短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドキドキドキドキ、と。
心臓がどうにかなりそう。
こんなに緊張するのいつ以来だろう。
インターホンを押すだけの行為なのに手が震える。
軽く触れただけなのに音が鳴って、
機械から愛しい彼の声。
『今開ける』
そうしてすぐにマンションのオートロックが開いた。
エレベーターに乗り込んで、
7階に行き、
角の部屋。
うん、無事着けた。
・・・・・1か月前に恋人になったばかりの、
サボの部屋。
「無事来れたな」
「うん、何とか。・・・・お邪魔します」
サボがドアを開けてくれて、
ドキドキの初訪問。
男の人の一人暮らしってことで、色々想像してたけど。
「・・・普通に綺麗だね、部屋」
「アコが来るから片付けたんだ。いつもはもう少し散らかってるよ」
「いい匂いもする」
「アコが好きそうな匂いのスプレーしといた。当たってた?」
「・・・うん、有難う」
きょろきょろしてたら、
「何飲む?珈琲と紅茶と麦茶と・・・オレンジジュースとりんごジュースにコーラがあるけど」
「・・・・喫茶店みたいだね。えっと、じゃあ紅茶で」
「了解。座って待ってて」
サボが台所でカチャカチャとお茶の準備をしてくれた。
私は片付けられた部屋を見回す。
・・・・変なのなくて良かった。
あ、あの時計前に私がプレゼントしたやつ。
飾ってくれてるんだ。
「紅茶、出来たけど・・・・何かあった?」
色々見てたらサボが紅茶を持ってきてくれた。
「あ、ううん。有難う」
「・・・座らないのか?」
ついぼーっと阿呆みたいに突っ立っていた私。
声をかけられて慌ててサボの隣に座って、
はっとした。
・・・・普通こういう時って向かい合わせに座るもの!?
ああっでも学食とかではいっつも隣だからつい癖で!
どどどどうしよう!
隣のサボの顔を見たら案の定きょとんとしてる。
「・・・俺の隣、好き?」
それから笑顔で聞かれて、体中の熱が顔に集まったかのように顔が熱くなった。
「・・・・・・・好き」
「俺も。アコの隣好きだな」
「ありがと・・・」
・・・恥ずかしい。
さっきから暴れまくっている心臓は全然落ち着きそうにない。
よし、サボが淹れてくれた紅茶を飲んで落ち着こうとした時。
テーブルの下で、
サボが私の手をそっと握った。
「さっ・・・・・」
心臓が止まるかと思った。
出会いは高校で、でもその頃は意識してなかった。
大学に入って気になりだして、
付き合いだして1ヵ月。
・・・お互い忙しくて、私達はまだ手すら繋いだことがない。
なのに、こんな密室で。
2人きりの時にこんな・・・・っ!!
動揺した私はぱっと手を離し、
「ああああのっ、これ、お土産・・・・!」
持ってきた紙袋を渡した。
「駅前のケーキか、気ィ遣わなくて良かったのに」
「・・・・・えと、その・・・・・ごめん」
・・・・手を離してしまったことも。
その意味が伝わったのか、サボは苦笑した。
「俺にはその顔で十分。耳まで真っ赤だし、可愛い」
「サボだって・・・顔少し赤い」
「そんなことよりケーキだ、今皿持ってくる」
「サボ照れてるー」
「照れてねェよ!」
サボもドキドキしてるんだ、と思ったら少し楽になった。
「ん、紅茶美味しい」
「美味いだろ?それ。俺もよく飲んでる」
サボがケーキをお皿に入れて持ってきてくれたので、ケーキもぱくり。
「サボって結構グルメだよね。ケーキ、口に合うといいんだけど」
「この店のも美味いから大丈夫」
「・・・・ほんとよく知ってるね」
「・・・・1人で行ってるんだからな?」
気まずさげに呟くサボにくすりと笑ったら、
「笑うな」
怒ったように言ったサボに肩を抱き寄せられた。
「・・・サボ、これじゃケーキ食べられない」
「いいや、食える」
「どうやって?」
「こうやって」
サボが私を抱いていない方の右手でケーキをフォークで刺して、
「はい、あーん」
私の目の前に突き出してきた。
「・・・・・っあー・・・・ん」
仕方なく口を開けたら、そっとケーキが放り込まれた。
「美味い?」
「・・・美味しい」
駄目だ、また緊張してきた。
「な、食えるだろ」
「食べられるけど・・・っ!!」
「美味いな、これ」
自分でもケーキを堪能しているサボはどう見ても余裕に見える。
・・・・悔しい。
「ねえ、サボはいつから私のこと好きになってくれたの?」
「ん?・・・高校卒業する少し前、かな」
「・・・ふーん」
「だからアコと同じ大学に入ったんだ」
「・・・そういえばサボって私より頭良いしもっと上の大学決まってたよね」
「アコの居ないとこなんか行っても意味ないだろ?」
「・・・勿体ない」
「アコは?」
「え?」
「アコが俺を好きって意識したのは・・・大学入って少しあとくらい、か?」
「なっ何で・・・・」
ずばり図星なんだけど!
「ずっと見てたからわかるんだ。・・・ずっと考えてたんだ、どうしたらアコが俺を意識するのか」
サボがさっきから変なことばっかり言うから、
落ち着こうと喉が渇いて紅茶をごくごく。
「紅茶、おかわりは?」
「あ、頂きますっ」
「持ってくる」
サボが立ち上がったのを見て、
「待って、私も手伝う」
サボにばかりやらせる訳にはいかないと慌てて立ち上がったら、
「あっ」
「アコ!」
足が痺れていて、うまく立つことが出来ず倒れかけた。
それでも倒れる前にサボが前から支えてくれて助かった。
「・・・・足が痺れた・・・ごめん」
「・・・足挫いたりしてないか?」
「うん、大丈夫」
・・・・大丈夫、なんだけど。
「良かった」
「・・・・あの、サボ?」
名前を呼んだらそっとサボの腕が私の背中に回された。
こ・・・っこれって抱きしめられてる・・・・!
「悪いけど・・・離す気はねェから」
「へ!?」
「さっきみたいに逃がす気もない」
ぎゅ、っと上に力が入って密着した身体。
心臓の音がサボに伝わってしまいそうな程。
「まっ待って・・・・・っ」
「待たない。もう結構待ったんだぞこれでも」
「サボ・・・・っ」
顔を上げたら、優しく笑うサボが居て。
「アコ」
ゆっくりと近づく顔に、
あ、キスされる。
そう感じて思わず目を閉じた。
でもすぐに、
電子音が部屋に響いて目を開けた。
サボと2人で瞬きを数回。
それからサボはそっと離れて、テーブルの上に置かれた携帯を見る。
「電話。・・・ルフィからだ」
ルフィ君はサボの大事な弟君だ。
「・・・出ないの?」
鳴り続けるメロディ。
「俺の邪魔した罰。・・・あとでかけ直すから問題ない」
サボは渋い顔でそう言った後、
少し寂しそうに笑った。
「・・・・じゃあ、今は?」
「え?」
「・・・・しないの?・・・・続き」
「・・・して欲しい?」
「・・・・・うーん、やっぱいい」
「いいのか・・・」
がっくりと肩を落としたサボ。
・・・だってこの部屋に来る前からずっとドキドキしっぱなしで。
今もそう。
だから、
「私からするから、いいの」
私より少し背が高いサボの為に、
私は少し背伸びをして。
サボの頬に口づけた。
・・・・ううん、やっぱりまだドキドキは治まりそうにない。
「・・・・嬉しいけど口が良かったな、俺は」
「・・・じゃあ今度はサボからして」