べたい?」
てっきり肉、と言われると思っていた私。
「甘いモンが食いたい」
「え、甘いの?」
「あァ、甘ェの頼む」
珍しい、と思いながらもまぁそれなら何とかなるかなと考える。
「じゃあ厨房行って材料見て来るから、エースはここで」
待ってて、と言い切る前に、
「俺も行く」
・・・・エースが口を挟んだ。
「・・・つまみ食いしないでよ」
「しねェよ、これからアコの作るモン食うし」
「ならいいけど・・・・」
呟いた私の隣にエースが並んで、
「ひゃっ」
私の腰に手を添えたエースはぐっと私を抱き寄せた。
「・・・・歩きづらい」
「歩けんだろ?」
「歩けるけど・・・・」
歩きづらいながらも何とか厨房に到着。
冷蔵庫を確認。
「うーん・・・・卵・・・あ、牛乳がある」
砂糖はたっぷりあるし。
前に私が買ったバニラエッセンスも残ってる。
このあたりは私がデザート作る時くらいしか使わないからなぁ。
「何か作れそうか?」
「プリンとか」
簡単なやつだけど。
「んじゃそれでいい。2つ頼む」
「2つも食べるの?」
「いいだろ?俺が勝ったんだし」
エースは勝ち誇った笑みを浮かべて、
ちゅ、と私の額に口づけを落とす。
「・・・・別のとこに隠れれば良かった。じゃあぱぱっと作っちゃうから座って待ってて」
「俺のことが好きだから無意識に俺の部屋に行ったんだぜきっと」
「・・・・・そういうことにしておいてあげましょう」
熱くなる顔で呟いたら、
エースが嬉しそうに笑った。
エースが座ったのを見届けて料理開始。
まず砂糖と水でカラメルソースを作って。
カップは・・・これでいいかな。
うん、このくらいの色になれば大丈夫。
温めた牛乳と卵混ぜて・・・裏ごし、面倒だけどしないと。
バニラエッセンスを振りかけて、
「・・・・あとは蒸して」
氷水のボウルに入れて冷えたら完成。
「アコー?」
「今冷やしてるからもうちょっと待ってて」
「熱くすんなら得意なんだけどな・・・」
「ホントはこの後冷蔵庫に入れるべきなんだけど」
「待てねェ」
「だよね。でももうすぐ冬島に近くて肌寒いくらいだから平気かも」
冷やしてる間私も休憩、とエースの隣に座った。
「アコ寒ィか?」
「料理してたから大丈夫」
「・・・・ちぇ」
「何その舌打ちは」
「寒いんなら俺があっためてやれたのによ」
「本格的に寒くなったら頼りにしてる」
「お、言ったな?」
「ちゃんとぎゅってしてよ?」
「言われなくてもしてやるよ」
ホントは私もプリン食べたかったんだけど、食材の都合で我慢。
でも・・・こうしてエースと居られるだけで幸せで。
私にとっては十分甘い時間。
「そういやこの間オヤジの洗濯物が飛んで大変なことになったんだぜ、知ってたか?」
「うっそ、知らない」
2人でそんな他愛のない話しをすること数十分。
「なァ、そろそろいいんじゃねェ?」
待ちきれない様子のエースに促されて見に行ってみる。
「うん、いいかも。ちょっと待ってて」
最後の仕上げをして。
「お待たせ、はいどうぞ」
「サンキュ。・・・で、これはアコの分な」
2つあるうちの1つをエースが私の前に置いた。
「え、私の?」
「アコの分も作れよって言ったって材料がーとか言って作らねェだろ?」
「エース・・・・」
私の性格をよく知ってる。
・・・エースの、優しさが嬉しい。
「食おうぜ?」
「・・・うん、いただきます」
「いただきます」
2人で一緒に挨拶。
それから出来立てのプリンを一口。
「んー美味しいっ」
我ながら上出来。
「アコの作るもんは全部美味ェ」
「有難う、エース」
にしし、と笑うエース。
・・・幸せだなぁ。
「今度は生クリーム乗せも食べたいな。次の島着いたら買わなくちゃ」
「作ったら俺にも食わせろよ」
「勿論、一緒に食べよう。さくらんぼ乗ってるのも可愛いよね」
「アイスとかな」
「わ、いいなそれ」
「そーいや知ってるか?さくらんぼの茎を口ん中で上手く結べるやつはキスが美味いんだと」
「・・・知らなかった」
「俺は結べるぜ」
今度は不敵に笑って、
「・・・っエース!」
エースの顔が近づいてくる。
でも、
ちゅ、と軽く唇が触れ合っただけで。
「・・・・エース?」
「ははっ、甘ェな!」
「・・・プリンだからね」
「次はもっと甘いモンが食いてェな」
「チョコレートとか?」
「もっと甘いやつ」
「もっと?・・・・クリーム?」
「もっと、だ」
「何、それ?」
「アコ」
「何?」
「だから、チョコでもクリームでもなくて、甘いやつ」
一瞬エースが何を言ってるのかわからなくて。
でもすぐに理解した。
「・・・・って!私甘くないからね!?」
「甘いだろ?さっきもすぐ俺に見つかったし」
「そっ・・・・それは・・・・!」
「今もキス、甘かったぜ」
「プリンのせいです!」
「ま、夜だな」
「・・・・・もう」
「今は一休みしねェとな」
・・・・・あれ?
「もしかしてエース、私が一休みしたいの知ってた?」
だから一緒に休んでくれた?
私1人だと、結局色々思い出してアレもやらなきゃこれもやらなきゃってなるから。
「いや・・・ただアコと一緒に美味いモンが食いたかっただけだ」
・・・・何もかも見透かしてくれる君だから。
きっと。
「エース、ありがとね」
「どーいたしまして」
「大好き」
「夜は覚悟しとけよな」
「・・・・・はい」
甘い甘い、一休み。