短編②
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盃は3つあった。
サボ、っていう兄弟がいた。
・・・・漫画でそれを初めて読んだ時、
エースの入れ墨の意味がわかった。
Sに×印。
エースのスペルはACE。
何でわざわざ、と思ってたけど。
それがサボのマークで。
エースはサボの分も一緒に生きてるんだと思った。
漫画を読んだ時はまさか自分がこの世界に来るなんて思わなかったし、
来たら来たでエースのことや世界に馴染むことでいっぱいいっぱいだったから、忘れてた。
だから特にエースにサボのことを聞いたりはしてなかったんだけど。
・・・・・私は今、サボのことを思い出している。
隣を歩く男性が、
サボに似ているから。
エースとデートに来てたんだけど、
トイレに行ったら元の場所に戻れなくなってしまって、
迷子になっている時に、
「お姉さん今暇?美味いとこ知ってんだ俺達、ご飯でもどう?」
明らかに下心満載の男性3人に声をかけられた。
「いやもうご飯はいいですお腹いっぱいです」
さっきエースと食べて来たからね!
だから断ったんだけど、
「そう言わないでさぁ」
としつこかった。
そこに来てくれたのが、金髪のお兄さん。
「俺が先に目ェつけてたんだけど」
と、お兄さんは男3人をあっという間にノックアウト。
「じゃ、行こうか」
と優しくエスコートしてくれて、
「俺はこの街の人間じゃねェけど、道案内くらいなら何とか出来る。どうする?」
そう言って優しく笑いかけてくれた。
その笑い方が、
恰好が、
私がほんの少しだけ知ってるサボを連想させた。
顔に大きな火傷の跡があるけど・・・それが逆に信憑性がある。
「・・・有難う御座いました。えと、人とはぐれてしまって」
「人・・・ってどんな?」
「・・・・そばかすがあってテンガロンハットかぶってて上半身裸で、ハーフパンツにブーツの男の人」
エースの特徴を言ってみたけど、
「わかりやすくていいな」
とだけ。
・・・・どうしよう、エースの名前出してみようか。
迷ってると、
「ちょっとサボ君!いい加減にしてよね!」
可愛い女の子が出てきて、
「コアラ?何でお前ここに、っていでで!痛ェよ!」
「また勝手に居なくなっちゃうんだから!ほら行くよ!」
「待て、今俺は・・・・」
「いいから来なさいっ」
・・・・・サボを無理やり引っ張って行ってしまった。
・・・・可愛いのにすごいコだなぁ。
っていうか。
・・・・・・・・・・・・・・やっぱりサボだったんだ。
ものすごいことに気づいて追いかけようとした時、
「アコ!」
「あ、エース」
「何のんきに歩いてんだよ。なかなか戻って来ねェから心配したんだぜ?」
「うんごめん、ちょっと迷っちゃって」
「仕方ねェな、変な奴に絡まれたりしなかっただろうな?」
「・・・・・したけど」
「したのかよ!何かされたのか!?」
「ううん、助けてくれた男の人が居て」
「・・・・・アコ、まさかお前」
「何」
エースが胡散臭そうにじーっとこちらを見て来る。
「そいつに惚れたとか言うんじゃねェだろうな!?」
「っ惚れてません!!」
「・・・ホントだな?」
相変わらずエースは嫉妬深い。
「エースだけだよ」
そう言って腕を組んだら、
「・・・ならよし」
嬉しそうに笑ったエースにほっとした。
・・・・・じゃなくて!
和んでる場合じゃなくて!
「じゃなくてねエース!いい?よーっく聞いてね!」
「何だよ?」
「その助けてくれた男の人。金髪でシルクハットかぶってて、ゴークルもあって、スカーフしてたんだよ!」
「・・・・・だから何だよ?」
「しかもその人、サボって呼ばれてたの!」
そこまで言って初めてエースが反応した。
「サボ?」
「そう!サボ!!」
興奮する私に、エースはぷい、と顔を背けた。
「・・・・エース?」
「・・・・サボが居る訳ねェ」
その顔は辛そうで。
・・・・そう、だよね。
確実にサボ本人だって証拠もないし。
もし本人だったとしたら今まで何の連絡もなかった訳で。
・・・・複雑だよね。
本人じゃなかったら、ショックだろうし。
「・・・ん、ごめん」
「っつーかアコはホントに目が離せねェよな。これからは風呂も毎日一緒に入るか?」
「昨日一緒に入ったじゃん・・・」
「毎日、って言っただろ」
「・・・馬鹿」
ニヤニヤし始めたエースに再びほっとしながらも熱くなる顔。
「何か疲れちゃった、喉も乾いたし何処かで休憩しない?」
「おーいいぜ、腹も減ったしな」
「・・・・さっき何皿食べたと」
「行こうぜ!」
「・・・・はーい」
まあいっか。私はお茶だけで。
なんて簡単な気持ちで入った喫茶店。
積み上げられていくお皿、お皿。
もう見慣れたけど。
そしてやっぱり、
ガシャン。
の音と共にお皿に顔を突っ込んだエース。
・・・・この寝顔も。
もうすっかり慣れたもので、まったりお茶をすすっていたら、
「あ」
「え?」
明らかに私に向けた声に驚いてみると、
「あ・・・・・・」
サボが、隣の席に居た。
「さっきは悪かったな、コアラ・・・連れに無理やり連れていかれちまって」
「いえ、そんな」
「そっちも連れとは無事に再会出来たみたいで良かった」
「あ・・・あのっ」
「ん?」
・・・・違うかもしれない。
でも、私には本人にしか思えないんだよ。
「サボ・・・・・だよね?」
ドキドキしながら名前を呼ぶ。
「へェ、俺のこと知ってるんだ」
「私はアコ。・・・今寝てるこの人が、エース」
ゆっくりとエースの名前を告げみるけど、
「もうはぐれるなよ、恋人なんだろ」
サボはそれだけ。
サボが・・・エースの名前に反応しないってことはやっぱり別人?
「さっ・・・サボって兄弟とか居ない?」
「兄弟?・・・・・いや」
「出身は?」
「・・・・イースト、だと思う」
思う?・・・・まさか、サボ。
「・・・・小さい頃の記憶、ないの?」
「・・・・ああ」
サボの顔が辛そうに歪んだ。
思わずエースの腕を強く掴んだ。
「えー・・・す」
「・・・ん、アコ?どうした?」
エースが目を覚ました。
「エース、エース・・・・サボ、が」
サボでしかあり得ないこんな人。
でも私はどうしたらいいかわからなくて、
どう言葉にしたらいいかわからなくて。
その時エースとサボの視線が、かち合った。
「・・・・・・・・・サボ?」
睨み付けるエース。
対して、動じることなくただ冷静にエースを見つめ返すサボ。
「確かに俺はサボだけど・・・あんたのことは知らねェんだ、悪いな」
「・・・記憶がないみたいなの」
「・・・なら、いい」
冷めたようなエースの言葉に驚いた。
「いいの!?」
「そいつがサボだろうとそうでなかろうと、俺のことを覚えてねェなら意味はねェだろ」
「意味なくない!ねえ、サボ!」
「・・・って言われても俺は何も」
わからないんだ。
・・・・淡々と告げるサボにイラッとした。
すぐに諦めたエースにも。
「それでもルフィのお兄ちゃんなの!?」
かっとなって思わず叫んだら、
「・・・・兄?」
サボが弱弱しく呟いた。
それから頭を抱えて苦しみだした。
「・・・・っ俺、は・・・」
「サボ・・・・っ」
サボの手紙の中で、私の好きな台詞がある。
それは、
「長男2人 弟1人 の絆があるんでしょっ・・・・!?」
『長男2人 弟1人 変だけどこの絆は俺の宝だ』
「俺が・・・・兄・・・」
サボの記憶が戻るかも!
最後のとどめ!
「ごっゴムゴムのピストル!!」
ルフィの真似してみた。腕は伸びないけど。
「・・・・似てねェぜアコ」
エースは呆れ顔。でも。
「いや、似てる」
「え?」
「あ?」
「真っすぐなとこがルフィにそっくりだ。・・・・そう思わねェか、エース」
何処かエースに似た優しい瞳でそう言って笑ったのはサボ。
「サボ・・・・記憶、戻った?」
「悪い・・・思い出した、全部」
泣きそうに見えたサボの顔。
エースは目を大きく見開いて、
それからすぐにサボに向けて拳を振り上げた。
見ていられない状況になることは予測出来てたはずなのに、私は瞬きをすることすら忘れてその状況に見入っていた。
「・・・・エース」
エースの拳はサボに当たることはなく、
サボの首に回された。
そして、
「・・・・馬鹿野郎」
エースの泣きそうな声。
・・・・・やっぱりエースだって、サボに会いたかったんだ。
「・・・元気そうだな、エース!」
「当たり前ェだ・・・!」
それから2人が笑顔で、
拳を合わせた。
「ルフィも相変わらずか・・・・」
「あぁ、変わってねェよ」
サボが記憶を取り戻した後、
モビーに戻って来た。
エースの部屋で色んな話しをする2人。
せっかくだし私は隣の自分の部屋に戻るから2人で、って言ったんだけど、
『アコから目離せねェって言っただろ?』
・・・とエースに言われてしまった。
それを聞いたサボがくすりと笑って、
『ルフィみてェだな。確かに、また迷子になりそうだ』
と言うもんで、恥ずかしながらも一緒に居る。
「いつか会いたいな、ルフィにも。・・・殴られるかもしれねェけど」
「すげェ顔するぜ、きっと」
「でも俺が1番驚いたのはエースに彼女が出来たってことだったけどな」
え、私?
「・・・そんな驚くことじゃねェだろ?」
「だってお前、マキノさん相手にだって緊張してただろ昔」
「別に緊張してねェ!」
「思い出すなーマキノさん」
「・・・・・俺は普通だった」
サボとの会話を聞いててふと思った。
「そういえばエースって・・・・マキノさんのこと・・・好きだった?」
思い切って聞いてみたら、
「すっ好きとかじゃねェよ!」
・・・・怪しい。
そんなエースにサボがくつくつと笑いをこらえた。
「・・・・へー」
「馬鹿サボっ、変なこと言うな!」
「今もマキノさんのこと好きだったりしてね」
「俺が好きなのはアコだけだって言ってんだろ!」
ムキになってエースが叫んだところで、
「・・・・だそうだ。良かったな、アコちゃん」
サボは言いながら大爆笑。
「サボ!お前もう帰れ!」
「せっかく会えたのに寂しいこと言うなって。・・・と言いたいとこだがそろそろ帰るよ」
「え、サボもう帰っちゃうの?」
「エースがアコちゃんと2人きりになりてェって」
「っサボてめェ・・・!」
「俺もそろそろ戻らないとコアラがうるせェし」
「そっかぁ・・・残念」
「また会えるさ。・・・・な、エース」
「あァ。・・・この広い海の何処かで」
「また会おう」
・・・・私にはわからない2人だけの絆。
エースはサボを見送ることもなく。
サボも振り返ることはなく。
それがきっと、2人なんだろうな。
「・・・・カッコ良くなってたね、サボ」
「・・・お前な」
「サボに浮気しちゃおうかなぁ」
「アコ」
冗談で呟いた瞬間、
強く身体を引かれて、
荒々しいキス。
「・・・・っ、ん」
「絶対渡さねェ」
真剣なエースの瞳。
怒ってるような、泣きそうなような。
「・・・・・・うん、絶対しない」
浮気なんて出来る訳ない。
こんなに好きなのに。
「・・・アコには感謝してる」
「私に?何で?」
「サボに会わせてくれただろ」
「偶然だよ?」
「記憶も戻った。・・・ルフィのマネは似てなかったけどよ」
・・・しつこいよ。
我ながら恥ずかしいことをしたと思ってるのに!
「アコはすげェ」
ぎゅ、っと今度は優しく抱きしめられた。
「・・・エースが、好きだからだよ」
エースの為に何かしたかった。
「・・・俺も、アコが好きだ。愛してる」
「うん、ありがと」
「俺はアコに何が出来る?」
「え?」
「アコが俺から離れないように・・・ずっと笑わせるにはどうしたらいい?」
そっとエースの両手が私の頬を包む。
のぞき込んでくる瞳は切なげ。
「・・・ずっと、側に居て。目を離さないで」
「あァ、ずっと側に居る。目を離したりしない」
「私の隣に居て、笑ってて」
そしたら私も笑うから。
そしたら私も、
ずっとエースの側に居るから。
「でもお風呂はもう一緒には入らないからね」
「・・・・そこを何とか」
「なりません!」
サボ、っていう兄弟がいた。
・・・・漫画でそれを初めて読んだ時、
エースの入れ墨の意味がわかった。
Sに×印。
エースのスペルはACE。
何でわざわざ、と思ってたけど。
それがサボのマークで。
エースはサボの分も一緒に生きてるんだと思った。
漫画を読んだ時はまさか自分がこの世界に来るなんて思わなかったし、
来たら来たでエースのことや世界に馴染むことでいっぱいいっぱいだったから、忘れてた。
だから特にエースにサボのことを聞いたりはしてなかったんだけど。
・・・・・私は今、サボのことを思い出している。
隣を歩く男性が、
サボに似ているから。
エースとデートに来てたんだけど、
トイレに行ったら元の場所に戻れなくなってしまって、
迷子になっている時に、
「お姉さん今暇?美味いとこ知ってんだ俺達、ご飯でもどう?」
明らかに下心満載の男性3人に声をかけられた。
「いやもうご飯はいいですお腹いっぱいです」
さっきエースと食べて来たからね!
だから断ったんだけど、
「そう言わないでさぁ」
としつこかった。
そこに来てくれたのが、金髪のお兄さん。
「俺が先に目ェつけてたんだけど」
と、お兄さんは男3人をあっという間にノックアウト。
「じゃ、行こうか」
と優しくエスコートしてくれて、
「俺はこの街の人間じゃねェけど、道案内くらいなら何とか出来る。どうする?」
そう言って優しく笑いかけてくれた。
その笑い方が、
恰好が、
私がほんの少しだけ知ってるサボを連想させた。
顔に大きな火傷の跡があるけど・・・それが逆に信憑性がある。
「・・・有難う御座いました。えと、人とはぐれてしまって」
「人・・・ってどんな?」
「・・・・そばかすがあってテンガロンハットかぶってて上半身裸で、ハーフパンツにブーツの男の人」
エースの特徴を言ってみたけど、
「わかりやすくていいな」
とだけ。
・・・・どうしよう、エースの名前出してみようか。
迷ってると、
「ちょっとサボ君!いい加減にしてよね!」
可愛い女の子が出てきて、
「コアラ?何でお前ここに、っていでで!痛ェよ!」
「また勝手に居なくなっちゃうんだから!ほら行くよ!」
「待て、今俺は・・・・」
「いいから来なさいっ」
・・・・・サボを無理やり引っ張って行ってしまった。
・・・・可愛いのにすごいコだなぁ。
っていうか。
・・・・・・・・・・・・・・やっぱりサボだったんだ。
ものすごいことに気づいて追いかけようとした時、
「アコ!」
「あ、エース」
「何のんきに歩いてんだよ。なかなか戻って来ねェから心配したんだぜ?」
「うんごめん、ちょっと迷っちゃって」
「仕方ねェな、変な奴に絡まれたりしなかっただろうな?」
「・・・・・したけど」
「したのかよ!何かされたのか!?」
「ううん、助けてくれた男の人が居て」
「・・・・・アコ、まさかお前」
「何」
エースが胡散臭そうにじーっとこちらを見て来る。
「そいつに惚れたとか言うんじゃねェだろうな!?」
「っ惚れてません!!」
「・・・ホントだな?」
相変わらずエースは嫉妬深い。
「エースだけだよ」
そう言って腕を組んだら、
「・・・ならよし」
嬉しそうに笑ったエースにほっとした。
・・・・・じゃなくて!
和んでる場合じゃなくて!
「じゃなくてねエース!いい?よーっく聞いてね!」
「何だよ?」
「その助けてくれた男の人。金髪でシルクハットかぶってて、ゴークルもあって、スカーフしてたんだよ!」
「・・・・・だから何だよ?」
「しかもその人、サボって呼ばれてたの!」
そこまで言って初めてエースが反応した。
「サボ?」
「そう!サボ!!」
興奮する私に、エースはぷい、と顔を背けた。
「・・・・エース?」
「・・・・サボが居る訳ねェ」
その顔は辛そうで。
・・・・そう、だよね。
確実にサボ本人だって証拠もないし。
もし本人だったとしたら今まで何の連絡もなかった訳で。
・・・・複雑だよね。
本人じゃなかったら、ショックだろうし。
「・・・ん、ごめん」
「っつーかアコはホントに目が離せねェよな。これからは風呂も毎日一緒に入るか?」
「昨日一緒に入ったじゃん・・・」
「毎日、って言っただろ」
「・・・馬鹿」
ニヤニヤし始めたエースに再びほっとしながらも熱くなる顔。
「何か疲れちゃった、喉も乾いたし何処かで休憩しない?」
「おーいいぜ、腹も減ったしな」
「・・・・さっき何皿食べたと」
「行こうぜ!」
「・・・・はーい」
まあいっか。私はお茶だけで。
なんて簡単な気持ちで入った喫茶店。
積み上げられていくお皿、お皿。
もう見慣れたけど。
そしてやっぱり、
ガシャン。
の音と共にお皿に顔を突っ込んだエース。
・・・・この寝顔も。
もうすっかり慣れたもので、まったりお茶をすすっていたら、
「あ」
「え?」
明らかに私に向けた声に驚いてみると、
「あ・・・・・・」
サボが、隣の席に居た。
「さっきは悪かったな、コアラ・・・連れに無理やり連れていかれちまって」
「いえ、そんな」
「そっちも連れとは無事に再会出来たみたいで良かった」
「あ・・・あのっ」
「ん?」
・・・・違うかもしれない。
でも、私には本人にしか思えないんだよ。
「サボ・・・・・だよね?」
ドキドキしながら名前を呼ぶ。
「へェ、俺のこと知ってるんだ」
「私はアコ。・・・今寝てるこの人が、エース」
ゆっくりとエースの名前を告げみるけど、
「もうはぐれるなよ、恋人なんだろ」
サボはそれだけ。
サボが・・・エースの名前に反応しないってことはやっぱり別人?
「さっ・・・サボって兄弟とか居ない?」
「兄弟?・・・・・いや」
「出身は?」
「・・・・イースト、だと思う」
思う?・・・・まさか、サボ。
「・・・・小さい頃の記憶、ないの?」
「・・・・ああ」
サボの顔が辛そうに歪んだ。
思わずエースの腕を強く掴んだ。
「えー・・・す」
「・・・ん、アコ?どうした?」
エースが目を覚ました。
「エース、エース・・・・サボ、が」
サボでしかあり得ないこんな人。
でも私はどうしたらいいかわからなくて、
どう言葉にしたらいいかわからなくて。
その時エースとサボの視線が、かち合った。
「・・・・・・・・・サボ?」
睨み付けるエース。
対して、動じることなくただ冷静にエースを見つめ返すサボ。
「確かに俺はサボだけど・・・あんたのことは知らねェんだ、悪いな」
「・・・記憶がないみたいなの」
「・・・なら、いい」
冷めたようなエースの言葉に驚いた。
「いいの!?」
「そいつがサボだろうとそうでなかろうと、俺のことを覚えてねェなら意味はねェだろ」
「意味なくない!ねえ、サボ!」
「・・・って言われても俺は何も」
わからないんだ。
・・・・淡々と告げるサボにイラッとした。
すぐに諦めたエースにも。
「それでもルフィのお兄ちゃんなの!?」
かっとなって思わず叫んだら、
「・・・・兄?」
サボが弱弱しく呟いた。
それから頭を抱えて苦しみだした。
「・・・・っ俺、は・・・」
「サボ・・・・っ」
サボの手紙の中で、私の好きな台詞がある。
それは、
「長男2人 弟1人 の絆があるんでしょっ・・・・!?」
『長男2人 弟1人 変だけどこの絆は俺の宝だ』
「俺が・・・・兄・・・」
サボの記憶が戻るかも!
最後のとどめ!
「ごっゴムゴムのピストル!!」
ルフィの真似してみた。腕は伸びないけど。
「・・・・似てねェぜアコ」
エースは呆れ顔。でも。
「いや、似てる」
「え?」
「あ?」
「真っすぐなとこがルフィにそっくりだ。・・・・そう思わねェか、エース」
何処かエースに似た優しい瞳でそう言って笑ったのはサボ。
「サボ・・・・記憶、戻った?」
「悪い・・・思い出した、全部」
泣きそうに見えたサボの顔。
エースは目を大きく見開いて、
それからすぐにサボに向けて拳を振り上げた。
見ていられない状況になることは予測出来てたはずなのに、私は瞬きをすることすら忘れてその状況に見入っていた。
「・・・・エース」
エースの拳はサボに当たることはなく、
サボの首に回された。
そして、
「・・・・馬鹿野郎」
エースの泣きそうな声。
・・・・・やっぱりエースだって、サボに会いたかったんだ。
「・・・元気そうだな、エース!」
「当たり前ェだ・・・!」
それから2人が笑顔で、
拳を合わせた。
「ルフィも相変わらずか・・・・」
「あぁ、変わってねェよ」
サボが記憶を取り戻した後、
モビーに戻って来た。
エースの部屋で色んな話しをする2人。
せっかくだし私は隣の自分の部屋に戻るから2人で、って言ったんだけど、
『アコから目離せねェって言っただろ?』
・・・とエースに言われてしまった。
それを聞いたサボがくすりと笑って、
『ルフィみてェだな。確かに、また迷子になりそうだ』
と言うもんで、恥ずかしながらも一緒に居る。
「いつか会いたいな、ルフィにも。・・・殴られるかもしれねェけど」
「すげェ顔するぜ、きっと」
「でも俺が1番驚いたのはエースに彼女が出来たってことだったけどな」
え、私?
「・・・そんな驚くことじゃねェだろ?」
「だってお前、マキノさん相手にだって緊張してただろ昔」
「別に緊張してねェ!」
「思い出すなーマキノさん」
「・・・・・俺は普通だった」
サボとの会話を聞いててふと思った。
「そういえばエースって・・・・マキノさんのこと・・・好きだった?」
思い切って聞いてみたら、
「すっ好きとかじゃねェよ!」
・・・・怪しい。
そんなエースにサボがくつくつと笑いをこらえた。
「・・・・へー」
「馬鹿サボっ、変なこと言うな!」
「今もマキノさんのこと好きだったりしてね」
「俺が好きなのはアコだけだって言ってんだろ!」
ムキになってエースが叫んだところで、
「・・・・だそうだ。良かったな、アコちゃん」
サボは言いながら大爆笑。
「サボ!お前もう帰れ!」
「せっかく会えたのに寂しいこと言うなって。・・・と言いたいとこだがそろそろ帰るよ」
「え、サボもう帰っちゃうの?」
「エースがアコちゃんと2人きりになりてェって」
「っサボてめェ・・・!」
「俺もそろそろ戻らないとコアラがうるせェし」
「そっかぁ・・・残念」
「また会えるさ。・・・・な、エース」
「あァ。・・・この広い海の何処かで」
「また会おう」
・・・・私にはわからない2人だけの絆。
エースはサボを見送ることもなく。
サボも振り返ることはなく。
それがきっと、2人なんだろうな。
「・・・・カッコ良くなってたね、サボ」
「・・・お前な」
「サボに浮気しちゃおうかなぁ」
「アコ」
冗談で呟いた瞬間、
強く身体を引かれて、
荒々しいキス。
「・・・・っ、ん」
「絶対渡さねェ」
真剣なエースの瞳。
怒ってるような、泣きそうなような。
「・・・・・・うん、絶対しない」
浮気なんて出来る訳ない。
こんなに好きなのに。
「・・・アコには感謝してる」
「私に?何で?」
「サボに会わせてくれただろ」
「偶然だよ?」
「記憶も戻った。・・・ルフィのマネは似てなかったけどよ」
・・・しつこいよ。
我ながら恥ずかしいことをしたと思ってるのに!
「アコはすげェ」
ぎゅ、っと今度は優しく抱きしめられた。
「・・・エースが、好きだからだよ」
エースの為に何かしたかった。
「・・・俺も、アコが好きだ。愛してる」
「うん、ありがと」
「俺はアコに何が出来る?」
「え?」
「アコが俺から離れないように・・・ずっと笑わせるにはどうしたらいい?」
そっとエースの両手が私の頬を包む。
のぞき込んでくる瞳は切なげ。
「・・・ずっと、側に居て。目を離さないで」
「あァ、ずっと側に居る。目を離したりしない」
「私の隣に居て、笑ってて」
そしたら私も笑うから。
そしたら私も、
ずっとエースの側に居るから。
「でもお風呂はもう一緒には入らないからね」
「・・・・そこを何とか」
「なりません!」